表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学校の落ちこぼれ  作者: 暦海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/13

リリアの決意

 ――穏やかな陽が心地好い、翌朝のこと。



「――おはよう、ロイ。これから宜しくね?」

「……へっ? あ、うん……宜しくね、リリア」



 通学路にて、そう声を掛ける私。すると、声を掛けられた美少年――ロイは困惑の表情で答える。まあ、それはそうでしょう。ずっと一緒にいたのに、これからなんて言われたら。



 ですが、私としてはこれが正解……私にとっては、ここが出発点なので。人間として今後の生を全うする、もう一つの出発点なので。





『……人間になりたい、か。その言葉に、偽りはないのじゃな? リリア』

『はい、もちろんです神様。この忠実なる下僕しもべたるわたくしめが、貴方様に嘘を申したことなどありますか?』

『いや、もうその言葉が嘘じゃと思うが。そもそも、忠実なる下僕しもべでもなかったじゃろうに』

『ふふっ、そうですね。そして、もちろん問題はありませんよね? 私だって、ちゃんと例の水準を満たしているはずですし』



 一週間前、校長室にて。

 私の申し出に、何とも珍しく真剣な表情かおで確認を取る神様。その申し出とは、彼の言うように人間に――天使を辞めて、人間になりたいというもので。


 だけど、神様に驚いた様子はない。むしろ、分かっていたように見受けられます。それから、再び真剣な表情を浮かべ――



『――ああ、承知した。ちなみに、分かっているとは思うが……決してやり直しは効かんから、後悔するでないぞ』



 そう、真っ直ぐに告げる神様。私だって、彼とそれなりに長い付き合い――それが、彼なりの餞だということは流石に分かった。





「……ところで、リリアさん。その、ほんとに今更だけど……こうして、僕と一緒にいて良いの?」

「それは本当に今更ですね。それでは逆にお尋ねしますが、どうして一緒にいてはいけないのでしょう?」

「それは……ほら、僕みたいな落ちこぼれと一緒にいたら、リリアさんの評判に酷く傷が――」

「そうですね、ロイは弱いですし。恐らくは、この学校の誰よりも」

「……ぐっ。……でも、だったらどうして……」



 その日の昼休みのこと。

 いつもの中庭にて、そんなやり取りを交わす私達。何とも遠慮のない私の言葉に、流石に少し傷ついた様子のロイ。……ふふっ、可愛いですね。


 ですが、意地悪はほどほどにしておきましょう。私のために言ってくれているのに、あまり揶揄からかっては申し訳ないですし。そういうわけで、再び口を開いて――



「……確かに、貴方は弱い。この学校の誰よりも。ですが……同時に、貴方は誰よりも強い――私はそのように思っていますよ、ロイ」




「…………えっと、どゆこと……?」


 私の言葉に、ポカンと口を開けるロイ。まあ、そうなりますよね。ですが、これに関してはくどくど説明するつもりはありません。代わりに――



「――さて、改めてではありますが……ありがとうございます、ロイ。あの時、私を守ってくれて」

「…………別に、僕は何も……そもそも、僕なんかが出しゃばらずとも、リリアさんなら自分でどうにでも出来ただろうし……」


 そう伝えると、少し目を逸らしつつボソボソと答えるロイ。……全く、そんな寂しいことを言わないでほしいですね。こっちは感謝してるんですから、余計な心配などせずに素直に受け取って頂きたいものです。



 ともあれ、何のお話かと言うと――遡ること一年ほど前、入学から三ヶ月ほど経過したある日のことで。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ