第2話 スライムへのリベンジ
あのスライム、恐るべき強さ。
VRゲーム初心者では太刀打ちできんぞ。
これは正式サービス開始初日から運営は炎上に違いない。
(※炎上しません)
目の前にはもう一度チュートリアルをするかが表示されている。
試しに「いいえ」を選択するとログアウトするかが表示された。
チュートリアルモンスターを倒さないことには次に進めないのか。
時間ならいくらでもある。
時間を掛けてスライムを倒す方法を模索する。
それから一時間ほど考えた。あのスライムを倒す方法を。
結論、ゼロ距離砲撃が最も確実。
ただ、ある程度接近するとジャンプしてくるとこが唯一の問題だった。
しかし、この問題を解決する天才的発想を閃く。
スライムは空を飛べない。これは常識。
つまり、ジャンプしている間は回避行動ができない。
ジャンプしたタイミングで一気に距離を詰め、ゼロ距離砲撃を叩き込む。
これさえできれば、確実に勝てる!
早速、スライムへリベンジする為にチュートリアルに再チャレンジする。
どこからともなく、現れるスライム。
出たな!我が宿敵よ!今度は負けぬぞ!
無駄撃ちはしない。一撃で倒す。
まだだ。もっと引き付けろ。
ジャンプするのを待て。焦らしプレイに負けるな!
待ち続け、遂にその時が。
ジャンプの軌道はわかっている。
あとは慎重に砲塔をスライムに向けて攻撃を叩き込むだけ!……よし、
「ファイア!!!」
ドーン!!
狙い通り、ゼロ距離砲撃はスライムに直撃し、HPを削り切った。
「よっしゃー!!!!!!」
喜んでいる最中だったが、チュートリアルモンスターを倒したから草原から赤陣営の初期エリアの森林エリアに転移した。
ピコン!
ん?何やら通知が届いたようだ。えっと、運営からか。
「チュートリアルクリアおめでとうございます!あなたが今いる場所は赤陣営の初期エリアになります。引き続き『IKUSA ONLINE』をお楽しみ下さい」
チュートリアルモンスターが異常に強かったお詫びのメッセージかと思ったが、違った。
こうして無事にチュートリアルを終える事ができたので、特に気にしないことに。
当然だが、マップは埋まってない。
初期エリアだけは親切仕様で全て埋まっている可能性もあったが、このゲームは違うようだ。
早速、この森の中を探索し、マップを埋めるとするか。
行けども行けども森。景色に違いが無いように思える。
それにモンスターとも遭遇しない。
初期エリアにはモンスターがいない仕様だとしたらありがた迷惑などと考えていたら1体のスライムと遭遇する。
プル、プル
「我輩の前に再び姿を現すか、スライムよ!」
既にスライムの動きは見切っている。
得意の焦らしも効かない。
うむ、もうちょっと引き付けて。
今だ!距離を詰めゼロ距離砲撃発射!
「ファイア!!」
ドーン!!
「わっはははは!これが我輩の力だ!」
パチパチパチ
どこからか拍手の音が響き渡る。
周りをキョロキョロ見回すと背後から女性プレイヤーに声を掛けられる。
「いや〜、君スゴいね!ボク思わず拍手しちゃったよ」
「誰だお主は?」
「ああ、ごめんごめん。ボクはネヴィア。同じ赤陣営同士よろしく」
「うむ、我輩はキングだ。よろしく頼む」
「……」
「ん?どうした?」
突然、目の前に現れた女性が固まった。
もしかしてラグなのでは。
サービス開始初日だからサーバーが重いのか。
もし、そうなら何もできない。
それにしても随分とアバター作成を凝ったものだな。
あの髪色、やや薄い水色か?デフォの色には無かったから自分で調整している筈。
肩よりもやや短いショートヘアーも凄く似合っておる。
「え、あ、いや、よくそのプレイヤーネーム付けれたね」
なんだ我輩のプレイヤーネームに驚いていただけか。
このゲームはプレイヤーネームの被りがNGだから同じプレイヤーネームは存在しない。
キングのように人気があると思われるプレイヤーネームは争奪戦になるから運の良さに驚いていたのだろう。
「あ、そうそう!話が逸れるとこだったよ!君さ砲撃手だよね?」
「そうだが、どうかしたか?」
「ボクと同じ不遇職業を初日から選択した仲間がいて嬉しいんだよ!」
「不遇職業?何の話だ?」
「……」
ネヴィアが何を言っているのか全く理解できなかった。
砲撃手は全職業の中で最も攻撃力が高い優良職業。
明らか地雷とわかる職業と一緒にされては困る。
「もしかして知らない感じかな?」
「何をだ?」
「あ、うん、知らないんだね。えっと、ちょっと言いづらいけど、砲撃手って攻撃力は一番高いけど、それ以外がカスって評価なの。精度が最低値だからコントロールはもうお察し」
「なんだと、バカな!?」
砲撃手が不遇職業!?
いや、待て……もしやチュートリアルのスライムに苦戦した理由はそこにあるのでは。
「ネヴィア、つかぬ事を聞くが、チュートリアルモンスターはかなり、強いよな?」
「え?ああ、えっと……普通のスライムだね。負ける方が難しいって言われてる」
バカな……負ける方が難しいだと。
「あ、でも砲撃手でチュートリアルモンスターを倒したプレイヤーは他にいないと思うよ!」
「!?……それは本当か?」
「ホントホント!少なくともボクは聞いたことないよ!」
「うむ、ならば良しとするか。して、ネヴィアよ我輩に何か用でもあるのか?何も無いのに話し掛けたりはしないだろ?」
「え?ああ、そうだった。忘れるとこだったよ。キング、ボクとパーティーを組んでくれない?」