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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第三章 世界樹の守護者
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第39話 『深淵のエルフ』

 ひんやりとした冷気をまとったエルフの女性は、笑みをたたえたままセレスの目の前にやってきた。

 セレスは、突然の事に驚き声も出せずに見つめている

 ベルフォリスは、ああ!と言ったきり続きの言葉を出せないでいた。

「おやおや、おや?二人ともそんなに驚いて、まるで化け物にでも会ったかの様な反応をするね?私は悲しいよ。」

と言って、右手で顔を少し覆った。

 と思いきや、その右手をセレスの肩に回して、セレスの顔を覗き込んだ。

「ふむふむ、血色は良いね。意外と健康そうで安心したよ。何せ妹の願望を聞くためにまさか娘を生贄に捧げてしまおうって事になるんだからね。あの子とは違ってお前は、世界樹に対しての親和性が少なかったからね。とは言え、世界樹の因子を持つのはあの子とお前だからね、仕方が無かったんだよ。」

そう言うと、ようやく顔を覗き込むのを止める。

 そして、にっこり笑った顔のままで凍り付いていたベルフォリスを睨んだ。

「ちょっとベル?あのカード占いをしょっちゅう使うのは止めて欲しいのだけど?あのカード、情報を探るんじゃなくて情報を引き寄せるカードだって何度言ったら分かるんだい?お陰で、私は何度となくベルにコキ使われているんだよ?お前はカードを引き当てるだけで、さぞ楽ちんそうだがな?」

 言葉の末尾を全て疑問符にしてベルフォリスに問いただす。

 その圧力は相当なものだろう。

 ベルフォリスは涙目になりながら、首を縦に振る事しか出来なかった。

「知ってるよ、私は。見て来たからね。セレス、お前は世界樹の守護者を辞めたいんだってね?私にはその決定権は無いからね、あの子に聞くしか無いだろう。それで私を探して居た訳だね。うんうん。分かっているよ。あの子の所に連れて行って欲しいんだろう?」

そのエルフは、今度はセレスの頭を撫でながら、セレスの目的を言い当てる。

 この、突然登場してからずっと傍若無人に振舞いながら、的確にセレスの願望を言ってのけたこの人こそ、『深淵のエルフ』のソフィアステイルだった。

 ソフィアステイルは、ゆっくりとベルフォリスの情報屋の店内を歩きながら、

「実は今あの子は、この世界には居ないんだ。セレスには分かるだろう?つい口に出してしまった場所を思い出してみてごらん?昔の古傷が痛むんだよね?そうさ、魔界のあのスェニストラフト温泉に行っているのさ。面白いよね~お前の未来予知、発した言葉だけでも事象を引き寄せるなんて、私にも出来ないよ。」

 ソフィアステイルは、セレスが無意識に行った『事象の引き寄せ』と言う能力を心底羨ましがった。

「その力があれば、本当に世界征服も夢じゃないかもな、ベル?」

そう言って、ベルフォリスを更に震え上がらせた。

 そんな中、やっとセレスが口を開いた。

「ってワケなんだ、オバサンも事情をそこまで知っているなら、アタシを母さんの所まで連れて行ってくれよ。急いでるんだ、時間が無い。このままだと、ルキソミュフィアがソルフゲイルに蹂躙されてしまう!」

 セレスが、自分のこれからやらなければならない目的を話すと、ソフィアステイルはやや怪訝そうな顔をしながらまたセレスの顔を覗き込んだ。

「はて?はてはて?お前がそんなに入れ込んでいるルキソミュフィアは、そんなにお前にとって大事な国だったか?今はむしろメルヴィの国の方をナントカしなければならないんじゃないのか?」

 セレスの緑色の目を覗き込みながら、ソフィアステイルは続ける。

「ああ~、そうだったそうだった。まだお前がこの世界に来て100年ちょっとの頃に、かなり仲良くなった男が居たね~そうそう銀狼族の。ふむふむなるほどなるほど、もしやその男との約束なのかな?ルキソミュフィアが危機の時は必ず助けるって言うのは。それはそれは美しい約束だね。」

 少し嘲笑いながらソフィアステイルが言うのを、セレスは許せなくなった。

「そうだ、悪いか?アイツは100年前のソルフゲイルの侵攻の時に、アタシを守って倒れた。世界樹の守護者になって力が殆ど無くなって、ちょっと魔力が高いだけのほぼ人間と同じ様な状態になってしまったアタシをかばってね。もしあの時のアタシが完全体のアタシだったら、そもそもソルフゲイルの侵攻なんて許さなかった。だからアタシは、今度は世界樹の守護者をサッパリと辞めて、完全体になって今度こそルキソミュフィアの銀狼族を助けるんだ!悪いか?!」

 セレスは、100年間の間の鬱憤や、今まで感じていた不条理さを、ソフィアステイルにぶつけた。

 本当なら母親にぶつけたかったが、とりあえず両親以外で一番近い親族であるソフィアステイルにぶつけるしか無かった。

「あああ、分かった分かった。セレスは小さい頃から、一度決めた事は最後までやり通さないと気が済まない性格だったね~。これじゃあ私にも止められないよ。悪いなレオル、お前の願望は叶えられそうにない。」

 セレスの剣幕にソフィアステイルは根負けしたのか、セレスの母の名を言いながら謝った。

 そして、

「そうだね、とりあえずセレスはレオルの所に行きたいんだったね。となると、ベルフォリスはどうするのかな?お前もセレスの所に行きたいんだろう?なら、お前も一緒に『門』に入るがイイさ。さすれば、セレスがこれから成そうとしている事に、いつでも間近で付き従って行けるだろうよ?」

 と、ベルフォリスに提案をした。

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