第35話 総務大臣の動向
「決めました!コレにします!!」
グレアラシルはやっと、メニューを見るのを止めてカフェの店員に希望する料理を伝える。
グレアラシルは、書架から歩いて役所まで来て~色々用事を済ました所で、ドっと疲れと言うか力が抜けた様だった。
ただ、コレットに会ったのは、ある意味幸運だったかもしれないと思っていた。
何せ、グレアラシルの様な素性の良く分からない一介の賞金稼ぎ風情が、内閣府の情勢を探ると言うか、総務大臣の動向を探るなんて限りなく無理な状況だった所に、そこそこ良い家柄の娘であるコレットと言う、神にも等しい存在が現れたのだ。
「いや、本当助かったっす!」
グレアラシルは注文した料理が来るまでの待ち時間で、コレットにお礼を言っていた。
コレットの方は、
「そんなお礼を言われるような事、まだ私はしてませんよ?と言うか、これから私が話す事を聞いてからお礼を言って欲しい所でしたけど。」
と言って困惑していた。
両手を前に出し、まぁまぁと言った具合にヒラヒラ動かしていた。
それを見ながらグレアラシルは、
「じゃあ、今からその話してくださいっす!俺に聞かせたい話って言うのは何なんすか?」
と、尋ねた。
あらかたパフェを食べ終わっていたコレットは、ハンカチで口元を拭くとグレアラシルに向き直って話始める。
「多分グレアラシルさんは、セレスさんに総務大臣の事を探れ!とか言われたと思うんですよ。セレスさんなら、自分が留守の間に何か別の問題を解決してもらおうか?とか言いそうですもん。」
つい昨夜、グレアラシルが言われた様な事をそっくりコレットが言うので、グレアラシルはかなり驚いた。
この娘は実は、自分の心が読めるのか?!とすら思った程だ。
「確かに、姐さんには全く同じような事を言われたよ。こんな仕事は誰にでも出来るけど、俺にしか出来ない仕事もあるんじゃないか?って俺は思って仕事を引き受けた。ただ、身の丈に合った仕事をしろと言われたんだ、それがその時どう言う意味かよく分かっていなかったんだけど、今は分かる。この、総務大臣の動向を探る仕事自体が身の丈にまだ合っていなかったんだ。」
グレアラシルは、自分がセレスに言われた事の意味がようやく理解出来た事に驚いていた。
結局はこの、総務大臣の調査は自分の身の丈に合っていない仕事だと、コレットに会って気が付いた。
「身の丈に合っているかどうかなんて、自分で決めていたら何にも出来なくなっちゃいますよ?要は、セレスさんが帰って来るまでに、どんな方法でも良いからその依頼を片付けてさえいれば良いんです。」
コレットはそう言って、グレアラシルに向かって指を差した。
差した所でグレアラシルの所に、大盛りのパスタ料理が届く。
ミートソースのパスタの上にとろけるチーズのカタマリが載っていると言う、何ともコッテコテの料理だった。
「俺、この街に来て初めて食べたのがこの料理だったんすよねー!」
と言って、早速頬張り始める。
コレットはコーヒーのお代わりを貰うと、角砂糖とミルクを入れて飲み始めた。
二口程飲んだところでカップを置き、更に話を続ける。
「身の丈の話はとりあえず置いておいて、私の話をしますよ。実はその総務大臣の事なんですが、グレアラシルさんには悪いんですけどもう・・・・動向が分っちゃいまして。」
ちょっと「残念なお知らせ」の様な雰囲気で衝撃の事実を伝えた。
「え?ええ??」
パスタを頬張り過ぎていたグレアラシルは、その事実についての返事が出来ず、しばらくモゴモゴしていた後にようやく言葉を発した。
「何ですか?その神対応?俺の出る幕無いじゃないっすか?」
近くに置いてあった紙布巾で口の周りを拭きながら、グレアラシルは驚きを隠せない様子だった。
「ですよね~。本当、驚きますよね。総務大臣って実は祖父の弟だったんですからね・・・・」
と、コレット自身も驚いていた事を打ち明けた。
「祖父の弟・・・つまり、大祖父と言う事ですか?」
「どうやら、その様でした。ただ、祖父と大祖父は普段は仲があまり良くなくて、年に数回会うか会わないかの関係で、更に何か少しいがみ合ってるんですよね。なので直接2人が話す事は無いんですが、ただ二人と仲の良い~と言うか腐れ縁の侍従が居るのです。」
そう言ってコレットはまた一口、コーヒーを飲んだ。
「多分私は運が良かったんです。本当ならこんな重要な事、侍従が私に教えてくれたりしませんもん。」
コレットは口をとがらせながら、話を聞いた経緯を思い出す。
「何か、どんな事情があるのか俺にはサッパリですが、何だかヤケに腑に落ちないって顔してますね。」
グレアラシルが、今のコレットの心境を言い当てる。
コレットは、
「まぁでも、どんなに腑に落ちなくても、動向を聞けたのは良かったです。それだけでもだいぶ収穫がありましたので。」
半ばやけっぱちの様な気分でコレットは、またコーヒーを飲んで今度は全部飲み干した。
「つまり、総務大臣とソルフゲイルの御三家の一つであるアルヴェント家の次男坊との間で行われた密会は、その次男と大祖父の孫との間に婚姻関係を結ばないか?と言う、そう言った話だったんですよ。」
コレットは、飲み干したカップをテーブルの上に置くと、まるで汚いモノにでも触ったばかりの様な苦々しい表情をしながら、そう言った。




