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ソラ・ルデ・ビアスの書架  作者: 梢瓏
第二章 ソラ・ルデ・ビアスの書架について
13/100

第13話 フカフカした触り心地の良い

 しかし、昨日の夜は大変だった~と、セレスは思い出しながら大あくびをする。

 結局昨夜は、ドタバタとコレットが夕方やって来てから~色々ひと悶着の末、書架に戻ってくる頃には夜も白んで来た頃で。

 一行は疲れ切って、コレットは書架の奥の客間で、グレアラシルは書架の入り口近くにある長椅子で休む事になったり。

 夜も明けて結構日が高くなった頃、普段はミカゲ位しか使わない台所からイイ~匂いがしてきて、セラスはその匂いで目が覚めた。

 ミカゲかな?と思いながらダイニングキッチンに向かうと、巨躯(きょく)の男が鼻歌交じりに何やら調理している最中だった。

 昨日の記憶がまだ再生しきっていない状態のセレスは、誰とも知らぬ者が何を作っているのか分からないけど、とりあえず顔を洗って服を着替えてからまた来ようと、自室のある3階に戻る。

 シャワールームは3階の自室とミカゲの部屋の間にある廊下の突き当りと、1階客間と台所の間にあった。

 自室の近くのシャワーを使った後、新しい服に着替えて再度階下のダイニングに移動する。

 ミカゲは?と言うと、昨日は拘束具を外して着けたり力の流出を見せてしまったりしたので、疲労が蓄積しているのだろう。

今日はもしかしたら目覚めないかも知れないな~とセレスは思った。

 書架の出入り口のドアを開けると、ポストにいつも配達される魔導士新聞が刺さっていた。

 いつもの様に毎朝の日課で新聞を引き抜くと、今日はミカゲは起きないし不意の客人も数名居るので、店のメッセージボードに1日閉店の旨を書いてドアを閉める。そしてダイニングキッチンにあるテーブル席に座った。

 そして新聞を広げて、昨日までに起こった魔道系の事件を読んだり、最近開発された魔法の情報を物色したりした。

 すると、目の前にとても良い香りのコーヒーが置かれたことに気付く。

 それを、誰が置いたのかを確認する事無く手に取り、匂いを嗅いだ。

 そのコーヒーは、毎日飲んでいたコーヒーよりも格段に香りが良く、セレスは何度も呼吸しながら香りを愉しんだあと、ぐいっと半分ほどまで飲んだ。

「温度もなかなか飲みやすい!」

 セレスはコーヒーを称賛した後また新聞を読み始めるが、そろそろお腹が空いて来たので新聞を畳んで近くに置いてあるマガジンラックに突っ込んだ。

「おはようございます!姐さん!コーヒーはどうでしたか?」

 キッチンで朝食の準備をしていた巨躯の男、グレアラシルが声をかけた。

 セレスは一瞬、「コイツ誰だっけ?」の目を向けた後、はっ!っとなって全てを思い出す。

「あ、ああああああ・・・・・・ああああ・・・・」

 記憶のすり合わせをして行くうちに、ようやく今の状況を理解した。

「そうだ、コイツはアタシに婿入りを志願すると言う、命知らずの行動に出たヤツだったな?」

と、グレアラシルに言ったのか、もしくは自分自身に問いかけたのか?よく分からない様な事を言い放った。

 その言葉にグレアラシルは、

「スミマセン・・・・本当に急に。でも、どうしても俺、あの時あの言葉しか出なくて・・・」

と言いながら、また少女の様に両手のひらで顔を覆った。

 その光景を見ながらセレスは、「コイツもしかして身体は男だが中身は少女なんじゃないか?」と思ったりしていた。

 そもそも何で婿入り?なんて思考が働いたのか?の理由を問わねばならないとセレスは思ったので、今はまだ誰も起きて来ていないこの状況を利用してグレアラシルに真実を聞くことにした。

「時にグレ、お前何でアタシに婿入りなんて思考に走ったのか?理由を聞かせてもらってないよな?と言うか、聞く権利がアタシにはあると思うんだけど?」

そうセレスは問いかけた。

 当のグレアラシルはと言うと、

「姐さん・・・・気分を悪くしないで欲しいんすけど、俺があの姿になっている時に、まるで犬か猫を抱っこする様に抱きかかえましたよね。」

「ああ、そうだな。あれ位の大きさの動物はどうしても、あんな感じで抱きかかえないと運搬は難しいだろう?」「姐さん・・・その際は面倒をかけて申し訳ありませんでした・・・・ですが一つ、非常に大きな問題が一つありまして・・・・」

と、かなり恥ずかしそうにもじもじし始める。

「問題って何だ?」

 セレスは、その真相を知ろうと、グレアラシルににじり寄った。

「じ、実はですね、と言うか姐さん、俺を抱っこしている時に、どちらかの手の指先にフカフカした触り心地の良い毛玉の様な部分がありませんでしたかね?」

「う~~ん、そう言えば、2回ほど抱きかかえた時に~・・・そういえば最初に服を拾いながら抱きかかえていた時に、右の手の指先辺りに二つのフカフカした手触りの良い球状の毛玉があったな!うん、あれは結構良い手触りだった。」

 かなりご満悦気味にセレスは、その球状のフカフカを触った時の指の感触を思い出しながら、右手の指を動かした。

「それです。」

グレアラシルが恥ずかしそうに、でも真顔で返答した。

「え?何が?」

セレスは、何がそれなのか?理解が追い付いていない様だった。

 そんなセレスにグレアラシルは少々イラっとしたのか、セレスの肩を掴んで耳元に口を寄せた。

「それ、俺の、アレなんですよ・・・・」

「アレ?」

・・・・・・・・・・・・・


 ガターーン!!


 セレスは、グレアラシルの手を勢いよく払いながら椅子から立ち上がると、反動で椅子が床に倒れた。

「な・・・・・!」

 今度はセレスが異様なまでに赤面して、昨夜自分が行った行為を改めて思い出す。

 思い出しながらセレスは悶絶し、頭を抱えてその場にしゃがみこんだ。


「ぅあぁぁぁぁああ・・・・・・・!!」


 セレスはしばらく、その場から立ち上がれなかった。

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