第一章 一話 知らない男性
「ここ、どこよ………!」
先程まで処刑のことでいっぱいだった頭がこんがらがる。
(まさか、死後の世界!?だけど、本には善人は天国、悪人は地獄と書かれて………………いや、死後の世界なんて誰にもわからないわ……!)
「やっぱり私、死んだのね……」
ほんの少し残ってた生き延びれるかもという期待が、一瞬にして消え去る。
「カルロ………」
急にとてつもない悲しみと憎しみが襲いかかってきて、その場にへたり込む。
(……もう、カルロにも会えないのね………………駄目よ、泣いたらもっと悲しくなるわ)
そうしていると、木々ががさがさとなる。
(えっ……な、何…?)
アメリダが目をやると、誰かが近づいてきているとわかった。
そして、響く声。
「誰かいるのか?」
そう言ってでてきたのは黒髪の整った顔立ちの男性だった。
男性は奇妙な、薄い外套のようなものに広がったズボンのような物を履いていた。初めて見る服装にアメリダは目を見張ったが、生地が一目見てもわかるほど良質なものだったので、この世界の特別な服なんだろうと納得する。
アメリダと男性の目が合う。
「…………」
気まずい沈黙が落ちる中、男性は警戒しながらアメリダに向かって問う。
「…お前は何者だ?」
男が何処からか出した短刀をアメリダの首に構え、ひんやりとした感覚が首を伝った。
(こっちが聞きたいわね…だけど、もう首を落とされるのは嫌よ)
男の出した短刀は、首の皮をすでに切りそうで、黙っていたら斬られると感じ取った。
「何者でもありませんわ。私は貴方の事を敵と見ていない。それに、気づいたらここにいたの。ここが何処なのかも分かりませんわ」
「…………」
そう言うと男は確かめるかのようにアメリダを見つめたあと、素っ気なく言い放った。
「ついてこい」
そう言うなり、踵を返してもとの道へずんずんと進んで行った。
(ついて行っていいのかしら……まぁ、もう死んだ身よ。どうなろうと、あの世界には戻れないのだから)
一人で納得すると、アメリダは男についていくのだった。




