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過去戻りしたら、小鳥になっていた

5/13 22時 誤字報告ありがとうございました。

名前の部分、はじめて気づきました。他の部分もありがとうございます。感謝です(*^^*)♪


5/18 21時 誤字報告ありがとうございます。

大変助かりました(*^^*)♪


5/20 13時 誤字報告ありがとうございます。

大変助かりました(*^^*)♪

 ある小国に反乱が起きた。


燃え盛る城に、反乱軍の貴族達が大挙して押し寄せて来る。


妻である王妃オーロラは、王の為に全ての罪を被り、自らの首を短剣の刃で切りつけ倒れ伏した。


夫を愛し命を賭けた妻の行動に、王ミクリアは言葉を発する。


「あの女が悪いのだ。私の補佐なのに、まともに仕事も出来ず、悪事を働いたのだ。私は悪くない。あの女が全て悪い。だから、私だけは助けてくれ!」


それを聞き、死に逝くオーロラは思った。

(ああ、ミクリア様。先に逝くことお許しください。出来るなら、貴方様は生き延びてください。…………お慕い申し上げておりました………)



命が尽きかけ死んだと思った瞬間、いつもと違う視界に目が(くら)んだ。


(あれ? 此処どこ?)


どうやら、ずいぶんと高い木の上にいるようで、町並みが小さく見える。目線の高さに驚いて、「こ、怖いっ」と、声を出したつもりだが声が出ない。

代わりに

「ピーチク、ピィ。……………ピーーーーイィ」の鳴き声が。


なんと私は、きみどりの小鳥になっていたのだ。




◇◇◇

(あれ? 何で? 私は死んだと思ったのに。これは夢なのかな? えーと、取りあえず王宮に行ってみよう)


私は恐る恐る羽を広げ、快晴の大空へと羽ばたいた。

丁度王妃の部屋の前庭には、大きな松の木がある。そこを目指して飛んでいく。


不思議なことに、思うままに飛行することができた。

重力から解き放たれたようで身も軽く、目下に広がる景色が模型のよう。そこに暮らす人々も蟻のように小さく見えるのだ。ここが私の暮らしていた国なのね。



「王妃様、お止めください。どうか、どうか」

「? ピ、ピピピッ?」

「どうなっているんだ! 医者を呼べ、早く!」

「ああ、何てことでしょう。きっと呪いの類いだわ!」


(オーロラ)は王宮にある松の枝に止まり、慌てる使用人の様子を見ていた。

(ああ、侍女のコルマ。いつも私にイヤミを言って嗤っていたのに、今は焦って倒れそうね。侍従のマルクもいつも冷静なのに、威圧を放って怒鳴ってるし。メイドのオレアはただただ震えているみたいね)


それもその筈、淑女と呼ばれていた(オーロラ)の体が、手掴みで食事をしているからだ。錯乱していると思われたんだろう。それに言葉も発せられないようだ。


「ピーチッチ、ピッ」

(あらあら。私(の体)ったら、大胆ねえ。でも美味しそうに食べているわ)


なんとも呑気な感想だ。

普通、自分の体が下品な行動をしていれば、「止めて。私はそんなことしない。違うのよ、信じて!」

なんて言うのが当然だ。


でも今の私の心は凪いでいた。

(不思議なこともあるのね。………もしかしたら、(人間の)私の姿に入っているのが、小鳥の魂なのかしら?)


死んでしまいたい私と、空腹で死にそうな小鳥の利害が一致した、とか?

解らないけれど、私の体が(35歳で死んだ時より)若いわ。20代の頃のように張りがある。


もしかしたら、時間まで遡ったのかしらね?




その後ものんびりと、木の実を啄んだり花の蜜を吸って眺めていた。王宮にはカラス等の天敵がおらず、快適だった。

人間の私(の体)は、たくさんの人に声をかけられて、時折不安そうにしている。けれど眠くなったのか、ゴロンと仰向けになり寝付いてしまった。


環境の変化に、疲れてしまったんだろう。



医師や呪術師も来るが、何も解らないと告げていた。


「どうにか、ならないのか?」

悲痛な面持ちで、ミクリア様が医師の胸ぐらを掴んだ。


「……調べてみますが、今は何も解りません」

脅されても何も言えなかった。

呪術師も同様だった。



人間の私(の体)は話す器官はあるが、中にいるのがたぶん小鳥なので、言葉は発せられない。


今の(オーロラ)は小鳥なので、鳴くことしかできない。


(人間の体に教えれば、いつか覚えるのではないかしらね? まあ。面倒なことをする手間なんて、かけないでしょうけどね)



役に立たなくなった私(の体)は、近いうちに(殺)処分か牢へ幽閉されるだろう。今までも子も産めず、政務だけを行っていたお飾り妻だ。王も見切りをつけるだろう。


そう思っていたけれど、私(の体)は殺されず大事にされていた。


夜間人気がなくなり静まった王妃の部屋から、ミクリア様の呻き声が聞こえる。

「なんで戻らない、オーロラ。呪いか病気なのかもハッキリ解らず、戻す方法もない。………ずっと俺を忘れたままでいるのか? このまま話してもくれないのか? なあ、お前だけは俺の味方と言ったのは、偽りか?……ああ、オーロラよ」


あろうことか、ミクリア様は泣きながら私を膝の上に抱きあげて泣いている。


何故なんだろう?

私はお飾りの筈なのに。


「必ず戻すから、待っていてくれ」

そう告げて、ミクリア様は部屋から去っていった。


ああ。この頃はまだ結婚したばかりで、それほど憎まれていなかったのかしらね? オーロラは記憶を手繰り、当時を思い出していた。




◇◇◇

それからのミクリアは、今まで丸投げにしていた政務に手をつけ始めた。


幼い時に戦で父王を亡くし、若くして王位に就いた彼は宰相の傀儡だった。成長し政策を提案しても、悉く却下されてきた。勿論始めは未熟な案であったであろう。しかし後にどんなに仕上がった意見も、「国の為になりませんので」と採用されなかった。


宰相周りも自分の利権が失われることを嫌い、民への教育・医療への政策を断念させていく。そこに宰相の(オーロラ)が王妃となり嫁いできたのだ。


既にミクリアの意欲など失せ、その怒りはオーロラに向いた。

「お前も父親と一緒になり、私を愚弄しているのだろう。好きにすれば良い。勝手に国を牛耳れ。私も好きにさせて貰う」


それからのミクリアは、賭博や女に金を使い政務を放棄した。半ば当てつけのように。


そして内部崩壊した国は、以前謀反で滅びたのだった。




過去戻りしても、同じ運命を辿るところだった。

しかし軌道が逸れた(オーロラが小鳥となった)道程は、国の運命を変えた。


ミクリアの真剣な政策は、宰相以外のマトモな大臣の心を動かし僅かずつ実を結んでいく。その大臣達から新たに味方と側近ができて、ミクリアは発言力を増していく。

「王が本気なら、私達も手を貸そうではないか」

「ああ。今のミクリア様ならば、二度と傀儡となるまいて」

「共に国を立て直そうぞ!」

今までは宰相とその側近に阻まれていた貴族も、熱意に満ちた彼に賭けることにしたのだ。国の命運をわける賭けに。



「ありがとう王様。生活が楽になって、子を学校に行かせられるよ」

「飢えることもなくて、安心して生きていける」

「………子を拐われることも、売ることもなくなった。売った子を買い戻せたんだ。本当に、感謝します」


民も以前より、国王への期待を持ち始めた。


結果として末期だった国は、横領や悪政で一部が懐に入れていた財政を民に回すことができ、徐々に再生していく。

それでも本当に僅かずつだけれども、その変化は大臣や官僚、民にも希望を与えていった。



◇◇◇

宰相は焦っていた。

傀儡の王より権力を奪い、自らが王のように振る舞っていたのに瓦解しだしたから。


「何故だ? 何故急に、政務に関わろうとして来た。そしてワシの邪魔ばかりしおって!」


宰相の劣勢に、悪事を行っていた同じ派閥からも、見切られようとしていた。頼りの娘も呆け、使い物にならない。


何とか案を出し、息のかかった側室を入れる。

再びミクリアを堕落させるか、駄目ならばその女に暗殺させようと目論む。宰相はミクリアを侮り、杜撰な計画を実行した。


結果オーロラへ執心する彼には、堕落以前の問題で、暗殺も側近により阻止された。拷問により女は宰相の仕業だと語り、二人は死を賜った。

死す前、「私は王妃の父ぞ。せめて生かしてくれ!」と叫び出すも、嘆願叶わず断頭台へ消える宰相。最期まで

生き汚い生きざまだった。


(貴方が父親でなければ、私は素直にオーロラを愛せただろうに) 

苦痛に満ちた面持ちで、彼の刑を確認したミクリア。


宰相の死をきっかけに、政界の大悪党は小悪党に縮小していった。根を張る悪は様子を見て、花を咲かせる時期を待つのだろう。定期的な除草は今後も必要なのだ。

「今は事を起こすべきではない。派手な行動は慎むことにしよう」



◇◇◇

ミクリアの味方であるオーロラの最側近(コルマ・マルク・オレア)達は、宰相や娘のオーロラを憎んでいた。だから決して、好意的に接することはなかった。


でも今、幼子のようなオーロラを、ミクリアと共に真摯に世話している。


「こちらも美味しいですよ、オーロラ様」

「あい」

「少し勉強もしませんと、ああこれは読めるのですね。頑張りました」

「あい、よめんよ(よめるよ)

「オーロラ様、お手玉しよう」

「しよー」


側近達の変わりように、ミクリアも目を細めて微笑む。

「ありがとう、みんな」

「「「勿体なきお言葉でございます」」」


彼らは悔いていた。

オーロラがミクリアを愛していることを解っていたが、彼をこれ以上利用されることや傷つけられることを恐れ、邪険にしていたのだ。


それでもオーロラは、父である宰相に言うこともなかった。言えば彼らは既にこの世に居なかっただろう。


オーロラは彼の境遇に同情し、寂しげな笑顔に心を惹かれたのだ。それは、恋人達と同じ愛ではなかったかもしれない。でも確かに “愛のようなもの” は存在していたのだ。


◇◇◇

国が変わっていくのを、オーロラは時々翔んで上空から見て回った。人々が笑顔で発展していく国を。


(ああ、みんな元気に働いているわ。これがミクリア様の目指した国作りなのね。少しずつ、叶えられているのね)


「ピー、チチチッ。ピルピルピル」

今日も小鳥が、楽しそうに囀ずっている。



ミクリアは毎日、仕事を終えるとオーロラに会いに来る。

「変わりないか、オーロラ?」

「あい、みくさま」

「そうか、良かったな」

「あい、あい」


オーロラの部屋は庭に面しており、大きな窓を開けると庭が一望できた。

5年の歳月が経ち、簡単な会話は出来るようになった(人間の)オーロラ。ただ口調は幼児のように辿々(たどたど)しい。側近とミクリアとしか会わないようにされているせいであまり上達しないのか、元が小鳥だからかは解らない。


「月が綺麗だな」

「あい」

「…………あの日のお前には、もう会えないのかな?」

「あい?」

「いや、何でもないよ。ああ、私の涙を心配しているのか? 優しいなオーロラは」


(人間の)オーロラを膝に乗せて、初夏の月夜を眺める二人。下弦の月は、仄かに二人を照らしていた。


(ああ、ミクリア様。泣かないでください)

その姿を、松の枝から見守るオーロラ。


鳥の身では何もできず、ただ祈ることしかできないのだった。




◇◇◇

オーロラは天敵のいない庭園で暮らしている。

ミクリアも(人間の)オーロラもその存在に気づき、肩に止まることを許してくれた。


「ほら、お食べ」

時々、小さく切ったりんごを手に乗せてくれる。

「ピーチチッ、ピッ」

(ありがとうございます、美味しいです)


「そうか、美味しいか」

微笑むミクリアと(人間の)オーロラ。




◇◇◇

思えばミクリアの行動が変わったのは、オーロラを治そうとして、宰相に立ち向かってからだ。

あの時宰相は、確かにこう言った。


「オーロラは使い物になりません。毒杯で死なせ、新たに妃を娶り子を成しましょう」と。


確かにミクリアとオーロラには子がいない。

宰相には内緒にしていたが、白い結婚だったからだ。

でもそれは、子まで傀儡とされることを厭った為であり、愛を囁いてくれるオーロラが嫌いだからではなかった。

…………宰相のことは憎んでいても、オーロラを信じたい気持ちは残っていたのだ。

オーロラは子が成せぬことで、どんなにか責められても、白い結婚のことを口にすることはなかった。それで少しずつ心を開けていたのだ。言えば即側室を捩じ込まれることは、想像に難くない。どんな媚薬でも道具でも、方法等問わなかっただろう。


宰相は(オーロラが)実子でありながら、邪魔だと切り捨てようとしている。

(そんなことは許さない! あの弱ったオーロラを見ても、何とも思わないのか?)


オーロラを治療し守る為には、自分に力が必要だと気づき奮闘が開始された。今まで放置していたことに手を付けるのは、大変な苦労を要した。恥を捨て、まずはマルクに聞き、マルクの友に尋ね、マルクの友の親の大臣に教えを乞うた。


宰相に見つからぬように、お互いに細心の注意を払いながら。そうまでしても、オーロラを守りたかった。


今になってみると、オーロラは側近以外に初めて心を許した人だった。両親の死さえ、宰相の手が及んでいないか怪しいところだ。例え、その両親から受ける愛情を阻止した男の娘であったとしても、淀みない眼差しはミクリアに届いていたのだ。それが愛かは、彼にも解らない。情のようなものだったかもしれない。



そうまでして権力を身に付けても、オーロラを治すことは出来なかった。その後はオーロラを愛でながら、穏やかに過ごすことにしたミクリアだが、心には愛おしさと切なさが去来していた。


「もっと早く、伝えれば良かったな。愛しいオーロラ」


オーロラの隣に座り、今日も庭を見るミクリア。

昼から見る景色は、大空の下で色彩も鮮やかだ。


ミクリアとオーロラと、ミクリアの肩には小鳥が止まって、優しい風と流れていく雲だけが三人を見ている。



小鳥の寿命は10年前後だが、その鳥は20年を越えてそこにいたと言う。その鳥の子ではないかと言う者もいて、珍しがられることもなかったが。


その鳥は、ある日ミクリアの膝に降りてきたかと思うと、動き出すことがなかった。どうやら寿命が尽きたらしい。


ミクリアとオーロラで、庭に墓を作り冥福を祈った。



その後も国は少しずつ豊かになり、その国に住む貴族達は他国にもそれを伝えていった。落ち着いた国は他国との交流も盛んになり、戦争となることもない。勿論、反乱も起こらなかった。



小鳥が死んで10年後、オーロラが亡くなり、その後数日でミクリアも儚くなった。


葬儀には多くの人が涙し、荘厳にミクリア達は送られた。


ミクリアは側室を持たず、子もいなかった為、親戚筋の聡明な者が後を継いだ。オーロラとは、生涯白い結婚のままだった。まるで子を愛でるように睦まじかったと言う。



ミクリアが天に昇る時、オーロラが迎えに来ていた。

「お疲れ様でした、ミクリア様。共に向かいましょう」


ミクリアは微笑んで、頷いた。

「ああ、待たせたな。今度は離さない。愛しているよ」


オーロラの肩には、小鳥が乗っていた。


「じゃあ、みんなで一緒に」

「ああ、共に行こう」

「ピー、ピピーッツ」


オーロラは心から嬉しくて、満面の笑みを見せた。

ミクリアも小鳥も嬉しそうに、微笑みを返して昇っていった。


「ピー、チチチッ」



その透き通る声に、大空を見上げた人が多くいたそうだ。


5/12 19時 日間純文学ランキング(短編) 42位でした。

ありがとうございます(*^^*)


5/13 17時 日間純文学ランキング(短編) 6位でした。

ありがとうございます(*^^*) 

22時まさかの3位でした。ありがとうございます(^-^)/♪


5/16 0時 日間純文学ランキング(短編) 2位でした。

ありがとうございますヽ(*´∀`*)ノ ワッショーイ♪♪

21時 まさかの1位に。ありがとうございます。

.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.♪♪

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