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9話【姉妹Side】

 散々宴を満喫してから二日後。

『高原の姉妹カフェ』という名に変更して営業を再開した。

 いつものように大盛況である。


「やっぱり予想どおりね! フィレーネなんていなくたってしっかりと営業ができているわ! むしろ売り上げが伸びている」

「サーラお姉様が価格を1,000ゴールドから2,000ゴールドに値上げしたからですわ。でも、売れた数も今までと一緒。最初から2,000ゴールドで販売していれば良かったですね」

「ほんっとそう思うわ。フィレーネが頭を下げてこれ以上値上げはしないで欲しいって、一生のお願いだからと言われていたからねぇ……」


 どんなに恨んでいたとしても、わらにでもすがるような勢いで交渉されては断りきれなかったのだ。

 値上げはしなくとも、十分な売り上げが確保できていたため、さほど気にするところではなかった。

 しかし、欲望が強くなり、今のままではダメだと判断したからこその値上げである。


「今までの分の損害を返せって思いますわ。ま、これで奪い取っておいた私物も損害の補償として成立しますけど」

「エマも良くやってくれたわ。私も反省するべきよね。断固としてフィレーネの願いを却下して2,000ゴールドで販売しておくべきだったわ」

「いえ。これもサーラお姉様が優しいからです。そんなお姉様のことが大好きですから」


 サーラはエマの頭をよしよしと撫でる。

 自分のミスだと反省しても、エマが責めてくることはなかった。

 サーラは、フィレーネに対してより強い制裁を加えなければと決意した。


「今後、もしどこかで会ったとしてもフィレーネには容赦はしないわ。帰りたいって言ってきてももう家には入れない。店も出入り禁止にするから」

「はい。まぁ当然の報いだとおもいますけれどね。大した力もないくせにお母様から可愛がられていて……。今思い出しても許せませんわ!」

「お母様も薄情なとこがあったわよね。どういうわけか私とエマにだけ厳しくてすぐ怒ってきた」

「ひいきですわよね。でも、お母様から褒められたかったから色々とやってきたというのに、いつもフィレーネばっかり……」


 今年で二十歳になるサーラも、ふたつ下のエマも、気がついていなかったのである。


 サーラはプライドが高いだけで聖なる力の祈り方も心からやっているわけではなく欲望に満ちたものだった。

 それを母チェルビーは気がつき、厳しく指導していたのである。


 エマは言葉遣いだけは上品に育ったものの、腹黒く、聖なる力を発揮するには不適合。

 なんとか性格を改善させなければと必死に教育していた。


 フィレーネだけが褒められていたと感じてしまうのも、二人にとって仕方のないことであったのだ。


「天国のお母様たちにも見返してやるのよ。これからは高原の姉妹カフェでどんどん売り上げを伸ばすの! この家が豪邸に変わって、そのうちここが王宮と言ってもおかしくないくらいのつもりでひたすら儲けるのよ」

「夢は広がりますね。これも全てサーラお姉様が頭の悪いフィレーネを追放してくれたおかげです」

「ここから逆転するの! 高原の姉妹カフェを王都だけでなく世界中に轟かせるのよ」


 二人だけになったことで、欲望と自由が次第に増していく。

 これではせっかく聖女として生まれ、奇跡の力である聖なる力も弱まる一方だ。


「ところで……。サーラお姉様は、今日は裏庭では祈っていなかったのでしょうか?」

「え? いつもどおりに祈ったわよ?」

「そうですか……」

「どうかしたの?」

「いえ、なんでもありません。わたくしの勘違いですわ」


 エマは違和感を覚えた。

 今までフィレーネがサボっていないか監視役として裏庭には良く出ていた。

 普段は収穫してもすぐに新たな実が育ち常に良い香りと綺麗な作物畑だったのだ。

 だが、現状は作物畑はあるものの、良い香りがあまり感じられなかったのである。


(うーん……。二日間はしゃぎすぎてしまったのでしょうね。大丈夫です。明日から頑張れば良いのですから)


 エマは心の中でそう言い聞かせて、サーラと二人きりの時間を満喫した。

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