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聖なる飲み物だと気がつかない聖女フィレーネのカフェ経営 〜聖女を追放させた姉妹は破滅へと真っしぐらです〜  作者: よどら文鳥


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23話【姉妹Side】

 国王が高原の姉妹カフェに来店してからというもの、店はすっかり暇になってしまった。

 中には、一杯2,000ゴールドと言われ、ガッカリして帰る客すらいる。

 今までは2,000ゴールドだとしても、空席がなく店内が賑わっていたため、いたし方ないと思う者が多かった。

 ところが、客がいない状態では、高すぎる価格設定に加え、過去のような人気の店なのかどうか疑問視する者が多い。


「サーラお姉様……。高原のカフェ始まって以来の赤字です……」

「もうっ! どうしてこんなことになってしまったのよ!」


 サーラの言いわけだけでは説明できないような状況に追い込まれている。

 エマはサーラのことを溺愛しているものの、今回の事態にはいささか不安と不満を覚えた。


「このままでは経営破綻なんてことも考えられます。早いところ対策をしないとまずいです」

「わかってるわよ、そんなことくらい!」


 サーラはエマに怒声を浴びせた。

 エマに対して怒ることなどなかったサーラだが、ムシャクシャしていたためあたってしまった。

 エマも驚きを隠せず、涙をこぼしたのである。


「ごめん。エマを責めても仕方なかったわ。憎むべき相手は王都でカフェを始めたっていう忌々しいマスターよね!」

「カフェチェルビーのことですね……。あの店が始まってから高原の姉妹カフェの売り上げも落ちました」

「そうよ! 需要を全部取られちゃったの! 王都で飲めるなら、そりゃみんなそっちへ行ってしまうわよ!」


 価格を元の1,000ゴールドに戻し、尚且つサーラとエマが愛情を込めて畑で豆や茶葉を育てていれば、客足が減ることもなかった。

 魅力のひとつに、大自然の中で楽しめるカフェというものも魅力だったのだ。

 そうでなければ、わざわざ王都から出向いてくるはずもない。

 そのことにサーラもエマも気がつけなかった。


「いくら王都でカフェを開いたところで、まだ私たちに分があるわ!」

「なにか良い策でもあるのでしょうか?」


 サーラがニヤリと微笑む。


「えぇ。エマも知っているでしょう? 王宮には誰もが知っている有名な料理人がいることを」

「はい。国王陛下にも高く評価されていて、その料理人に認められたら、どの店もそれ以降とんでもない有名店になったとか」

「そう! 風の噂で聞いたんだけど、その料理人がカフェに注目しているようなの」

「では、この高原の姉妹カフェが⁉︎」

「間違いないわ。その料理人って、『本来の客足に満たないような店に入って、気に入れば広める』そうだもの。まさに今の高原の姉妹カフェそのものじゃない!」

「たしかにそうですね! この店は本来開店から閉店まで満席が普通でしたもの。たしかにいきなり金額を二倍にしたことで客足は減ってしまいましたが、それでも満席になっていてもおかしくありませんよね」


 エマにも希望が見えてきて、笑顔を取り戻した。


「そんなに素晴らしい情報を隠していたなんて、サーラお姉様も人が悪いですわよ?」

「いつ来店されるかはわからないもの。でも、そう遠い日にはならないと思う」

「早く来て欲しいですわね。でも、さすがに料理人相手ならば、しっかりと裏庭で収穫したものを出さないと……」


 そううまくもいかなかった。

 サーラとエマは毎日収穫できるように祈っている。

 とても真剣に、だ。

 二人の祈りのおかげで、ようやく新しい芽が生えてきた。これは、通常の成長より、はるかに早い。

 それでも、心を込めて毎日祈っていたフィレーネには遠く及ばなかった。


「ねぇエマ。フィレーネってどうやって祈っていたかわかる?」

「いえ、わかりません。なぜ今になってあの女の名前を?」

「あいつだけは、お母様から溺愛されていたじゃない? なにか特別な方法で収穫していたんじゃないかって。だって、私たちが二人で祈っても全然収穫できないじゃない。ハメられたのよ」

「ハメられた……?」

「私もしくは畑に実らないようにする呪いかなにかをかけてから出ていったのよ……。どんなに頑張っても育たないわけだわ」


 エマはフィレーネに対して激しい怒りを覚えた。


「次回豆を仕入れに行くときに、あいつを見かけたら捕まえて責任を取ってもらいましょうよ」

「悔しいけれどそうするしかないわね。今までフィレーネのくだらない嫌がらせに勝てると思っていたけれど……。このままじゃせっかくのチャンスもダメになってしまうもの。すぐに対策を立てましょう!」


 二人の不毛な対策が始まった。

 もちろん、王宮の料理人が高原の姉妹カフェに来ることなどなかったのである。

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