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第21話 反則三昧

 試合を裁く審判は1人しかいない。試合中に技の巻き添えを食らったり体調が悪くなったりしたときのために交代要員はいる。しかしその試合の勝敗や反則の裁定を下す資格があるのは1人だけで、2人以上が権利を持つことはない。


 かつては3人の審判を用意することで公正な試合を作ろうとした。しかし3人もいると誰かしら裏金をもらっていて、逆に不正まみれになってしまった。信頼できる1人が裁いたほうが混乱もなく皆が納得するのでそのまま現在に至っている。



『審判がザルカヴァ組の反則負けを宣告しました!勝者となったライト姉妹ですが、仲間に肩を借りながら退場していきます!』


 ザルカヴァたちは元気いっぱいにリングを去っていく。観客たちが怒ってもおかしくない暴挙を働いたが、昨日までのいい戦いとの落差にすっかり驚いてしまい、反応がなかった。


「よし……キンツェムの注文通りにできた」


「あとは……次の出番まで隠れないと。試合がよく見えるところでね」


 自分たちの試合は終わったはずなのにザルカヴァとラフィアンはまだ出番があるという。誰にも見つからない場所に潜んでいた。




『さあ、次は本日一番の目玉試合!明日の決勝戦に向けて大事な前哨戦となります!勇者として旅立つことが決まっている第3王子トレヴとその助け手シーナが順当に全勝通過するのか、それとも小さな道場の師弟コンビキンツェムとポリーが波乱を起こすか!?』


「…………」


 同じ道場のザルカヴァたちが直前に奇襲攻撃や反則をしているのでシーナは警戒していた。ところがトレヴは笑顔のまま歩み寄って握手を求めてくるほどだった。



「ハッハッハ!今日は勝敗よりも内容が問われる一戦だ!いい勝負をしようじゃないか!」


「………」


 トレヴがシーナを促すので、渋々シーナも手を差し出す。キンツェムとポリーは顔を近づけて小声で話した。


「……どうします?隙だらけですよ」


「ここは何もしない。仕掛けるのはあとだ」


 素直に握手に応じ、不意打ちもしない。シーナの警戒を空回りさせた形になった。



「………トレヴ様」


「彼女たちは普通に戦うしかないのさ。ワタシの前では小細工は無意味だとわかっているからね。さあ、いつものようにワタシのために適当にやられてきてくれ、頼むよシーナ」


「………はい」


 ポリーとシーナの顔合わせで試合が始まる。ポリーは観客の人気を集め、大手の訓練所からスカウトが何件もくるほどだ。拍手や歓声もトレヴに負けないレベルだった。



『では………始めっ!!』


「でやぁ―――――――――っ!!」


 ポリーから攻撃しシーナはそれを凌ぐ、真っ向から肉弾戦になった。シーナが自分からはあまり攻勢に出ず、相手の技を受けるだけ受けて体力や魔力を削ったところで満を持してトレヴが登場、その戦い方は今日も同じだった。


(そのお決まりの流れを崩す、それが師匠の狙い!そろそろ始めよう!)


 シーナの防御力は高いが鉄壁とまでは言えない。不自然にならないように少しはダメージを受けるために、身の守りを強化する魔法を適度に使っていた。



「………うあっ!?」


「お、おいっ!反則だぞ、早くやめろ!」


 髪の毛は魔法の範囲外だった。攻撃すると見せかけて前髪を掴み、転ばせてから引きずり回した。ポリーらしからぬ荒い戦い方だ。


「5秒以内にやめるんだ、1!2!3……」


「わかりました、放しましたよ、ほら」



 シーナを突き飛ばすようにして攻撃をやめてからポリーはキンツェムにタッチして交代、そのキンツェムはシーナの手を取り起き上がらせようとした。


「すまない、ポリーは熱くなりすぎていた。頭を冷やすように言っている。さあ、ここから質の高い戦いを再開しよう」


「ど、どうも………」


 弟子の失態を謝罪するキンツェム。その表情や仕草にシーナはすっかり騙されてしまった。気がつくと両目に一本ずつ指が迫っていた。



「痛っ!!あああっ!!」


『眼球への攻撃だ!目が潰れるほど強い攻撃ではありませんがこれでは瞼を開けないか!?』


「戦いの最中なんだ、目を逸らすなよ」


 シーナの両目を指で弾いた。ダメージが残らないように、しかし数十秒は動きを封じるように威力を調整した反則攻撃だった。



「うっ………ぐっ!」


『倒れるシーナを何度も踏みつける!先程の試合に続き、失格ギリギリの悪辣な攻撃です!』


 ザルカヴァたちがあんな戦い方をしたのは決勝進出がなくなり自棄になったせいかもしれないと人々は考えていた。ところがキンツェムとポリーまでこうなってしまったので、皆は口に出すことはなくても、とても嫌な予感がしていた。


「よし、ポリー!このまま決めるぞ!」


「わかりました!潰しちゃいましょう!」


 2人がかりでの攻撃が続き、シーナはどんどん体力を奪われる。これまでの試合でトレヴと交代した時間の半分以下でこんなに追い詰められるのは完全に想定外で、待機しているトレヴの顔からも余裕が消えた。



「こら、下がらないか!試合権利があるのはこっちのキンツェムだ、お前は下がれ!」


「くっ……これ以上はこのワタシが許さない!」


 トレヴが正式な交代をせずにリング内に入り、ポリーをロープの間から外に落とした。そしてシーナを自分たちのコーナーに連れて帰り、そこでタッチして権利を自分のものにした。


「す……すいません、トレヴ様………」


「気にしなくていいよ。彼女たちはなかなかの策略家のようだ。あとはワタシがやる、もともとそのつもりだった!」


 大技発動へ魔力と気力を整える。得意としている星の魔法を用い、キンツェムを一撃必殺で倒すイメージができていた。



「くらえ、グロリア・スター………」


 魔法を放つ寸前でトレヴは急停止を迫られた。なぜなら、


「お……おいっ!やめないか!」


 キンツェムが審判を盾にしていた。このまま攻撃すると審判も巻き込むか、最悪審判を痛めつけるだけでキンツェムにはノーダメージだ。



「悠長にやってくれたおかげで審判を利用する時間ができた……感謝するよ」


「くっ……卑怯者め!」


 遠距離攻撃を諦め、直接キンツェムを叩くためにトレヴは突進した。しかし、それこそがキンツェムの狙っていた瞬間だった。



「………はっ!?」


「うげっ!!」


 向かってきたトレヴに対し、なんと審判を突き飛ばして激突させた。訓練を積んでいるトレヴはすぐに起き上がったが、当たりどころの悪かった審判は倒れたまま失神してしまった。


「………………」


「どうした、しっかりするんだ!」


 トレヴの呼びかけにも返事がない。審判不在ということは、ますますリングが無法地帯になると告げているかのようだった。

 グレート・O・カーンが来年には新日本のエースになっていると思う方は高評価&ブックマークをお願いします。長州と同盟を結んだりムタとタッグを組んだり(論外もいるけど)、波が来ています。受けのうまい器用な技巧派、それでいてパワー勝負もできるOカーンは誰とやってもいい試合ができるのでプロレス界の頂点に立てる素質があります。


 コミカルな試合もこなせるので、来年の東京ドームでは因縁の○本記者と棺桶デスマッチはどうでしょうか?ハードコアルールを希望します。

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