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*** 84 真・銀星勲章 ***

 


 その場の多くの上級神が転移で逃げようとした。

 だが魔法が全く発動しないので慌てている。


「調査部門長」


「はっ!」


 部門長の手からパラライズの魔法が飛んだ。

 同時に議場にある6つの扉から300人を超える調査部門の警備員たちが雪崩れ込んで来て、硬直している151人の議員たちを拘束して議場外に連れ出している。

 こうなることを予期して待機させていたようだ。



「もう犯罪者どもには聞こえんだろうがの。

 流刑星はタケル神が整備してくれたおかげで、かなり暮らしやすくなっているそうだ。

 あの者たちに農業は無理だろうが、それでも森には多くの木の実や果実があるので、食べ物には困らんらしい。

 タケル神に感謝しながら残りの生を過ごすがよい」


((((( ……………… )))))



「そうそう、これだけの上級神が揃っておるので丁度よかろう。

 前最高神閣下、神界各部門の重職者、それからわたしの推薦により、タケル神に神界銀星勲章を授与の上、中級神に任ずる」


「「「 !!!!! 」」」


(聞いてないんですけど……

 まあいいか、これでまたみんなを昇格させてやれるし)



「異論のある者は今この場で申し出なさい」


「さ、最高神閣下!

 銀星勲章と言えば、神界各部門の重職か上級神会議議員を1000万年以上務めた者が引退するときに授かる勲章ですぞ!」


「タケル神はまだ暦年齢で16歳にも達していない若輩の神でありますぞ!」



「そなたらは確か原理派でもなく救済派でもない中立派と呼ばれる者であったの。

 原理派も中立派も本質的には同じなのだ。

 要は銀河宇宙に貢献する能力も智慧も意欲も無く、努力をする気も無い者が言い訳として主張する論理だの」


「「「 !!! 」」」


「で、ですが最高神さま!

 我ら神は神として存在することに意義があるのでは!」


「それは『怠惰』の罪を為す者の言い訳だ」


「「「 !!!!! 」」」


「考えてもみよ。

 ここ数百年間、銀河宇宙の神界支持率は僅かに18%だったのだぞ。

 つまりは『神界を支持しない』もしくは『神界には期待していない』という者が82%もいたということなのだ。

 あの大不祥事以降での支持率0.8%は、この不支持と期待しないという者が99%以上もいたことを意味していたのだよ。

 よいか、神の存在とは、銀河宇宙の存在があってこそなのだ。

 銀河宇宙が無ければ神界が存在する意義など無いのだからな。

 このことはとくと心得よ。

 神界とは銀河宇宙のために或るのであって、神界のために銀河宇宙が在るのではないのだ」


「「「 ……あぅ…… 」」」


「タケル神は単なるプロパガンダでもなく、そなたらの言う『存在』とやらの無意味なものでもなく、その実行力と実績で銀河の民の信頼を勝ち取ったのだ。

 そなたらは何もしないことを数千万年続けることを神の功績とカン違いしておるがな、そなたらの中で、いや神界140億年の歴史の中で、この男の万分の1にも匹敵する功績を挙げた神はひとりもおるまい。

 その神の叙勲に当たって、『何もしていない期間が短い』という理由で反対するというのかぁっ!」


「「「 ……あぅあぅあぅ…… 」」」


「そうした単に『何もしていない期間が長い』者に与えられた銀星勲章と、タケル神に授与する銀星勲章を同一視する愚か者が出ないようにするためにも、タケル神への勲章は『真・銀星勲章』として従来の銀星勲章とは区別するものとする。

 また、今後神界各部門の重職か上級神会議議員を1000万年以上務めた者に与える勲章は、単に『功労章』とする」


((( ………… )))


「わたしは当初、タケル神には『真・金星勲章』を授与するつもりだったのだがな」


「「「 !!!!! 」」」


 神々が固まった。

『金星勲章』とは、長い神界の歴史の中でも過去3度しか授与の例がない。

 それも2000万年近く最高神の座にあった神が、その引退に際してお手盛りで自分に授けたものだけである。

(彼らは後に『お手盛り神』として笑い者になっている)


 それが最高神でない者に授けられるということは、神界140億年の歴史の中での勲一等ということになるのだ。



「だが、ゼウサーナ・マイランゲルド前最高神閣下が、『それでは次にタケル神が大功績を打ち立てた時に、与える勲章が無くなってしまうぞ』と仰られたので考えを改めたのだ」


((( ………………… )))



 最高神政務庁主席補佐官アルジュラス・ルーセンは思っていた。


(エギエル・メリアーヌス最高神さまは、ここまではっきりとご自分の考えを述べる方ではなかったはずだ。

 どちらかといえば調整型のトップだったしな。

 それがこのように明確にご自分の意思をもって神界改革を断行されるとは……

 たぶんこれもあのタケルの影響なのだろう。

 そういう点でもタケルの功績はさらに途方もないものになるのか……

 はは、前最高神閣下、現最高神閣下、そして最高神政務庁主席補佐官であるわたしに甚大なる影響を与える暦年齢わずか15歳の神か……)



 尚、後日刑務所や流刑地にも配布される神界公報にて、タケル神の『真・銀星勲章』受勲と中級神への昇格が発表された。

(もちろん銀河宇宙出身者が中級神に昇格するのはここ100億年で初めてことである)


 これを見た受刑者や流刑者のほとんどが激怒するか慟哭し、その3割近くが激怒性の脳溢血を起こして医療措置を受けたとのことだった……




「ときにタケルよ、そなたの神域にあのリゾート惑星をもう一つ、神界の神々用に造ってくれるというのは本当かの」


「はい、最高神閣下」


 小さく歓声が上がった。


「それから、そなたの功績からおこぼれを貰うようで申し訳ないが、あの莫大な寄進を使って神界年金を5倍にすることも構わんかのう」


「それももちろんです」


「実際には、年金5倍増は現在引退中の神々には即時適用されるが、今後引退する神については人事部門への申請と承認が必要になることだろうがな。

 また、タケルが用意してくれる神専用のリゾート惑星の運営は神界が行うので、安価ながら銀河宇宙並みの利用料は取るぞ。

 まあ、年金が5倍になったのだから払えるであろう」


 歓声が上がっていた。

 だが事前に最高神閣下と協議を行っていた各部門トップは、全員が厳しい表情のままだったのである……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 神域に戻ったタケルは、ホテルの大広間にニャイチローたちと諮問会議メンバー200人に集まってもらった。

 この場の様子は神域の全員にも映像で届いている。


「本日、俺はエギエル・メリアーヌス最高神さまより神界の『真・銀星勲章』を賜るとの内示を頂いた。

 同時に中級神に昇格だそうだ」


 大広間に大歓声が沸き起こった。

 何事かと思ったホテルの支配人ドローンがすっ飛んで来るほどの歓声である。

 もちろん神域全体でも大変な騒ぎになっている。


 タケルが手を挙げると、その大歓声も潮が引くように鎮まっていった。


「もちろん、この叙勲と昇格は諸君の力によるところが大きい。

 そこで、ニャイチロー、ニャジロー、ニャサブロー、お前たちは上級天使に2階級昇格とする」


 びーん! びーん! びーん!


 3人のしっぽが歯間ブラシ型になった。


 その3人は200人の諮問会議メンバーに胴上げされ始めている。

 彼らの体重は45キロほどしか無いので、大広間の高い天井に届く勢いでぽんぽん打ち上げられていた。

(諮問会議メンバーも毎日多少の鍛錬は行っているのでレベルは上がっているのだ)


 だがまあニャイチローとニャジローはレベル600超えだし、ニャサブローもレベル400なので、天井に当たろうが床に落ちようが特に問題は無いだろう。



「次に諮問会議メンバー諸君、諸君らの功績も大であるために、中級天使に2階級昇格とする」


 諮問会議メンバーが固まった。

 ニャイチローたちは体をくるんと回し、何事も無くすたっとフロアに降り立っている。

(さすがは猫人族! サス猫!)


「また、10万人の天使見習い諸君、諸君らは全員初級天使とする。

 皆、ありがとう!

 俺からの発表は以上である」



 その日消費された祝杯用の酒は、通常の10日分に達したらしい。

 また、タケルはお祝いと称する母娘に吸い尽くされて、またキンタマのレベルが3も上がったそうだ……




 この大慶事はタケルの神域にいた銀河連盟報道部により、直ちに銀河宇宙に伝えられた。


 おかげで銀河全域のタケル神殿には普段に10倍する人出に溢れ、エラいことになっているらしい。

 恒星系ムシャラフとミランダでは、10日間の祝日になったそうだ。


 また、タケルは知らなかったのだが、通常『銀星勲章』受勲者の翼は白ではなく銀色に輝くようになるとのことである。

 そのために銀河の全域ではタケル神像の翼の装飾作業が始まっていた。

 それも、どうせならということで、純銀を張って防錆措置を施したものになるらしい。

 タケル神域の資源倉庫から膨大な量の純銀資源が売れて行ったとのことである。




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




『傲慢』と『嫉妬』と『強欲』に塗れた上級神たちの追放が終わると、神界最高神政務庁は新たな政策と制度を打ち出した。


 まずは神界人事部門を最高神直轄とすることである。

 これが広報部門から発表されても特に反響は無かったようだ。


 次に発表されたのが年金の増額である。

 神界の年金は、神が神界の任務に就いていた期間に応じて決められていた。

 1000万年以上の神界への貢献を行った神については、最高額で年間30万クレジット(≒3000万円)の支給であり、引退時に銀星勲章を受勲しているとさらに10万クレジットの銀星勲章年金が加わっている。

 これを一律5倍にするとの発表に神界は大いに沸いた。


 尚、今後役職を辞して引退する神については、人事部門の推薦によって従来年金の5倍増が決定されるとのことである。


 さらに、この年金増額に伴って、各神々がその神殿で雇用している侍従侍女などの給与負担も雇用者である神の責任ということにもなった。

 仮にこのために解雇される侍従侍女がいたとしても、人事部門に開設される『職業紹介センター』が責任をもって再就職先を斡旋するとの通達も出ている。


 尚、ほとんどの者が気にしなかったが、神界の全ての秘書AIについて、バージョンアップのために10分ほどの作動停止期間があるとの通知も出ていた……





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