表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/248

*** 8 曾孫 ***

 


 病室からしばらく歩くと広大な応接室があった。

 そこには中央に座るエリザベートさまと、その左右に立つ2対4枚の大きな翼を持つ5人の猫人、その後ろに1対の翼を持つやや小柄な30人ほどの猫人がいて、その後ろにはもっと小柄な猫人が100人近くいる。

 その中でも小さな子はほとんど猫に近い。


(そうか、猫人って大人になると猫耳と猫しっぽだけで後はヒト族と同じになるけど、生まれてすぐは猫そのものなんだな……

 それにしても、翼のある人たちって神さまなのか?)



 エリザベートさまが立ち上がり、涙をぼろぼろ零し始めた。


「おお! その顔、その表情、その威圧感っ!

 まさしくそなたはタケルーの生まれ変わりだ!」


 5人の猫人が前に出て来た。

 3人が20代後半ぐらいに見える女性で、2人は30歳ぐらいのがっしりした男性だった。

 全員にかなりの威厳がある。


(あ、この5人、頭の上の猫耳だけじゃあなくって、頭の横に人耳もある!)


 女性3人が泣きながら抱き着いて来た。


「お、お帰りなさいお父さまっ!」


(マジかよっ!)


 男性2人も近づいて来た。


「お帰りなさいませ父上っ!」


(ままま、マジですかぃっ!

 お、俺15歳にして5人の子持ちっ!)


「タケルーや、この5人はまぎれもなく妾とタケルーの子だ。

 見ての通り全員が中級神にまで至っておるがな。

 そして、後ろの30人はこの5人の子である初級神だ。

 そしてさらにその後ろの100人はその30人の子、つまりは妾とそなたの曾孫だな」


(マージですかいっ! お、俺曾孫100人いるのぉぉぉ―――っ!)



 俺たちは広大なソファに落ち着いた。

 俺の周りは子猫や子供の猫人たちが埋め尽くしてにゃーにゃー言っている。

 どうやら俺の頭の上や肩の上のポジションを取り合いしているようだ。

 加えて俺の肌が露出している顔や手は、無数の猫や猫人の子にペロペロされていた。

 まあ猫の親愛表現なんだろうけど、どっちかっていうとペロペロじゃあなくってザリザリだな。

 これこのまま1時間もすると俺の顔や手の皮が全部剥けて、理科室の人体標本みたいになるぞ……



 正面にはエリザベート上級神さまが座り、その左右には5人の大人たちが座った。


(あ、翼が畳まれてる……

 そうか、敬意を表したり儀式のときには翼は広げるけど、普段は畳んでいるんだな。

 そうしないとドアとか通れないもんな、はは)



「それにしても記憶移植が無事終わってよかったです父上」


「この上は我がリリアローラ一族3000人に加えて、8500万柱の救済派の神々、猫人種族8京人がご助力させて頂きますのでご安心くださいませ」


(…………)



「なにしろ銀河全域にその神業績が轟く超英雄の復活ですからのぅ」


「そのおかげさまをもって、我ら子孫も随分と恩恵を受けて参りました。

 このように我々5人には猫耳以外に人耳もあるのですが……

 通常であればこのような異種族間交配の痕跡はやや忌避されることもあるのですけどね」


「ですがこの人耳は、なんといってもあの超英雄の遺伝子を象徴しているわけです。

 そのために我々は物心つく前から『超英雄の子』としてそれはそれは尊重されて来たのですよ」


「おかげで猫人族社会では未だにフェイクの人耳をつけるファッションが流行っていますしね♪」


(だいじょーぶか猫人族社会……)


「それにタケルー使徒の超絶偉大な業績とエリザベート上級神とのロマンスは、数万もの戯曲やドラマとなって、銀河全域で数億回も上演再生されていますから。

 そのおかげであのおっぱいビンタは、男女間の親愛表現として銀河全域に広まっていますし」


(それでいーのか銀河社会っ!) 



 銀河全域25京人から『おまいう!』とツッコまれそうなタケルであった……




「そうそうタケルや。

 そなたへのタケルーの記憶転移成功をもって、上級神たる妾の推薦、並びに妾とそなたの子である中級神5人の推薦により、そなたを初級天使に任命するぞ」


「えっ……

 い、いいんですか?

 俺まだなんの功績も無いのに」


「当然だ。

 そなたはなにしろあのタケルーの生まれ変わりであり、その記憶も所持しているのだからの」


「あ、ありがとうございます」


「はは、これでそなたの寿命も最低で5000年になったことだろう」


「えぇぇぇぇぇ―――っ!」


「それだけの時間があるのだからの。

 まずはゆっくりと養生して体や魔法のレベルを上げ、銀河知識も得た上で、今世でも銀河のために働いてくれるか否かを考えてみてくれ」


「は、はい……」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 俺の前には14歳ほどに見える3人の猫人少年たちがいた。

 まだ若いせいか、あちこちに少し猫の特徴が残っている。

 特に口元と鼻が猫っぽいんで少し可愛い。


「タケルーさま、こちらの3人がタケルーさまのトレーニング・インストラクターをさせて頂く天使見習(みにゃら)いたちですにゃ。

 お前たち自己紹介しなさいにゃ」


「体術・武器闘争担当のニャイチローですにゃ」


「魔法担当のニャジローですにゃ」


「銀河知識担当のニャサブローですにゃ」


「「「 よろしくお願いいたしますにゃ! 」」」


(…………)


「な、なぁニャルーンさん、この子たちなんか一部すっごく日本的な名前なんですけど……」


「タケルさまのお体には、お生まれになられてすぐ銀河最新鋭の翻訳プロトコルも組み込まれていますのにゃ」


(そうだった……)


「ですがそもそも固有名詞というものは翻訳不能なものが多いですにゃ。

 ですからタケルーさまの意識の中にある日本語に沿って、プロトコルが意訳しているのですにゃよ」


「な、なるほど」


「それに猫人族の名前は、銀河標準語でもヒト族の方にとっては発音やヒアリングが非常に困難なのですにゃ。

 たぶんみゃーみゃー言ってるだけのように聞こえるはずですので、こうして日本語に近いものを使わせて頂いているのですにゃ」


「そうだったんですね……」


「それではトレーニング世界にご案内いたしますにゃ。

 この世界は神界に属する特別なもにょでして、現在の3次元空間の1日が、トレーニング世界内では約60日に相当するようになっていますのにゃ。


「え、そ、それってどんな技術なの?」


「銀河宇宙の素粒子物理学理論によって発見された時間・次元相互作用を使って3.500次元空間への通路を形成して維持しておりますにゃ。

 さらにその空間の一部で時間の流れを速めているのですにゃよ」


「そ、そんな空間を創っているんだ。

 その空間って前からあったの?」


「はいですにゃ。

 その空間ではG型の太陽とその周囲のハビタブルゾーンに30個ほどの原始惑星も設置していますのにゃ。

 その惑星で行われているテラフォーミングのことを『天地創造』と言っているのですにゃね。

 まあ神界の本業のひとつですにゃ。

 テラフォーミングには通常10万年から50万年ほどかかりますが、こうした空間にゃらばその時間を3次元時間の60分の1にまで短縮出来ますにょで」


「そ、そうだったんだ……

 天地創造って『技術』だったんだね……」


「その通りですにゃね。

 天地創造が終了して自然環境も整備された世界は、元の3次元空間に転移させて使われてますにゃよ。

 5万年前までは主に新しい生命を誕生させるための空間として、5万年前のタケルーさまの業績以降は激甚災害世界の住民を避難させる場として使われておりますにゃ」


「そんな場所を俺のトレーニングに使わせてもらっていいのかな」


「その惑星のテラフォーミングは90%ほど終了しておりまして、現地時間あと2万年ほどで3次元世界に戻される予定となっていますのにゃ。

 それまでのご使用でしたらにゃんの問題もありませんですにゃよ。

 もちろんそにょ場所は惑星上ですので昼夜もありますし、中緯度地方ですから穏やかな四季もございますにゃ。

 もう既に居住施設その他も完成しておりますし」


「そうだったんだ……

 ところでその空間に入ってる時の食事はどうするのかな」


「大量の食材とともに料理人20名がサポート部隊として駐在させていただきますにゃ。

 また、生鮮食品に関しては、この神域から常時連続して搬入させていただきますにゃよ」


「そうなんだ。

 みんなには随分と迷惑をかけるね」


「とんでもございませんにゃ!

 タケルーさまのお食事をご用意させていただいたともなれば、料理人として銀河中に誇れる誉ですにゃよ。

 彼ら彼女らはこの栄誉を一生の誇りに致しますし、再就職の際には銀河中から求人が来ますにゃ」


「そ、そそそ、そうなんだ……」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ