表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/248

*** 65 些か過激なブレーンストーミング ***

 


 前最高神さまと次期最高神さまの服はすぐに決まった。

 というよりも、もちろん2人とも銀河の一般人が着るような服は持っていなかったために、すべて店員のお任せで決めたらしい。

 出来上がった姿は、どう見てもやや威厳のあるフツーのおじいちゃんだった。



 エリザベートは服をとっかえひっかえしてはタケルに見せに来て意見を聞いている。

 男性3人はやや疲れた顔をして店内の椅子に座っていた。

 どうやら女性の買い物が長く、それに付き合わされた男たちが疲れるのは、地球も神界も変わらないようである。



(タケルーさん、エリザさまに服とかプレゼントしたこと無かったんですか?)


『そ、そういやぁ無かったわ……』


(やっぱり!)


「タケルタケル! この服はどうかの!

 胸の部分もすぐに外せる出産後の母親用ドレスだそうだぞ!

 ほれ!」


「え、エリザさま!

 こんなところでおっぱいぽろりしないでくださいっ!」


 店内にいる客の内、猫人族や犬人族の客は気にもしていなかったが、ヒト族はエリザベートのおっぱいを見て硬直していた。



 前最高神さまと次期最高神さまはそれぞれ3セットお買い上げだったが、エリザベートは実に12セットも買っていた。

 タケルにプレゼントして貰うのが余程に嬉しかったらしい。

 ついでに店員ドローンに勧められて、セクシー下着も10セット買っていた。

 店員ドローンは、『この下着ならもうご主人さまは大喜びです♪』とか言っている。


(なんて商売上手なドローンなんだ……

 まあこいつら支払いは俺だって聞いてたから、いくら買わせても大丈夫だと思ってるんだろうけど……

 それにしても、猫人族の男性は女性にプレゼントとかしないんだな。

 フェロモンもあるから、セクシーな格好とかする必要も無いのか……)



 タケルたち一行は、店長ドローンと店員ドローンたちが深く頭を下げる中店を出た。

 次に向かったのは救済部門職員たちの子が通う幼稚園である。


 年少組の部屋では、猫人族、犬人族、ヒト族の子が入り乱れて遊んでいた。

 よく見れば狐人族、兎人族、狸人族、豚人族や熊猫人族の子までいる。


 その中で、猫人の女の子がひとりおもちゃで遊んでいた。

 と、犬人の子が突然そのおもちゃを取り上げて遊び始めたのである。

 女の子はびっくりして泣き始めた。


 そこに先生がやって来た。


「ケンタちゃん、お友達が遊んでいるおもちゃを取り上げてはいけませんよ。

 お友達とは仲良くあそびましょうね♪」


 男の子は先生の顔を見た。

 それから泣いている女の子を見て、最後におもちゃを見ている。


「ごめんね、これ返す」


 女の子が泣き止んだ。

 先生の顔を見てからまた男の子の顔を見ている。


「いっちょに遊びまちょ♪」


「うん♪」


 そうして2人は仲良くひとつのおもちゃで遊び始めたのだ。


 そう、この瞬間こそが、男の子のE階梯が1.0を超えて、さらに上昇していくきっかけとなった出来事だったのである。

 3人はそんな子供たちの姿を見て涙ぐんでいた。



 また、年長さんの部屋では、3人の女の子が1人の男の子を囲んでおもちゃの料理を出していた。

 男の子は既に魂の抜けたような顔をして、すべての料理を食べるフリを続けている。


「さあ、どのお料理が一番美味しかったの!」


「もちろんアタシのよね!」


「あたしのを選ばなかったらただじゃおかないから!」


「あの…… せめて本物のお菓子を作ってもらえないかな……」


「「「 なんですって! 」」」


「贅沢はいけません!」

「もう作ってあげないからね!」

「本物のお菓子はあんたが作りなさいよ!」


 タケルは心の中でそっと男の子に合掌した……



 幼稚園の視察を終えた一行は広大なフードコートに向かった。


 そこでは大勢の家族連れやカップルが楽しそうに会話しながら食事をしている。

 うっかりソフトクリームを床に落としてしまった幼い女の子が泣いていたが、ドローンウエイトレスがすぐに代わりを持って来てくれたので笑顔になっていた。

『どろーんしゃん、どーもあいがとー♡』とか言っている。

 この子は他者の親切に笑顔でお礼を言えるまでにE階梯が進化しているのだ。



「さて、軽く食事でも如何ですか」


「タケル神や、食事代まで出してもらってすまんの」


「いえいえ、このフードコートの食事は元々すべて無料ですので」


「なんと……」



 エリザベートはドローンウエイトレスに安定のちゅ〇るラーメンを注文し、前最高神さまにはもちろん同じものを、犬人族の次期最高神さまには、犬人族御用達の『カリカリ定食』を勧めている。

 タケルはやはり武者ラーメンを注文した。


 運ばれて来た料理を口にした前最高神さまと次期最高神さまの目がまん丸になっていたのが印象的である。



 食後はニャサブローが司会を務める諮問会議の場に向かった。

 4人は隠蔽の魔法をかけて傍聴席についている。



「さて、今日はご案内の通り紛争世界の救済についてのブレーンストーミングをお願いいたしますにゃ。

 条件としては『ヒト族世界、科学技術文明度レベル3.1、魔法(にゃ)し、社会文明成熟度レベル0、状況は惑星上の2大大国による世界大戦前夜で、戦争理由は資源強奪と両大国指導者の自己顕示欲』ですにゃ」


「うーむ、いつもながら紛争世界の救済は難しいですなぁ」


「なにしろ神界や銀河連盟の介入も、遥かに進んだ技術も未開文明に見せてはならないのですからねぇ」


「しかも兵士や民間人に死傷者を出さないでの紛争抑止ですかぁ」


「これはやはり、いつもの通り両国の指導者の脳に重層次元からナノマシンを送り込んで、国民や兵士の前で裸踊りをしてもらうしかないのでは」


((( !!! )))


 傍聴席にいる神々が驚いている。



「両国の間に時差があって、同時に裸踊りが開始出来ない場合はどうしましょうか」


「どちらかより好戦的な方から始めましょう」


「もちろん副指導者や軍の最上級将校たちもですな」


「同時にやはり重層次元から武器弾薬や軍用兵器の燃料を探知して、別次元に飛ばしてやりましょう」


「原始的な核兵器はどう対処しましょうか」


「全ての核兵器は起爆のためにTNTのような通常爆薬を必要としますからな。

 事前に爆薬を探知して、これを粘土とでもすり替えておきましょう」


「念のため、ウラニウム、プルトニウムは砂とすり替え、二重水素デューデリウム三重水素トリチウムは水とでもすり替えておきましょうか」



「ニャサブローさん、そうした武器弾薬燃料を近傍重層次元からすべてロックオンしておいて、別次元に転移させたりすり替えたりする装置の開発は進んでおりますかな」


「現在銀河宇宙に発注済ですが、技術的な問題はにゃいのであと3か月ほどで試作機が出来るそうですにゃ」


「それでは実験の準備も必要ですな。

 生命の存在しない世界の各地に大量の兵器や武器弾薬燃料を隠しておいて、それを一度に何%飛ばせるかの検証が必要でしょう」


「生物化学兵器などは如何でしょうか」


「化学兵器の探知については問題無いでしょうが、生物兵器は些か識別が困難なのでは」


「そのためにも、銀河の未認定世界に監視用ナノマシン網を早急に配備する必要がありますか」


「それで時間をかけて両国の生物兵器にも予めロックオンをかけておくのですな」


「ロックオンの効力はどのぐらいの期間有効なのでしょうか」


「設定する時間によって魔石の消費量が決まります。

 逆に、魔石さえあれば事実上何世紀でもロックオンは続けられますにゃ」


「それは心強い。

 兵器が無ければ戦争のしようがないでしょう」


「両国政治指導者が戦意高揚演説を始めたら、兵器の別次元転移とターゲット全員の裸踊り開始ですな」


「同時に演説の場に特大の雷でも落としますか」


「それも結構ですが、その惑星と太陽の間に転移結界装置を転移させて、5日ばかり夜のままにさせたら如何でしょう」


「それは面白い!

 どう見ても戦争にお怒りになられた神からの罰に見えましょう!」


「ついでに裸踊りを続ける指導者たちに、延々と『神さまごめんなさい!』と叫ばせましょうか」


「確かにそれは面白そうですけどね、少し心配なのは太陽が隠れたりしたら、民衆が暴動を起こしたりしないかということなんです」


「未開世界では大いに有り得ますなぁ。

 死者も出そうです」


「それでは神界の作戦で人死にが出てしまうことになりますぞ」


「残念ですが太陽消滅作戦はボツですかね」


「代わりに裸踊りを続ける指導者たちを宙に浮かせて、上空にゆっくりと昇って行かせるのは如何でしょう」


「なるほど!

 それで誰にも見えなくなってから時間停止倉庫にでも転移させればいいですな」


「それなら不満の対象がいなくなるだけですので暴動は起きないでしょうね」


「後継者も好戦的であれば同様に裸踊りと昇天ですか」


「戦争を起こそうとした途端に、首謀者たちが発狂して何百人も天に召されたとあれば、誰も戦争を起こそうとは思わなくなるでしょうなぁ」


「それでは今日はこの解決策を答申と致しましょうか」


「「「 賛成! 」」」



 些か過激なブレーンストーミングに傍聴席の3人は少し蒼ざめていたようだ……





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ