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*** 5 やらかしていた前世の俺 ***

 


「それにしても、そんなことしてて御夫君は怒らなかったんですか?」


「ははは、妾たちは猫人系種族だからの。

 一夫一婦制ではないのだ。

 まあ中には番を作って一緒に住み続ける者たちもおらんではないが」


「えっ……」


「猫人族の女性は年に2回ほど発情期を迎えて性フェロモンを出す。

 その際には周囲の男性もフェロモンによって性衝動を誘発されて発情し、女性はその中でも優秀な男性と交尾を行って子孫を残すのだ。

 だから男だけの場では誰も発情しないがな。

 年がら年中発情しているヒト族とは種族特性が違うのだよ。


 だから妾には『御夫君』などという者はおらんのだ。

 要は猫人族ではほとんどの母親がシングルマザーだということだ。

 ただ、社会が成熟すると、猫人女性の多くはフェロモン抑制剤を摂取して無暗な人口増加を抑えておるがの」


「そうだったんですか……」


「そうそう、たまたま妾がフェロモン抑制剤を飲み忘れて発情していたときに、そなたが妾の神域に来たこともあったのう。

 故に妾の生んだ子のうち何人かはそなたの子でもあるのだ♡

 猫人族とヒト族の組み合わせであっても子孫は作れるからの♡

 そうして生まれた子の種族は母親の種族と同じになるが」


「げげげげげ―――っ!」


(な、なにやってんだよ前世の俺ぇぇぇ―――っ!)


「まあ猫人族の女も優れた男の子を孕みたいと思うのは本能だからの、当然のことだ♡

 つまりそなたは妾の銀河最優秀の使徒であり、大切な愛人でもあったのだよ♡

 そなたのことならちんちんの裏側まで知っておったぞ♪」


(わ、話題を変えろ俺ぇぇぇ―――っ!)



「と、ととと、ところで女神さま、5万年前のわたしはなにをやらかしたんでしょうか……」


「ふふふ、そうか知りたいか。

 5万年前、そなたが管理を委託されていたある恒星系の母惑星が、不幸なことに全惑星規模の大火山噴火に見舞われたのだ。

 数千万年もの間平和が続く素晴らしい世界だったのだがな。

 原因は深宇宙から飛来した巨大小惑星の一部がその惑星の引力圏に捕らえられたことだ。

 本来は母惑星から離れた軌道を通過する予定だったのだが、それでも小惑星の引力による母惑星の軌道偏移を防ごうとしてしまったのだよ……


 それで、当時でもかなり発展していた技術力によりその小惑星の破壊が試みられたのだが、3つに分裂した小惑星のうち1つが巨大外惑星の引力で軌道を変えて減速し、それが母惑星の周囲を離心率の大きな軌道で廻り始めたのだ。

 そのためにダイナモ効果で母惑星のマントル層が高温活性化し、海底火山1250、大陸上の火山650が一斉に大噴火を始めたのだ」


「うわぁ」


「そのまま放置しておけば、その惑星上の生命は確実に滅んでいたことだろう。

 例え宇宙空間に逃れて火山噴火を耐え忍んだとしても、成層圏まで噴き上がりつつあった火山灰により、その惑星は氷河期を迎えると予想された。

 最悪の場合には全球凍結も有り得ると。

 それでそなたは妾経由で、神界に対し廃棄物投棄専用重層次元に溶岩と火山灰を全て転移させる許可を申請し、神界土木部の派遣も要請したのだ」


「…………」


(重層次元って、たぶん3.5次元とかの異次元のことなんだろうな……)


「ところがだ。

 当時神界の上級神どもは、ほとんどが原理派でな」


「?」


「ああ、原理派とは、『神は世界を創生し、そこに発生した生命に知性の萌芽を与えるのみ』という原理主義を標榜する一派の事だ。

 それに対し妾の率いる救済派は、『自然災害などによって滅亡の危機を迎えた文明は神界が救済すべし』とする一派だ」


「なるほど」


「それでの、当時の上級神会議は最高神さまに知らせることも無く、反対多数でそなたの申請を棄却したのだよ。

 最高神さまはヒューマノイドに対して同情的なお方だからの」


「そうだったんですか……」



 上級神が微笑んだ。


「その裁定にそなたは激怒してな。

 そのような神界は不要だと怒鳴りながら、その惑星の表面のみならず、地下深くで荒れ狂うマグマを神界政務庁と上級神の神殿が並ぶ大地に自らの力のみで転移させたのだ」


「げげっ!」


「そのマグマの総量は推定で20兆トンに達する」


「げげげげ……」


「もちろん、そのようなことが出来るのは、当時銀河最強と謳われた戦闘力と魔法力を持つそなたしかおるまいがな。

 しかもだ、そなたはその惑星の大気に拡散しつつあった火山灰4兆トンをも神界に転移させてその惑星を救うたのだ。

 ついでながら、それだけの量のマグマを転移させると、マントル層と地殻の間に空隙が生じ、その後巨大地震が頻発してしまう。

 そこでそなたはその惑星を長円軌道で廻る小惑星を魔法で粉砕し、そのうちのほんの一部である24兆トンを地殻とマントル層の隙間に転移させ、残りの120京トンを成層圏から神界中央部の上級神区画に叩き込んだのだよ。

 それこそ伝説の大魔法『メテオ』のように」


「うげげげげ……」


「さらにだ。

 その恒星系の近傍には、別の自然災害に悩む恒星系もあった。

 その母惑星では地軸が傾き始めたために北極大陸上の極冠が溶け始め、海面の急上昇が始まっておったのだ。

 その惑星は農業中心の世界であったために、自力で海水を重層次元に投棄する術を持たなかった。

 そのままでは10年ほどで極冠が全て溶け、海面が120メートルも上昇して文明は壊滅的な打撃を被ったことだろう。

 そこでそなたはその極冠の氷全て40兆トンを重ねて神界に叩き込んだのだ」


「どげげげげげ……」


「神界はな、水蒸気爆発と全てを焼き尽くす溶岩と舞い飛ぶ火山灰で地獄のような光景になりおったわ。

 だが安心せい、神は物理的には死なんのだ。

 まあアホほど長い寿命が尽きればあっさり死ぬがな。

 もっともすべての上級神神殿とインフラが破壊され、逃げ遅れた上級神どもは衣類も頭髪も毛根も全て焼け落ちてしまったがの」


「ずげげげげげ……」


「妾と救済派の神々や最高神さまは、そなたからの緊急連絡でかろうじて逃げ延び、その後数世紀かけて新たな神界世界も建設された。

 だが、原理派の神々の多くはツルっパゲにされて茫然としておった。

 犬系や猫系の種族の神々は、そのしっぽの毛まで失って、まるでミミズのような尾を持つキモいことこの上ない姿になっておったぞ、はははは」


「うーげげげげげ……」


「それで激怒された最高神さまの命で、原理派の上級神は全員が引退させられたのだよ。

 おかげで現在の上級神会議は救済派が多数派となっておる」


「は、はぁ……」


「そしてそなたはの、あれほどまでの大魔法を単独で連発して使ったことにより衰弱死の危機に晒されておったのだ。

 当時身長は2メートル5センチ、体重130キロ、体脂肪率4%とムキムキだったそなたも、2つの世界を救った後は体ガリガリに痩せておった……

 妾のゴッドキュアも時が経ちすぎておって効果は無かったしな。

 そして間もなく、号泣する妾の膝の上で死んでしまったのだ……

 だがその死に顔は実に満足そうに微笑んでいたぞ」


「…………」


「神界には死刑制度というものは無いのだがの。

 だが最高神さまもそなたをそのまま無罪放免とするわけにはいかなかったのだ。

 そこで5万年間の輪廻転生停止という刑罰措置が取られたのだよ」


「そうだったんですね……」


「どうだ、後悔しておるか」


「いいえまったく。

 同じ局面に立たされたらまた同じことをすると思います」


「ふはははははは!

 よう言うたっ!

 それでこそ元銀河最強最優秀の使徒である!」


「はぁ……」


「そなたの行動により神界上級神会議の大半が救済派となった。

 おかげで、救われた2つの世界のみならず、その後の5万年間で銀河世界の多くが飢餓や自然災害から救われたのだ。

 最初に救われた2つの世界を中心に、そなたの存在は既に神格化され、銀河数万世界に数百万ものタケルー神殿も造られておる」


「げげっ!」


「よって、そなたが真摯に依頼すれば銀河数十兆の民が助力してくれるだろうの」


「げげげっ!」


「まあ原理派の神々にとってそなたは破滅の大悪魔だが、銀河の民にとっては大いなる救済の天使だということだ」


「はぁ……」




 それで俺はその後両親と一緒に地球の家に帰ったんだけどな、家の大講堂間に親戚一同がぎっしりと5000人ぐらい集まってたんだわ。

 まあ全員が銀河人だ。

 それで俺たち親子が入って行ったんだけど、俺まだゴッドキュア3連発の後遺症でビカビカに光ってるだろ。

 おかげで全員が号泣しながら俺に平伏しちゃったんだわ。

「うはははぁぁぁ―――っ!」とか言いながら……


 俺たちの外見については、またいつでも神域に行けば『変化』の魔法をかけてもらえるそうなんで安心したけど。





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