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*** 48 怖ぇ~ ***

 


 地球に戻ったタケルは武者ラーメンの源治と和菓子の店武者の寿三郎にお願いをしに行った。


「というわけで、あの『ちゅ〇るラーメン』と『おいなりさん』は、神界のエリザベート・リリアローラ上級神さまとリリアローラ家の家宰であるセバスチアーノ初級神さまがたいへんに喜ばれたのですよ。

 それで誠に申し訳ないのですが、それぞれ500人前ずつを買わせていただけませんでしょうか。

 2週間後にまた参りますので時間停止アイテムボックスに入れておいてください」



 源治と寿三郎は号泣した。

 自分たちが作り上げて来たものを、なんと神界の神さま方が喜んで下さったというのである。

 もちろん彼らムシャラフ人の本来の任務は、ここ地球でタケルさまが暮らしやすい環境を維持することである。

 その上でタケルさまや神さま方のお役にまで立てることがあろうとは……


 源治はムシャラフ人の弟子たちに事情を説明し、毎晩大量のちゅ〇るラーメンを作り始めた。

 また、寿三郎も武者神社の神主に相談し、同じくムシャラフ出身の巫女や禰宜を動員しておいなりさん作りに励んだのである。

 出来上がったおいなりさんを前に、神主は祝詞まで上げていた。



 そして2週間後、報告のためにエリザベートの神殿を訪れたタケルは仰天した。

 大ホールには200人を超える猫人幼児たちと100人近い狐人幼児たちが入り乱れて遊んでいたからである。

 どうやらタケルーとの子孫以外の曽孫たちも加わっているらしい。

 その中には猫人と狐人の大人たちもいて、子供たちの面倒を見ていた。


「タケルや、よく来てくれた。

 この猫人の子らはもちろん妾の曽孫ひまごたちだ。

 そして狐人の子らは、セバスチアーノの曾孫と玄孫やしゃご来孫らいそんたちだ。

 中には昆孫こんそんまでいるそうだがな。

 子らに『ちゅ〇るラーメン』と『おいなりさん』を食べさせてやりたいと言ったところ、こんなにたくさん集まってしもうたわ」


 エリザベートはご機嫌だった。

 しっぽもピンと立って揺れている。

 また、セバスチアーノを初め、世話係の猫人と狐人の大人たちはタケルに深く頭を下げていた。



 タケルがテーブルに『ちゅ〇るラーメン』と『おいなりさん』を出し始めると、世話役たちがそれを低いテーブルに持って行く。

 もちろん猫舌な猫人の子のためは、『ちゅ〇るラーメン』を小さな器に取りわけて風魔法を当てて冷ましてやっていた。

 その匂いが広がると、今まで入り乱れて遊んでいた子猫人たちが動きを止めて寄って来る。

 また、別のテーブルでおいなりさんを切り分けて小皿に乗せ始めると、子狐人たちが集まっていた。


 そうして、300本以上の小さなしっぽが立ち上がって盛大に膨らむ中、子供たちは夢中でむしゃむしゃぺろぺろと食べて行ったのである。


 エリザベート上級神とセバスチアーノ初級神は、そんな様子を零れんばかりの笑顔で見つめていた……



「えーと、世話役のみなさん、そのアイテムボックスにはまだまだたくさんの『ちゅ〇るラーメン』と『おいなりさん』が入っています。

 どうか後で皆さんもお召し上がりください」


 大歓声が沸き起こった。



 エリザベートの神殿から帰る際、タケルはエリザベート上級神とセバスチアーノ初級神の名前の入った源治宛てと寿三郎宛ての感謝状を受け取った。

 地球に寄って2人にその感謝状を渡すと、源治も寿三郎も感激のあまり声を上げて号泣したのである。

 2人はこの感謝状を末代までの家宝とすると言っていた……



 そして或る日、タケルは源治と寿三郎を伴ってミランダ恒星系に出向いた。

 同じくムシャラフ人である武者製麺社長と武者とうふ店の店長も伴っている。


 彼らはミランダ技術省の協力で10体ほどの上級調理ドローンを集め、『ちゅ〇るラーメン』と『おいなりさん』の製作指導を行ったのであった。


 さすが銀河宇宙の上級調理ドローンたちは、口に入れた物の成分を瞬時に分析出来る。

 そうして、10体のドローンが真剣な眼差しで見つめる中、地球在住のムシャラフ人たちは彼らに実技指導を行ったのであった。

 驚くべきことに、ドローンたちはちゅ〇るの成分まで明らかにして、その複製にも成功したのである。

 このドローンたちが懸命に作った『ちゅ〇るラーメン』と『おいなりさん』はムシャラフ人の親方たちの舌をも満足させた。

 これで銀河宇宙での大量生産が可能になるだろう。


 こうした話がムシャラフに伝わると、ムシャラフ恒星系大統領府は武者源治と武者寿三郎に恒星系功労金星勲章を授与したのである。

 受勲理由は、

『あのタケルーさまとタケルさまの大好物を開発したこと』

『神界の神々をも喜ばせ、感謝状まで頂戴したこと』

 であった。


 これこそが恒星系ムシャラフとミランダに1万2000店舗の『武者ラーメン』チェーン店と5000店舗の『和菓子の店武者』チェーン店が出来るきっかけとなった出来事であった。


 まあ当然であろう。

 両恒星系の住民にとって『あのタケルさまの大好物』ならば絶対に食さねばならない料理なのである。

 その料理が美味であれば重度リピーターになるのも当たり前なのだ。

 この超大成功をもって、源治と寿三郎はムシャラフ恒星系有数の資産家となった。


 両恒星系の大統領閣下方も、武者ラーメン大統領府前支店の行列に、毎日のように並ばれているそうだ……


 もちろんこれらチェーン店では、上級調理ドローン親方の厳しい指導に耐えた弟子の中級調理ドローンが監督し、初級調理ドローンたちが調理を行っている。



 ただひとつ問題があった。

 源治や寿三郎に代金を払うのは当然として、ちゅ〇るを製造販売する地球のい〇ば食品株式会社にはどのようにして特許使用料を払えばいいというのだろうか。

 銀河宇宙の神界認定世界は未認定世界への接触を禁じられている上に、このテの権利には非常に煩いのである。

 神界認定世界が未認定世界の開発品を使用するなどということは、前代未聞の出来事なのであった。


 しばらく悩んだ挙句、タケルはこの問題を父親に丸投げすることにした。


 その後まもなく、武者物産の社長を初めとする首脳陣が静岡県静岡市に本社を置くい〇ば食品株式会社を訪れて、驚愕の提案をしたのである。

(地球の武者一族は、日本国の戸籍を有しているために未認定世界住民と見做されるようだ)


 武者物産側の提案は、

『現在月間10万食のちゅ〇る購入を月間100万食に拡大させて欲しいこと』

『さらにその購入契約期間を今後50年間とし、前金として総代金の50%を支払うこと』

『もし新工場建設費などが負担であれば、武者物産がい〇ば食品株式会社に1000億円の増資を行うこと。(因みにい〇ば食品株式会社の資本金は1億3000万円である)』

『その増資に於いては株主総会での議決権を放棄することのみならず、株主提案も役員派遣も行わないこと』

 であった。


 武者物産と言えば、国内5指には入らずとも余裕で10指に入る大商社であり、現在も毎月10万食もの購入を行ってくれている大得意先である。

 驚愕から覚めたい〇ば食品株式会社首脳陣は、真剣な検討の末この提案を受け入れたのであった。


 また、恐ろしいことに、武者物産側は毎月100万食もの超長期契約を結ぶ際にも値引き交渉は一切行わなかった。

 それどころか卸価格ではなく小売価格で構わないというのである。

 ただし、『これだけのちゅ〇るを消費する猫ちゃんはどこにいるのですか』という問いには答えて貰えなかったようだ。

 いくらなんでも、武者物産首脳陣は『神界と銀河系全域です』とは言えなかったのであろう……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 3.5次元の時間加速空間に神界土木部の集団が100人ほどもやってきた。


「お初にお目にかかる。

 俺は神界土木部門長のタオルーク・ゲオルギー上級神だ」


(うーん、さすがにものすごい貫禄だな。

 それに髪の毛どころか眉毛や睫毛まで無いぞぉ。

 あ、ま、まさか5万年前のタケルーさんの溶岩で!)


「神界救済部門実行部隊隊長のタケル・ムシャラフ初級神です。

 遠い所を来ていただいて感謝しています。

 よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく頼む。

 ところで、貴殿の中にいるタケルー殿と念話で会話が出来るというのは本当なのか?」


『ようタオルーク・ゲオルギー上級神殿、本当だぞ』


 タオルーク部門長が突然その場で土下座した。

 その後ろにいた土木部門の若い衆たちも音を立てて平伏している。


「申し訳ねぇ……」


『ん? どうしたんだ?

 俺はあんたらに謝られる筋合いはねぇぞ?』


「いや、俺が根性無しだったばっかりにあんたを死なせちまった。

 その上5万年も転生出来なくなっちまっただろ。

 あれは俺の責任でもある」


『どういうことだ?』


「5万年前にあんたがムシャラフ恒星系を救おうとしたときに、あんたはまず神界に土木部門の出動を要請した。

 溶岩の重層次元への転移なんてぇ作業は俺っちの本業だからな。

 だが神界上級神会議がその要請を棄却したことで、俺は出動を躊躇っちまったんだよ。

 俺があのバカ神どもをブッチして出動してりゃあ、あんたは死なずに済んだはずだ」


『あー、そういやあそうだったか。

 確かに俺ぁあのとき土木部門の出動を要請してたっけか。

 5万年ぶりに今思い出したぜ』


「本当に済まなかった」


『いやタオルーク・ゲオルギー上級神さんよ、それから配下の若けぇ衆たちよ。

 頼むから顔を上げてくんねぇ。

 でもってそこらの椅子や床にでも座ってくれねぇか。

 俺ぁあんたらに含むところはこれっぽっちもねぇよ』


「「「 ………… 」」」


『俺が無茶やらかしたおかげで最高神さまが激怒し、神界上級神会議から『原理派』を排除出来たんだろ。

 もしもお前ぇさん方が上級神会議の決定をブッチして出動してたら、あのバカ神どもを排除することは出来なかっただろうよ。

 おかげで今神界救済部門を立ち上げることが出来たんだぜ。

 まあ最高の結果オーライじゃねぇか。

 さあさあ、頭を上げて普通に座ってくれや』


「そんじゃあお言葉に甘えて。

 おう、お前ぇらもフツーに座れや」


「「「 へい親っさん! 」」」


(な、なんかすげぇな……

 任侠映画を見てるみたいだ……)



 土木部門の面々がその場に大胡坐をかいたのを見て、タケルもソファから降りて床に胡坐をかいた。


『俺にはお前ぇさんたちの謝罪を受ける筋合いはねぇ。

 だがその気持ちだけは確かに受け取った。

 その代わりと言っちゃあなんなんだが、ひとつ頼みを聞いちゃあくんねぇか』


「ぜひ聞かせてくれ」


『このタケルはよ、莫迦みてぇな努力をした挙句に、とうとう救済部門を立ち上げちまったんだ。

 しかも小惑星ぶっ潰して資源を得ようだの、救済に必要な機器の一部は自作しようだの、銀河の認定世界全てを繋ぐ恒星間転移網まで用意して資材を集めようだのまで計画しやがったんだよ。

 そのためにアホほどデケェ神域と小惑星と時間加速空間が必要なんだ。

 だから申し訳ねぇが、けてやってくれねぇかな』


「わかった。

 それは俺っちの本業でもある。

 おう野郎共!」


「「「 へいっ! 」」」


「さっそく神域建設作業にへぇれ!

 もし手ぇなんぞ抜きやがったら、俺が銀河の果てまでぶっ飛ばしてやるからそう思えっ!」


「「「 へいっ!!! 」」」


(怖ぇ~)





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