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*** 4 発光 ***

 


 その場に背の高い猫人が現れた。

 やはりトーガ風のゆったりした衣装をまとっているが、背中には3対6枚の巨大な翼も見える。

 頭には大きな猫耳もあり、後ろには長いしっぽも揺れていたが、それ以外はほとんどヒト族と同じに見えた。

 もちろんトンデモな美人さんだ。


「ふう、下らん会議のせいですっかり遅くなってしもうたわ……

 あっ…… そ、そなたがタケルーの生まれ変わりだの!」


 一瞬硬直していた女神さまが、涙をぽろぽろ零しながらゆっくりと俺に近づいて来た。

 その女性神は俺の目の前に来ると、ガバっとトーガをはだけ、雄大なおっぱいをぽろんさせる。

 女神はそのまま俺の背中に両手を廻して俺の顔をおっぱいに押し付けた。


「あ、会いたかったぞタケルーっ! ご、5万年ぶりにようやく……」


 むがががが……


「こうしておっぱいプレスしてやるのも久しぶりだのぅ……

 もちろんお前が大好きだったおっぱいビンタもしてやるぞ♡」


 女神さまはそのまま体幹を左右に振り回し始めた。

 俺の顔面はおっぱいに強烈な高速往復ビンタを喰らっている。


 あががががが……


 ミシミシグキグキバキボキバキボキ……


 脛骨が粉砕され始め、俺の体はダランと垂れ下がった。


(ああ…… 俺はおっぱいビンタで殴殺される最初の人類になるんだな……)


 急速に失われる意識の中で俺が最後に考えたのはそんなことだった。

 どうやら俺の両親はあまりのことにその場でまだ硬直しているだけのようだ。



「ふう、ジョセさまもようやく落ち着かれましたにゃぁ。

 ああっ!

 え、エリザベートさまぁっ!

 にゃ、にゃにをなさっておられるんですかにゃぁぁぁぁぁっ!」


「なにって……

 5万年ぶりに会えたタケルーに、タケルーが大好きだったおっぱいビンタを……」


「タケルはまだ前世の体も意識もレベル取り戻していませんにゃっ!

 ま、まだレベル6のタケルになんていうことを!

 ああああああっ!

 タケルの首の骨がぁぁぁぁぁ―――っ!

 き、キュア、ハイキュア、グランドキュア!

 エリザベートさまも早くおっぱいを離してゴッドキュアをっ!

 タケルが死にかけていますにゃぁぁぁっ!」


「わ、わかったわ! ゴッドキュア! ゴッドキュア! ゴッドキュア!」




 間もなく意識を取り戻した俺の体はビカビカに光っていた。


(なにコレ……)


「ごめんなさいね……

 つい焦ってゴッドキュアを3回もかけちゃったもんだから……」


「だいじょうぶですにゃ、10日もすれば光は収まるですにゃ」


(10日も光ったままなの俺……

 今は夏休み中だからいいようなものの)



 余談だけどさ、俺、この時のゴッドキュアの後遺症で、緊張したり気合を入れたりすると体が光るようになっちまったんだよ……

 それもかなりの光量で……

 おかげでMMAの地区大会とかに金輪際出られなくなっちまったんだ……

 ま、まあ暗いところなんかを歩くときには両手が使えて便利なんだけどな。




 俺たちはソファセットに落ち着いた。

 俺の正面には上級神さまとやらが座っている。


「済まなんだなタケルーや。

 そういえば、そなたはまだ記憶も体力もレベルも取り戻しておらなんだか」


「は、はぁ……」


「そなたはな、5万年前まで妾の使徒天使だったのだ。

 それはそれは有能な天使で、将来は神に至ると嘱望されておったのだよ。

 だがあるときそなたは盛大にやらかしおってな。

 天使のままで寿命を終えてしまっただけでなく、神界から輪廻転生停止5万年の刑を受けてその魂は眠っておったのだが、15年前にようやくその刑期が終わって転生出来ることになったのだ」


「そ、そうだったんですか……」


「この後すぐにもそなたの記憶や体力その他の回復措置が取られるだろう。

 そうすれば5万年前のこともすべて思い出すであろうな」


「ということは、わたしはその使徒の生まれ変わりということなのですね」


「そうだ。

 因みに当時の名はタケルーだ。

 故にそなたの両親もタケルという名をつけたのだろう」


 父さんと母さんが笑顔で頷いている。


「さきほどのおっぱいビンタはな、そなたが見事任務を果たしたときに妾がどんな褒美が欲しいかと聞くと、そなたがいつも希望したご褒美だったのだよ」


(前世の俺、なにしてんの……)


「当時のそなたは総合レベル1250の超強者であったからの、レベル300の妾のビンタを喰らってもなんともなかったのだ。

 だが転生したばかりの今は、回復措置も取られていなかったために、まだレベルが6しか無かったのだな。

 済まないことをした」


「いえ、ご存じなかったのですから。

 ところでこうやって意思疎通が出来るということは、女神さまたちは日本語を習得されていらっしゃるのですか?」


「いや、妾やここにいるジョセフィーヌの補佐官たちは、皆銀河標準語を話しておる。

 そなたの脳には生まれて間もなく言語野には翻訳プロトコル、記憶野には記憶増強プロトコルが組み込まれていたのだよ」


(だから俺、あんなに英語の成績が良くって記憶能力が高かったのか……)


「それでわたしの両親は地球人ではないのですか?」


「そうだ。

 そなたが5万年の刑期を終えて輪廻転生する際に、妾が懇意にしていたムシャラフ恒星系とミランダ恒星系の王族に依頼して、そなたの父母になる王子と王女を選抜してもらったのだ。

 まあ2人は元々生まれて間もないころから、そなたの親になるために婚約していたのだがの。

 そしてそなたの母が無事受精した際に、タケルーの魂をその受精卵に誘導したのだよ」


「あの、なぜ私が生まれた場所が地球だったのでしょうか」


「それはムシャラフ恒星系もミランダ恒星系も銀河有数の著名先進世界だったからだ。

 そのように有名な世界であれば、原理派神の残党どもが嗅ぎつけてそなたの生育を妨害したかもしれんからの」


(???)


「はは、妾は当時数少ない救済派の上級神での、長きに渡って原理派の上級神どもとは対立関係にあったのだよ。

 それで妾の娘であるジョセフィーヌが管理を任されているソル星系という名も無い後進恒星系に王子と王女を転移させ、そなたを生んでもらったのだ。

 そしてそなたが生まれてからも、十分に成長するまで生みの親であるロベステール王子とマリアデール王女に養育を依頼していたわけだ」


「あの……

 それじゃあ今の武者家の周囲の土地も……」


「はは、さすがの洞察力だ。

 そうだ、そなたが死して5万年の輪廻転生停止期間は正確に把握されていたからの。

 律令時代の日本に墾田永年私財法が成立してしばらくした後に、恒星系ムシャラフとミランダの王族やその家臣たちが今ある武者の地に移住入植したのだよ」


「えっ……

 そ、そんな、1000年以上も前から自分の人生を犠牲にして……」


「まあ気が急いていたのだろうな。

 なにしろ4万9000年も経って、超英雄の復活まであとたったの1000年少々になったのだからの。

 それにやはり彼らはタケルーの生まれ代わりが生まれ育つ地として、後進恒星系が選ばれるのを不安にも思っていたのだろう。

 故にソル恒星系だけでなく、実際にはあと9つの恒星系にも調査隊を派遣していたのだよ。

 その中で最終的に候補地として選ばれたのが地球だったということだ」


「そ、そんなにたくさんの恒星系に……」


「その調査隊メンバーは年に数回は恒星間転移装置で母惑星に帰って休暇を取れたからの。

 それに銀河の大英雄の生まれ変わりを健やかに育てる地を選択するという名誉ある任務な上に、自然に囲まれた地でのんびりと農業を営むのだ。

『隠蔽』魔法のかかった銀河技術の農業機械も使用されていたしの。

 スローライフを望む希望者が殺到していたそうだぞ」


「はぁ……」


(ということは、武者一族って元々は代々全員が他の惑星の軍人やお役人だったんだ……

 そりゃあ争いも起きないし統率が取れてたわけだよな。

 他国に侵攻する理由なんか全く無いし……)



「そなたが無事生まれた際には、両恒星系では1か月間の祝祭が続いていたな。

 もちろんその後の成長の姿も、妾も両恒星系210億の民もいつも見守っておったぞ」


「はは……」


「そしてそなたももう15歳になり、前世で妾の使徒となった年齢になった。

 もしそなたさえよければ、また妾や妾の娘のために働いてもらえないだろうか」


「あの、どんな仕事をすることになるのでしょうか……」


「娘のジョセフィーヌ初級神は現在100ほどの未開恒星系の管理を任されておる。

 管理神は直接その管理下の世界に降り立つことは許されていないのだが、その配下に使徒を雇って権能を移譲すれば、その使徒は世界に直接降りて影響を及ぼすことも出来る。

 そしてその任務は、紛争や自然災害、飢餓などによる惑星住民の不慮の死を抑制することになるだろう」


(けっこうやりがいのありそうな仕事だな……)


「だがまあそなたにもリハビリは必要だろう。

 前世の記憶と能力を取り戻してから改めてじっくりと検討して返事をくれ。

 そしてもし任務を受けてくれるのならば……

 まだジョセの胸ではおっぱいビンタは無理だろうからの。

 見事任務を果たした際には、神界の妾の神殿に来てくれればいくらでもおっぱいビンタはしてやるぞ?」


「そ、そそそ、それはそのとき考えさせてくださいっ!」


「はは、そうかそうか」





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