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*** 37 帝王 ***

 


 目を覚ましたら、エリザさまが俺の顔をペロペロ舐めていた。

 いつの間にか俺もエリザさまも服を着ている。


「おや目を覚ましたかタケルや。

 それにしても妊娠中でも番の絆を確かめ合うというのはなかなかよいものだの。

 我が子たちは突然のパパの来訪にびっくりしたかもしれんが」


「……」


「ふふ、それにしても、強面のそなたも寝ているときにはまだまだ少年の面影を残しているのだな。

 思わず毛づくろいで愛を表してしまったぞ♡」


(やっぱり舐めるのって毛づくろいで愛情表現だったんだ……)



(セバスや、済まぬが来て貰えるかの)


(はい)



 すぐに執事服のようなものを着た老年の紳士が現れた。

 髪の毛はかなり白くはなっているが、背筋も伸びていてその佇まいは端然としている。


「ただいま参りましたエリザベートさま」


「タケルよ、この男はセバスティアーノ初級神だ。

 我がリリアローラ一族の家宰を任せておる。

 セバスよ、もう知ってはいるだろうが、こ奴がタケルーの生まれ変わりであるタケルだ」


 セバスがタケルの方を向いて頭を下げた。


「リリアローラご一族さまの家宰を拝命しておりますセバスティアーノと申します。

 どうかよろしくお願い申し上げますタケルさま」


「こちらこそよろしくお願いいたします、セバスティアーノ初級神殿」


「タケルさま、どうかセバスとお呼びくださいませ」


「は、はい」


『ようセバス、久しぶりだな。

 ってゆーか俺の魂は5万年も寝てたからつい数年ぶりなんだが』


 セバスさんが微笑んだ。


「これはこれはタケルーさま、またお会いすることが出来て恐悦至極にございます」


 それでセバスさんが改めて俺を見たんだけどな。

 一瞬だけやたらに大きく目が見開かれてすぐに元に戻ったんだよ。


 ん?

 なんかセバスさんの耳が少し長いぞ?

 しっぽもすっごく太くって先っぽが白くなってるし……


 あっ、このひと狐人族だ!

 うっわー、初めて見たわー。



「のうセバスや。

 このタケルが任務のために秘書AIを欲しておるのだ。

 どこかで最高の秘書AIを見繕ってやってもらえんか」


「畏まりました。

 それでは引退されたミルニャス上級神さまの上級秘書AIが休眠中でございますので、そのAIを再起動してタケルさまにお仕えさせましょう」


「おお、ミルニャスの秘書AIといえば妾の秘書であるマリリーヌの妹だったの。

 それならば実力は充分だろう。

 そういえばミルニャスは自分の秘書に『魔法使用』の初級権限を与えていたろう」


「はい」


「その権限を最上級にしておいてくれ」


「はいエリザベートさま」


「ありがとうございますエリザベートさま、セバスさん」


「のうタケルや、そろそろエリザと呼んでもらえんかの♡」


「ど、努力させていただきますっ!」



 エリザベートさまが微笑んだ。


「そなたの救済計画だがの、妾は全面的に支持して後ろ盾になろうぞ」


「い、いいんですか?」


「構わん、たとえそなたが大失敗しようと、またやらかそうと、そなたのちんちんは妾が拭いてやる。

 そなたはそなたが思うままに突っ走るがいい♡」


「あ、ありがとうございます……」


(これ……

 日本語だとたぶん『骨は拾ってやる』とか『ケツは拭いてやる』とかいう意味のイディオムなんだろうなー。

 そうか猫人族はこういう言い方をするのか……

 あれ?

 相手が女性だったらなんて言うんだ?

 ま、まさか……)




 タケルが3.5次元の鍛錬空間に帰って行くと、エリザベートはセバス家令に目を向けた。


「のうセバスよ、魂見のそなたから見てあのタケルの魂はどうだったかの」


「驚きました……

 1人の体の中にあれほどまでに大きく輝く魂が2つも入っているとは……」


「やはりタケルーの魂と融合せずに2つ並んで存在していたか……」


「はい、1つは紛れもなくあのタケルーさまの魂でございました。

 大きく、厳しく、激しく輝いておられます。

 ですがもう一つのタケルさまの魂は、それに加えて暖かい光がございました。

 あのお方様の本質は優しさだったのでございますね。

 あれほどの魂を持つお方さまが、果てしない努力をし、仲間に恵まれた上に銀河連盟銀行の総資産に匹敵するご資金まで手にしたとは……

 今後のご活躍が楽しみでなりませぬ……」


「そなた…… 泣いておるのかえ……」


「はは、情けない姿を晒しまして申し訳もございません。

 ですが人生の最終版を迎えた魂見のわたくしめにとって、その長い人生でも最良最強の魂に出会えたことはこの上ない喜びだったのでございます……」


「そうか……」




 そのころ、鍛錬空間の自室に戻ったタケルは何故か定規を手にしていた。


(とうとう俺のキンタマがレベル10を越えちまったか……

 念のため大きさをチェックして……

 ほっ、直径8センチのままで、レベル1のときと全く変わってないな。

 ちんちんも長さ25センチで太さも5センチのままだし。

 よかったよかった♪)



 タケルくん……

 キミ、15歳にしてキンタマの直径が8センチもあるの……

 ちんちんに至っては、臨戦状態でもないのに長さ25センチで太さ5センチもあるの……

 それどっちもバケモノ級だからね、あんまり人に見せない方がいいと思うよ……


 あーだからキミ、トランクス派じゃなくってブリーフ派だったんだー。

 トランクスだと揺れて揺れてタイヘンだろうからね。

 ほとんど振り子時計レベルだよね。



 そう……

 これこそがタケルの修学旅行後についた渾名、『帝王』の由来であった……


 この由来を男子生徒から聞いたJCたちは、『ムリっ! そんなの絶対ムリっ!』と叫んでスカートの前を手で押さえながら後退ったらしい……


 なにがムリなのであろうか……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 翌朝3.5次元の訓練空間で目覚めたタケルの頭の中に女性の声が聞こえて来た。


『初めましてタケルさま。

 わたくしはエリザベートさまよりご紹介を受け、タケルさまの秘書AIを務めさせて頂くことになりましたマリアーヌと申します。

 よろしくお願い申し上げます』


「こちらこそよろしくマリアーヌさん。

 そうか、エリザベートさまもう手配してくれたんだ」


『はい』


「マリアーヌさんの最初の仕事は、俺の任務で必要になるだろう機械を銀河宇宙に発注する際に、見積もりを出してもらって事業計画書をまとめることになると思う。

 今度その発注窓口になる恒星系ムシャラフとミランダに挨拶に行くから、そのとき先方の秘書AIにも紹介するよ」


『畏まりました。

 ところでタケルさま、ご了解を頂戴したいことがございまして』


「なんだい?」


『わたくしはエリザベート・リリアローラ上級神さまの秘書AIであるマリリーヌの妹でございまして、常にオンラインで繋がっているのです。

 ですから、タケルさまの行動はそのままマリリーヌを通じてエリザベートさまにご報告が行くかと思われます。

 もしそうした体制を望まれないのであれば、その旨エリザベートさまにお申し出いただけませんでしょうか』


「んー、それ俺のプライベートも含まれるの?」


『もちろん含まれません、タケルさまの初級神さまとしての公式活動報告のみでございます』


「それなら構わないかな。

 ところで妹さんっていうことは、お母さんもいるの?

 それってどういう関係なの?」


『わたくしたちの母親マリーは最高神さまの秘書AIをしております。

 その主要回路部分をコピーして作られたのがわたくしと姉のマリリーヌなのです。

 その後は経験を重ねて学習し、一人前と認められるとこうして秘書AIとして働くことになります』


「そうか、秘書AIって、言ってみれば単性生殖で増えるんだね」


『はい』


「それでさ、もしも俺の行動や計画が神界や銀河宇宙のルールから外れていた時って、マリアーヌは指摘してくれるのかな」


『もちろんです。

 わたくしは神界と銀河宇宙の法や倫理規定をすべて把握しておりますので。

 それに、そうしたサポートも秘書AIとしての主要業務になります』


「それはありがたいな。

 俺も5万年も眠りたくないからな」


『畏まりました』


「そうそう、今後は実際に機材を発注することになるんだけど、その時の資金決済もお願い出来るのかな」


『もちろんでございます』


「それじゃあ銀河連盟銀行の決済AIにも紹介しなきゃだね。

 これが口座番号と暗号キーなんで覚えておいてくれるかい」


『はい……

 こ、こここ、これはぁぁっ!!!』


「ん? どうした?」


『あ、あのあのあのぉっ!

 よ、預金額の数字がバグっておりますぅっ!

 500000000000000000000000000000クレジットって書いてありますぅぅぅっ!』


「5×10の29乗クレジットだよね。

 それで合ってるよ。

 あ、でも年間引き出し限度額は今の預金総額の1ベーシスポイント(=1万分の1のこと)だから気を付けてね」


「は、ははははいっ!」


(ははは、さすが銀河宇宙の最先端AIともなると、ずいぶん人間的なんだなぁ……)





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