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*** 34 超新星爆発被害 ***

 


 夕食後、タケルはいつものようにニャイチローたちに集まってもらった。


「お前たちのおかげで俺の鍛錬も順調だからさ、これからは実際に使徒としての活動についても検討していきたいんだよ。

 具体的には神界による危機惑星救済活動についてなんだけど、そのためのブレーンストーミングをしてみたいんだ。

 すみませんけどタケルーさんもご参加願えないでしょうか」


『おういいぞ』


「まずは今神界が行っている救済活動について確認したい。

 銀河の自然災害の中でも、多くの惑星生命に絶滅を齎す最凶の激甚災害である超新星爆発のケースについてもう一度教えてくれ。

 ニャサブロー、例えば超新星爆発が発生したとして、被害予想範囲の惑星住民の被害の程度はどんなもんなんだ」


「そうですね、にゃにしろ強烈な高エネルギーガンマ線を浴びるわけですから被害は深刻ですにゃ。

 爆発の規模にもよるんですけど、標準的な超新星からおおよそ20光年以内に生命居住惑星があった場合、惑星生命はほぼ絶滅するとされています。

 30光年では80%以上の生命が死滅し、50光年でも深刻な健康被害が予想されます。

 100光年にゃらば、地下深くか1メートル以上の厚さの鉄や鉛で覆われたシェルター内にいれば助かります。

 生命に影響が無いのは150光年以遠の場合ですにゃね」


「ということは、この天の川銀河以外の銀河の超新星爆発については無視しても構わないということだな」


「はいですにゃ」


「確か銀河系では、今後5万年以内に超新星爆発を起こす星は600個ほどあり、その予備軍星から50光年以内には神界認定世界が30あって、未認定世界が90あったよな」


「はい」


「その50光年以内には、まだ知性を獲得するに至っていない生命居住惑星はいくつあるんだ?」


「おおよそ150と言われておりますにゃ」


「そんなにあるのか……」


「単細胞生命世界などをすべて含めればその数字ににゃります」


「そうか……

 30ある認定世界の移住や避難準備は無事終わっているのか?」


「爆発予想恒星から30光年以内(いにゃい)の恒星系では、地表の動植物はもとより地下のバクテリアや根粒細菌も絶滅に近いダメージを受けますので、食料生産が壊滅的打撃を被ります。

 このために、被害予想恒星系住民たちに関しては、その半数が既に数万年近く前から他の恒星系への移住を始めていますにゃ」


「移住先の惑星を巡ってよく恒星間紛争が起きなかったものだな」


「銀河連盟の設立は、そもそもその紛争を回避するためのもにょでしたので、移住先の斡旋は銀河連盟がおこにゃっています」


「そうか、なるほど。

 それにしても、いきなり全員移住はたいへんだけど、1万年もかけてゆっくり移っていけばそれほど負担にはならないのか」


「ですが最近ではそうした移住用の惑星が不足して来ていまして、それらの入植惑星もだいぶ手狭になってきてしまっているのです」


「どれぐらい手狭なんだ?」


「現在の銀河系には知的生命体のいないヒューマノイド居住可能惑星が約8000万あるのですが、このうち本当に居住に適した惑星はその5%程度にゃのですよ。

 地軸が黄道面に対して垂直や水平に近く中緯度地方にしか住めないとか、酸素濃度が十分でないとか、海が小さいために降雨量が少ないとか、火山活動が活発すぎて大気が噴煙に覆われ、居住も農業もドーム都市や地下でしか行えないとか。

 これに対して100億年前の銀河連盟発足以降、移住した恒星系は約900万もありますので、避難恒星系ヒューマノイドの人口密度も大分上がってきています。

 にゃかには移住前の母惑星のテラフォーミングを終了して、元の居住惑星に帰った種族もいますけど。


 そのために、最近では直径500キロ級の人工天体を複数建造し、超新星爆発によるガンマ線到達時には重層次元に逃れることを選択する住民が増えて来ました。

 ガンマ線通過後には、人工天体で農業も営みながら暮らし、母惑星の再テラフォーミングを行っています」


「そうか……

 爆発予想恒星から30光年以遠にある恒星系住民についてはどう対策しているんだ?」


「爆発予想天体から離れるにつれて移住を選択する星は減っていきますね。

 その多くは人工天体ごとの避難や母惑星の修復を選択するようです」


「それにしても被害予想恒星系の住民は大変だな」


「ええ、人工天体の建造も食料備蓄も大変ですし、まして移住ともなれば恒星系を挙げての大事業となります。

 こうした星々では惑星政府予算がGDPの10%以上ににゃっても許容されていますにゃ」


「ということは、惑星予算がGDPの30%もある地球が如何に異常かっていうことだな。

 なにしろ恒星間移住の費用の何倍にも匹敵するカネを、政府や政治家が民にマウント取るためだけに使っているんだから」


「「「 ………… 」」」



「ところで、被害予想恒星系の住民が他の恒星系に移住するときって、転移装置を使っているのか?」


「いえ、一般のヒューマノイドには恒星系内転移装置の使用は許されていますが、恒星間転移装置の使用は、神界とその配下である天使見習(みにゃら)い以上の者にしか許されていませんにゃ。

 もちろん恒星間戦争抑止のためですが」


「ん?

 俺まだ天使見習いにもなっていないうちから、ジョセさまの神域や恒星系ムシャラフやミランダに行くのに恒星間転移装置使ってたけど?」


「それはもちろんタケルさまがタケルーさまの生まれ変わりでいらっしゃるために、特別措置が講じられたのですにゃ」


「なるほど……

 それじゃあ恒星間移住は全部恒星間宇宙船を使っているのか」


「はいですにゃ」


「それじゃあ余計に大変だな。

 人員だけじゃあなくって相当量の物資も運ばなけりゃならないだろう」


「恒星船も性能によっては非常に高価なものににゃりますからね」


「安い恒星船だと100光年移動するのに何日かかるんだ?」


「およそ100日です」


「うわー、それはたいへんだわ。

 居住設備も相当に拡充しないとみんな閉所恐怖症になっちゃうなぁ。

 コールドスリープとかは使わないのか?」


「コールドスリープ用の機器は非常に高価ですにょでほとんど使われていません。

 それよりも鎮静剤やナノマシンによる鎮静措置の方が遥かに安価ですし」


「そうか、それじゃあ今最高性能の恒星船って、どのぐらいの性能なんだ?」


「今民間で使用が許されている最高性能の恒星船でも1000光年の移動には1日かかります。

 地球から銀河中心部までは約2万6000光年ありますので、地球から銀河中心部の銀河連盟本部までは26日かかりますね」


「地球からムシャラフやミランダまではどのぐらいの距離があるんだ?」


「ムシャラフまでは約8500光年、ミランダまでは8600光年ですにゃ」


「俺、ほとんど一瞬で地球からムシャラフまで移動してたんだけど……」


「あれは神さまのお力による恒星間転移装置によるもにょなんですにゃよ。

 あにょ恒星間転移装置は魔道具ではにゃく神法を道具化した神道具と呼ばれるもにょですにょで」


「そうか、やっぱり神さまの能力って凄いんだ。

 あ、その神道具って誰が作ってるんだ?」


「神界は工業力を持ちませんので、機器そにょもにょは銀河の先進工業系惑星が製造していますにゃ。

 ただ、その駆動エネルギーが膨大なため、使用されるのは通常の魔力ではなく神力ににゃります。

 通常は神さま方が神力を込めた神石と呼ばれるものがエネルギー源になりますにゃ」


「魔力を込めたものが魔石で神力を込めたものが神石か……

 それで恒星系内の転移には魔石を使っていて、恒星間転移には神石を使ってるんだな」


「はい」


「それじゃあ3次元世界から近傍重層次元への転移は何を使ってるんだ?」


「3.200次元空間までは近傍重層次元とされますので、魔石を使用した通常の転移装置ににゃります。

 それ以上の深さを持つ重層次元への転移は、通常神石を使った神道具である神転移装置を使います。

 通常恒星船は高次の重層次元空間を通った方が速く移動が出来ますが、高次次元に転移するには神道具や神石が必要ににゃりますにょで、3.200次元以上の高次次元を航行する恒星船は、その運航コストが高額ににゃりますのにゃ」


「ふーん、そうなんだ。 

 ところで、なんで神界は大量の神石を製造して、銀河宇宙に恒星間転移装置を使わせてやらないんだ?

 それがあれば母惑星と避難入植先の惑星を繋いで、惑星住民の入植や避難も遥かに順調に進むだろうに」


「それについての神界の公式見解は、『恒星間戦争を抑止するため』ですにゃ。

 恒星間転移装置の使用や、3.2次元を超える重層次元の利用禁止は銀河連盟法典にも記されていますし。

 万が一にもそうした装置を利用して恒星船艦隊が他の恒星系を侵略した場合、数時間から数日の猶予しかにゃければ、相手の恒星系防衛軍も銀河連盟防衛軍も対応不能に陥りますにょで」


「そうか、それで実際には非公式な理由もあるんだろ?」


「非公式な理由は、『膨大な神力が必要になる神石を作れる人員が不足しているため』です」


「やはりそうか……」


「人員不足は本当でしょうにゃ。

 にゃにしろ数十億年前からつい5万年前まで、神界は銀河世界の救済事業を行っていませんでしたから、そのせいで神石に神力を充填出来る神さまの数も能力も足りにゃいのですにゃよ」


「なあ、魔法力と神力って比例しているんだろ」


「はい、そもそもは同じにょですが、神力は神威を与えられていにゃいと行使出来にゃいものです」


「ということは神界の神は魔法力も大したことがないということか……

 平均ではどれぐらいなんだ?」


「おおよそレベル50と言われています」


「たったそれだけの能力しか無いのかよ」


「神さま方はご自分で魔力や神力をお使いになる機会はほとんどありませんから」


「例えばジョセさまが神界と神域を行き来するときとかに使わないのか?」


「宙域管理初級神さまが赴任や休暇で神域と神界を移動される際には、超長距離転移の転移装置をお使いになられますにゃ。

 実際に使用される時間は極めて短いにょで、5センチ級の神石でも数千年も使えます。

 ですから神界転移部門が作る僅かな神石でも十分なんですにゃ」


「なるほどな……」





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