*** 32 天使見習い ***
俺の鍛錬も順調だった。
戦闘訓練では体術に加えて模擬剣を使った戦闘も加わったんだけどな。
でもやっぱり剣術って技術がモノを言うんで、俺もオーキーもニャイチローには全く歯が立たないんだよ。
おかげで最初はいつもボコボコにされてたけど。
あいつレベル580もあるから見かけによらずパワーもあるしな。
特に俺はニャイチローとオーキーと交互に戦うから、もう毎日ズタボロになってたよ。
ポーションですぐ治るからいいんだけど、それでも腕や脚を切り落とされたのは50回じゃきかないし、骨折なんか日に何回もやってるしな。
『痛ぇよぅ…… この鍛錬バカなんとかしてくれよぅ……』
「大丈夫ですよタケルーさん、もうすぐ『苦痛耐性』も生えて来ますから」
『なんでお前は苦痛そのものを減らそうっていう発想にならねぇんだよぉぅっ!』
「えー、そんなことしたらレベルアップが遅くなっちゃうじゃないですかぁ。
それに苦痛を感じないでいると、『回避』のスキルも生えて来ませんし、『防御』のスキルも上がりませんよ」
『うぅぅぅぅぅぅぅっ……』
魔法訓練も順調だった。
魔力枯渇が300回を超えたころになると『苦痛耐性レベル1』が生えたんで、苦痛もかなり減って来ている。
気分の悪さも『状態異常耐性レベル1』のおかげでかなり緩和されて来たし。
気絶時間も3時間ほどになって来たんで、日に5回ぐらい枯渇出来るし。
「よかったですねタケルーさん、もうあんまり痛くも気持ち悪くもなくなりましたよね♪」
『日に5回も喰らったら苦しいのは一緒だよぅ……』
ニャジローとの簡単な魔法戦闘訓練も始まった。
「そもそも魔法というものは、非暴力無力化や遠距離攻撃に使うものであって、近接戦闘では滅多に使われにゃいものにゃんですにゃ」
「なるほど」
「ですが念のため中距離魔法戦訓練もしておきましょうかにゃ。
といっても、攻撃の際には水魔法で十分ですにゃね。
どんにゃ敵でも時速500キロで襲い掛かってくる質量100トンの水球を浴びたらひとたまりもありませんにゃ」
「そりゃそうだよなぁ、そんな究極の質量攻撃喰らったら今の俺だって何んも出来んだろうなあ。
なにしろ水が物を押し流す力は流速の4乗に比例するって言われてるし」
「ボクでも近距離転移するか重層次元に逃げ込む以外の対処方法はありませんにゃよ。
普通の結界では結界ごと流されてしまいますにゃ」
「なあ、普通の結界って、魔法って言うより銀河技術なんだろ」
「はいですにゃ。
遮蔽フィールドという力場を展開する純粋にゃ『技術』ですにゃよ。
魔法として使う場合にはそのエネルギーを魔力によって供給しているだけですし。
遮蔽フィールド発生装置は既にタケルさま専用の重層次元倉庫に設置してありますにょで、魔力さえあればいつでも使えますにゃ」
「それじゃあさ、普通じゃない結界ってあるのか?」
「タケルさまはご自宅とジョセさまの神域を繋ぐ転移装置をご利用されてますにゃよね。
それから、ジョセさまの神域とこの3.500次元を繋ぐ転移装置も」
「うん」
「あれは神さまのお力である転移力を魔道具化したもにょなんですにゃ。
その転移の力場をタケルさまの神力でご自身の周囲に展開され、対になるもう一つの転移装置を廃棄物投棄専用次元の3.600次元に置いておけば、究極の結界が展開出来ますにゃ」
「そ、そうか」
「にゃにしろ、物質も熱エネルギーも圧力も質量兵器の質量も、全て異次元に飛ばしてしまいますにょで、タケルさまには何のダメージもありませんにゃ。
たとえ核兵器の爆心地にいても全くの無傷ですにゃよ」
「すげぇなそれ……」
「ただし可視光線を含む全ての物質や電磁波も転移させてしまいますにょで、内部にいる状態では外部の状況は一切わかりませんにゃ。
ですから結界を解除される前に、安全にゃ場所に転移される必要があります」
「なるほど。
それって結界を外から見れば真っ黒な球体に見えるっていうことか」
「はい。
それでは神力結界の展開も練習しておきましょうかにゃ」
「あ、でもあの転移装置ってさ、なんか黒い渦巻いてたよな。
あれは何だったんだ?」
「あの渦は、転移装置を荘厳な見かけにしたいというエリザベートさまの趣味によるエフェクトなんですにゃよ。
ですからエフェクト無しの結界も展開出来ますにゃ」
(趣味って……
なにやってんのエリザさま……)
それで俺、1か月ほどの練習の末に神力結界もマスターしたんだけどな。
まだ若干発動に時間がかかるんだけど、これからも引き続き練習して行けばいいだろう。
それに通常ならクラス10程度の遮蔽フィールドで十分だろうし。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺とニャイチローたちは、3.5次元空間の談話室で打ち合わせをしていた。
「ところでニャイチロー、ニャジロー、ニャサブロー、お前たちって天使見習いなんだよな」
「はいですにゃ」
「ということは寿命も延ばしてもらっているのか。
それでお前たちって何歳なんだ?」
「3人とも銀河標準年齢で22歳ですにゃ」
「にゃんだとぉっ!」
「「「 !!! 」」」
「あ、いやお前たちの口調がうつっちまっただけだ……」
「「「 ………… 」」」
(にゃんかほっこりしたにゃ♪)
(にゃんか嬉しいにゃ♪)
「それにしてもまさかの年上かよ……
それも大幅に……」
「あにょ、ボクたちの出身恒星系での猫人族の平均寿命は300歳を超えているんですにゃ。
それで成長も遅くにゃって来てるんです」
「ですから法定成人年齢も30歳ににゃってるんですにゃ」
「それに、ボクたち15年前にタケルさまがお生まれになられる前に、エリザベートさま直々にご使命を頂戴して、天使見習い心得から天使見習いにして頂けたんです。
それからは、成長停止措置を賜ってここ3.500次元空間に籠って鍛錬を続けていましたにょで、生活年齢は3人とも130歳ですにゃ」
「!!!
そ、そこまで努力してたんか……
俺のためにすまんな……」
「とんでもありません!
こんにゃ名誉にゃことはありませんにゃよ」
「そ、そうか……
ところで不思議に思ってたことがあるんだけどさ、お前たちの口調って『な』が『にゃ』になったり語尾が『にゃ』なるよな」
「「「 す、すみません…… 」」」
「い、いや別に文句を言ってるわけじゃあないんだから気にするな。
そんなもん種族特性なんだから違いがあって当たり前なんだし。
でもさ、同じ猫人族のエリザさまの口調ってほとんどヒト族と同じだろ。
エリザさまとタケルーさんの子である神さま方も俺と同じ口調だったし。
これは何故なんだ?」
「ボクたち猫人族は大人になるにつれて猫耳としっぽ以外の形態はヒト族と似た姿ににゃりますが、ボクたちはまだ年齢が低くて口蓋や舌の構造が猫に近いんですにゃよ。
ですから暦年齢が30歳ぐらいににゃればタケルさまと同じような話し方ににゃると思います」
「ん?
でもさ、ニャルーンさんって中級天使だからもう年齢は3000歳超えてるぐらいだろ。
なのにまだにゃーにゃー言ってるぞ?」
「あれは自分を少しでも若く見せかけたいという若造りにゃんですにゃ……」
「まさかの若造りぃぃっ!」
「はい……」
「あー驚いた……」
((( ………… )))
「そうそう、それで初級天使とか天使見習いって、神界に何人ぐらいいるんだ?」
「ジョセフィーヌさまはまだ初級神ににゃられて日が浅いにょで100ほどの神界未認定世界を管理されていらっしゃいますが、ベテランの初級神さまは300ほどの世界を管理されていらっしゃいます。
銀河宇宙に知的生命体居住世界は約1億2000万ありますにょで、全部で40万柱ほどの初級神さまがいらっしゃいますにゃ。
そのサポートとして10名の初級天使と10名の天使見習いがついていますにょで、初級天使さまも天使見習いもそれぞれ400万人ほどですにゃね。
他の部門でアシスタントをする天使と天使見習いたちも400万人ほどおりますにょで、合計で1200万人おります」
「神さまのサポートをしていない天使とか天使見習いはいるのか?」
「それはいませんにゃ。
サポートを拝命すると同時に天使見習いに任命されますにょで」
「そうか。
それ以外にも天使見習い心得っていうのがいるんだよな。
そいつらは何をしてるんだ?」
「あにょ、神界より心得にしていただいたわけですが、ご存じの通り天使さまや天使見習いににゃると寿命をかにゃり伸ばして頂けるんです。
ですからあまり任務の空きが出来ずに母惑星にゃどで暮らしておりますにゃ」
「ですが、神界より天使見習い心得に認定されたほどの人たちですにょで、政府機関や大企業に採用されて働いていることが多いですにゃね」
「中かには、心得として待機しているうちに寿命を迎えてしまう者も……」
「そうか……」
昨日また評価ポイントを頂戴いたしました。
拙作を楽しんで頂けたようでたいへんうれしいです、ありがとうございます。
それでですね、ちょっと不思議なことに気づいたんですよ。
題名やあらすじがツマンナイせいで、この投稿作はまだブクマが17件しか無いんですけどね。
まあ自分の力不足なんで仕方ないんですけど。
でも評価ポイントを入れて下さった方が9人もいらっしゃるんですわ。
ということはブクマしてくださった方の半数近くが評価ポイントもくださっているということですよね?
よく考えたらこの比率ってすっごいですよねぇ……
まるで『滅多に客は来ないけど、来た客の半数は大いに満足して帰っていく隠れ家的なお店』みたいでいいですね。
みにゃさん本当にありがとうございましたですにゃ……




