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*** 28 タケルの資産 ***

 


「あにょ、タケルさま、実は地球の属する太陽系から90光年ほどはにゃれた場所にも大規模超新星爆発を起こす可能性のある星がございますにゃ……」


「なんだと……

 爆発予想時期は!」


「20万年プラスマイナス2万年後と推定されています」


「そ、そうか……

 で、でも90光年も離れていれば、被害はほとんど無いよな……」


「それが……

 その恒星は白色矮星との連星系を為していますのですにゃ。

 そうして不幸なことにその白色矮星の自転軸が連星系を為す恒星の中心部を向いているんです……」


「!!!

 っていうことは、その白色矮星が超新星爆発を起こせば、ガンマ線バーストが連星の中心部を貫くということか!」


「はい、その際には膨大なガンマ線のエネルギーにより、恒星の中心部にある物質が吸熱性の光崩壊を起こして急激に輻射圧力がうしにゃわれ、一気に重力崩壊を起こします。

 そのためにこの恒星も誘爆して超新星となるでしょう。

 こうした2重爆発により、単なる超新星爆発ではなく、その数万倍のエネルギーを持った極超新星爆発ハイパーノヴァとなるのですにゃ……」


「!!!

 っていうことは、地球は……」


「この極超新星爆発ハイパーノヴァによるガンマ線の到達により、半径150光年以内(いにゃい)の星は、生命の存在しない世界となることが確実視されております……」


「そうか……

 今後18万年以内に地球人類がその連星系を発見して、対策を取れるようになる可能性はあると思うか?」


「かにゃり難しいと思われます。

 にゃにしろ通常の恒星と白色矮星の連星系にゃのです。

 ただでさえ90光年も離れているために、小さい上に光も熱もほとんど出していにゃい白色矮星を発見するのは至難の業ですし、さらにこの恒星系は太陽系と銀河中心部を結んだ線上にあります。

 ですから銀河中心部バルジからの光やX線や赤外線に紛れて、地球からの遠隔探査はまず不可能でしょう。

 この危機に気づくためには、実際にこの恒星系の近傍に出向いて直接探査をする以外に方法はありませんにゃ」


「ということは、20万年プラスマイナス2万年以内に、地球人類は絶滅するのか……」


「その恒星系が極超新星爆発を起こしてから地球にガンマ線が到達するのにも90年かかります。

 ですが、その恒星系に重層次元通信装置を搭載した観測機を飛ばしていにゃければ、ガンマ線の到達を予測することが出来ません。

 そして超高エネルギーガンマ線が地球に到達したときには、全天を覆う超高輝度の光と共に地球上の全生命は即死することににゃります……」


「そうか……」


(ということはだ、もし俺が地球人類を救いたいと思い、実際に救えたとしても、それは他の星のヒューマノイドも救ってやらなければ不公平っていうことだな……)




 それで俺、地球に帰ったときに両親に聞いてみたんだよ。


「ねえ父さん、武者家の資産ってどれぐらいあるのかな」


「んー、恒星系ムシャラフとミランダの政府から予算が出てるからけっこうあるぞ。

 そうだな、日本円換算で全部含めて今は年間600億円ぐらいかな。

 それに毎年すべて使わずに昔から貯めて来た分もあるし、自力で稼いだ分もあるから、資産全体では5兆円と少しだろう」


「そ、そんなにあるんだ……」


「タケルさん、なにか買いたいものでもあるの?」


「い、いや、今3.5次元のトレーニングルームで、ここ5万年の神界による救済活動の記録なんかを見せてもらってるんだけどね。

 まあ神界全体が原理派中心だったこともあって、各惑星を救済するための予算にも苦労してたみたいなんだ。

 それで、エリザベートさまも個人資産から結構な額を支出してくれてたそうなんだよ。

 タケルーさん自身にはほとんど資産が無かったし。

 それで俺も任務を始めるに当たって、どれぐらいの予算が使えるかなって思ったんだ。

 ほら、飢餓惑星を救うにしても、当初は緊急食糧援助とか必要になるだろうから」


「ふふ、タケルさん、予算の心配なんか要らないわよ」


「?」


「あなた既に銀河宇宙最大級の資産家だもの」


「えっ?」


「5万年前に惑星ムシャラフとミランダが救われた後に復興が始まったんですけど、そのころ両恒星系の住民たちが少しずつ浄財を出し合って、5万年後の英雄タケルーの復活に備えて1億クレジット(≒100億円)の基金を作ったのよ。

 それを両恒星系の名義で銀河連盟準備銀行(GFRB)に預けていたの。


 この連盟銀行は、そもそも恒星系同士の取引の資金決済のために設立されたものだったけど、その取引代金の保証となる資金を担保しておくための準備預金と、恒星系の資産を預かるための一般預金に分かれていたのね。


 それで、このタケルー基金の資金使途は5万年後のタケルーさまの生まれ変わりの方のための活動資金だから、ムシャラフとミランダは5万年間の一般定期預金にして欲しいって申し入れたのよ。

 でもそんな長期の定期預金は前例が無いって断られて、仕方なく恒星系資金とは別枠の特別口座を作ってもらって一般預金に預けたの。

 もちろん銀河連盟銀行は、そうした一般預金を他の恒星系政府に貸し付けて利益を出してもいるんだけど。


 それで、連盟銀行法では一般預金の預け入れと引き出しは年1回に制限されているの。

 まあ連盟銀行の事務負担を軽減するためだったんですけど。

 もっと頻繁に出し入れしたかったら金利のつかない準備預金に入れればいいんだけど。

 その年1回の預け入れ期日には、その前の1年間の元金や利金を引き出すかどうか通知出来るんだけど、通知が無ければ元金と利金は自動的に再預金される制度になっていたのよ。

 つまり実質的な年1回利払いの複利預金だったの。

 銀河宇宙の経済も相当に安定してたから、金利もすっごく低くって、一般預金の金利は最低金利の0.1%で、貸付金利は1%から2%程度だったんですけどね」


「そんな昔から活動資金を用意してくれてたんだ」


「そりゃあ滅亡の危機を救って貰えたんだから、両恒星系ともものすごく感謝してたからね」


「う、うん……」


「その預金が複利で増えて、今ではとんでもない金額になってるのよ」


「え? でもたったの金利0.1%だよね?」


「ふふ、超長期の複利計算って恐ろしいのよ」


「そ、そうなの?」


「そうね、今の口座の残高を銀河ネットで確認してみましょうか」


(やっぱり銀河ネットあるんだ……)



「あら、今だいたい5×10の29乗クレジットになってるわ」


「その数字、大きすぎてピンと来ないんだけど……」


「そうねえ、日本円にするとおよそ5×10の31乗円になるわね。

 今の地球の全ての国の国家予算合計は約3000兆円だから、その1兆年分のさらに1万6000倍になるわ♪」


「えぇぇぇ―――っ!」


「あなた既に初級神にして頂いたみたいだから寿命は数万年はあるでしょうけど、一生かけても使い切るのは無理ね♪」


「ねえ、そこまで超莫大な金額になったのも驚きだけど、5万年前に預かってたときには連盟銀行は気づいてなかったのかな?」


「それがね、5万年前にも計算してたらしいんだけど、当時の議事録ミニッツには、

『恒星系名義の預金だし、しかもあの超英雄タケルーの復活に備えての資金ですから、断りにくいですなぁ』

『断ったりしたら、この銀河連盟準備銀行の評判が地に落ちますぞ!』

『ですが例え0.1%という最低金利で預金を受け入れたとしても、5万年後にはとんでもない金額になってしまいますよ』

『だが我々の時代にはほとんど増えないだろう』

『そのカネは年利2%で他の恒星系政府に貸し付ければよろしいの』

『ですが3万年も経てば本当にとんでもない金額になりますが……』

『その前に残高に目が眩んだムシャラフとミランダが資金を引き出しに来るんじゃないか?』

『もし引き出さなかったら?』

『まあその辺りについては、我々の遥か後の後輩たちがなんとかするでしょう、わっはっは』

『それもそうですな、あっはっは』

 って書いてあったそうよ」


(だいじょーぶか銀河連盟銀行……)



「もちろんムシャラフもミランダも復興は順調だったから、タケルーさま基金には手を付けないでそのままに出来ているわ」


「それで連盟銀行は何も言って来なかったの?」


「どうやら歴代の幹部たちは自分たちが頭下げるのがイヤで、見て見ぬふりをしてたそうね」


(それでいーのか銀河連盟銀行っ!)



「でもどうやら1000年ほど前に、連盟銀行を監督する立場の銀河連盟最高評議会もようやく気がついて、大問題になったのよ。

 なにしろ連盟銀行の預金残高の98%がそのタケルー資金だったから」


(マジかよ!

 それまで知らなかったのかよ!)


「それで銀河連盟最高評議会の議長や副議長、連盟銀行の総裁や理事たちが、揃ってムシャラフとミランダに懇願しに来たの。

『金利の付く一般預金から金利のつかない恒星間取引準備預金に切り替えてくれないか』って。

 それから、『一度に全て引き出そうとすると銀河連盟準備銀行(GFRB)が破綻して銀河宇宙が大騒ぎになるから、それはしないでもらえないか』って」


「そ、そうか……」


「そうそう、あと資金引き出しは、出来れば毎年預金総額の0.01%までにしてくれないかとも頼まれたそうよ」


「その年間引き出し限度額っていくらぐらいになるの?」


「今だと5×10の27乗円になるわね。

 それでも地球全体の国家予算合計の約1兆6000億年分になるから足りるんじゃないかしら?」


「た、たぶん足りると思うけど……

 それでなんて返事したの?」


「両恒星系政府とも、復活されたタケルーさまのご了解があればっていう条件で切り替えに同意したの。

 同意してあげるっていうことでいいかしら」


「タケルーさん、同意してあげていいですか?」


『おういいぞ。

 それにしてもそれだけのカネがあったら旨いもん腹いっぱい喰えるな♪』


(どう考えても食い切れないと思いますけど……)


『わはははは……』





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