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*** 27 恒星系政府予算 ***

 


「神界の本来業務は天地創造と候補種族への知性付与ですにゃ。

 その次に来る大目的は恒星間戦争を廃絶しつつ、恒星系文明の発展を促すというものです。

 銀河連盟と銀河連盟防衛軍の設立目的も、そもそもはこの恒星間戦争抑止というものでしたから」


「うん」


「ですが太古の昔、神界や連盟が当初未認定の恒星世界30か所ほどに救済を行った際には、犬人族や猫人族の自然災害救済は3か所ほど成功しました。

 ですが27か所のヒト族世界の紛争抑止などのケースでは、その全ての世界で大失敗に終わったんです。

 それどころか、その後数千万年に渡ってそれら恒星系を監視管理する必要まで発生してしまったにょですにゃ」


「でもそれってさ、単に当時の神々が無能だっただけのことなんじゃないか?」


「仰る通りですが、神界はそれを認めたくにゃかったんでしょうね」


「それで自分たちの無能を晒さないために未認定世界の救済を停止したのか……

 それどんな言い訳を用意してたんだ?」


「E階梯の低い文明を救済しても、結果としてその文明を停滞させることになるか、最悪の場合恒星間戦争を惹起させることににゃると言っていました。

 そんにゃことににゃるぐらいならば最初から救済などしない方がよいのではないかと……」


「なるほど、無能でも言い訳だけは言えたわけだな。

 でもそれで将来神界認定世界になれるかもしれない世界の芽を摘んでしまってるかもしれないんだ。

 それさ、ヒト族の世界だけ救済しないで、猫人族やその他種族の世界だけ救済してやればどうなんだ?」


「それは種族差別ににゃってしまうんですにゃ……」


「あー、そうか……」


「ということで、惑星救済の大原則には、『銀河技術や神力を未認定世界住民に見せない』という項目も加わったんですにゃ。

 これにより銀河連盟も転移技術を用いての食料分配も出来にゃくにゃりました。

 おかげで救済のコストが跳ね上がったのですにゃ」


「そうか、平和維持軍みたいな組織や大気圏航行用シャトルが大量に必要になるもんな……」


「仰る通りですにゃ。

 結果として大氷河期世界を救済するためには、食料予算も含めて銀河の平均的恒星系政府の予算10年分が必要ににゃりました。

 これにより、財源不足のために未認定世界は実質的に救済出来ないことににゃってしまったのです」


「そうか、なるほどな……

 ところでその平均的恒星系政府予算って、クレジットベースでいくらぐらいになるんだ?」


「おおよそ3兆クレジットとされていますにゃ」


「ん? 3兆クレジット?

 っていうことは、日本円で約300兆円か?」


「はいですにゃ」


「なら平均的惑星のGDPっていくらだ?」


「平均GDPは100兆クレジット、日本円で約1京円です」


「ちょっと待ってくれ。

 惑星政府平均予算が300兆円でGDPが1京円なんだな」


「はい」


「あ、あのさ、地球全域のGDP合計は9500兆円って言われてるんだ。

 ということは、銀河の平均的惑星のGDPとそんなに変わらないっていうことだよな」


「もちろん銀河世界では工業系恒星系と農業系恒星系で大きな差はありますが、平均するとそれぐらいです。

 それに銀河の知的生命体居住世界では、平均人口はおよそ80億人ですので、1人当たりGDPは銀河世界の方が多いですけど」


「でもな、地球の国の全ての政府予算を合計すると約3000兆円(≒約30兆クレジット)なんだ。

 なんでGDPは同じぐらいなのに政府予算は10倍も違うんだ?」


「それもヒト族社会の特徴ですにゃね」


「?」


「政府予算が大きければ、それだけその予算に依存する民間団体や企業が多くにゃります。

 つまり、大きな政府ほど民間に対してマウントが取れるんですにゃよ」


「うっわー」


「また、それだけの政府予算を支えるには大きな税負担も必要になります。

 これもある意味民に対して政府がマウントを取ろうとする姿勢ににゃりますにゃ。

 赤字国債を発行して財政赤字を肥大化させてまで、民間に対してマウントを取ろうとするのはもはや末期症状ですにゃね」


「うっわわー」


「しかも、そうした大きな政府予算の配分は、政治と行政に任されています。

 彼らは資源最適配分の経験も発想もありませんので無駄な投資も多くにゃるために、政府支出がGDPの約3割を占めるなどという異常事態ににゃっているんですよ。

 かつて『日本列島改造論』の名の下に日本中で公共工事が行われていましたが、にゃかには日に数台のトラクターしか通らない農道の交差点を立体交差にする工事までありましたし。

 これは当時の日本の選挙権保有者の9%が建設業に就いているかその家族だったためと言われています」


「うわわわー」


「現代の日本では、こうした無意味な政府支出の多くは食料自給の名の下に農家支援に使われていますが、これは農協団体が政府与党の票田になっているからにゃんです。

 また、老人福祉予算も多いですが、これも老人は暇なために選挙に出かけることが多く、また変化を嫌うために多くが与党候補に投票するからにゃんです。

 つまり、日本の国家予算の5割は、与党が与党であり続けるために使われているんですにゃね」


「うっわわわー」


「これに対して、銀河の平均的認定世界では惑星政府予算は惑星GDPの3%以下ににゃります。

 犬人や猫人の惑星では2%以下ですね。

 もし犬人や猫人の世界で政府支出がGDPの5%を超えると、その政府は無能政府とされてすぐに政権交代や上級官僚の交代も行われていますにゃ」


「ヒト族はそうした点でもあらゆるものに対してマウントを取りたがるっていうことか……」


「まあ種族特性ですから善悪を言うのもにゃんですが、それでも神界認定世界になるための判定基準のにゃかには、政府支出はGDPの5%以内いにゃいというものもありますにゃ」



「そうだったんだ……

 そういえば、今の地球の先進国では『インフレ率2%』っていうのが政策目標になってるんだよ。

『財政赤字はこの政策目標を達成するためには必要不可欠なのである!』って言って。

 もちろんインフレ率が2%ならGDP成長率も2%近くになって、その分国民所得も増えて失業率も減るだろうっていうことなんだろうけど。

 そうなれば自分の政権も安泰だって思ってるんだろうけど。


 でもさ、2%成長っていうことは、35年後にはGDPを倍にすることになるだろ。

 70年後には4倍だな。

 今の日本のGDPって約500兆円だけど、それを70年後には4倍の2000兆円にするっていうのが目標だって言ってるわけだ。

 でも、70年後にGDPが2000兆円になるなら、増えた分の1500兆円を誰が消費するんだっていう話だよな。

 それを物価を4倍にすることで達成するって言われてもなぁ。

 それで個人所得も本当に4倍になってるのかよっていう話だよ。

 もしくは本気で人口を4倍にする気か、っていうことだ」


「それもおにゃじくヒト族の後進星文明の特徴ですにゃね。

 現時点の自分の政権の支持率を上げてマウントを取り続けられるようにするために、膨大にゃ財政赤字を齎してまで無茶苦茶な政策目標を掲げるというのは。

 銀河宇宙の主要先進星のインフレ率目標は0%~0.01%ですにゃよ。

 GDP成長率目標は人口増加率とおにゃじですし」


「なるほどなあ……

 ところでさ、前から気になってたんだけど、神界の財源ってなんなんだ?」


「すべて銀河世界に点在する神殿への喜捨で賄われておりますにゃ」


「えっ……

 神界独自の財源って無いの?

 例えば現業部門を持っているとか」


「残念にゃがらありませんにゃ。

 特に古くからの神々ほど、ヒューマノイド相手に商取引をするということに忌避感を覚えられるようですし」


「そうなんだ……」


「でも5万年前のタケルーさまのご偉業により、銀河宇宙全体のお布施総額が一時的に1万倍以上になりましたんですにゃ」


「!」


『えっへん!』


「加えて原理派の神々が引退されたことにより、神界の救済事業もそれなりに捗るようににゃりましたんですよ」


「そうだったのか。

 いや話を逸らせて済まなかったな。

 銀河の自然災害世界救済の話に戻ろうか」


「はいですにゃ」


「なんといっても最悪の激甚災害は超新星爆発スーパーノヴァだよな。

 あれって規模にもよるけど、おおよそ100光年以内の生命は結構な被害を受けるんだろ。

 その危機把握調査はどうなってるんだ?」


「現在では銀河連盟調査部により銀河系内で超新星になる可能性のある恒星は全て把握されていますにゃ」


「それって太陽系太陽の8倍以上の質量を持つ恒星っていうことだよな」


「それに加えて恒星と連星になっている白色矮星も含まれますにゃ」


「そうか、連星から放出されるガスや物質を吸着し続けているから、いつかはチャンドラ・セカール限界を超えて超新星爆発を起こすのか」


「その通りですにゃ。

 そうして銀河連盟調査部の研究により、ほとんどの大質量星はその超新星爆発時期が予測されています」


「どのぐらいの精度で?」


「例えば今現在銀河系中で5万年以内(いにゃい)に超新星化する可能性のある天体は約600個あると予測されています」


「それって今日にも超新星化するかもしれない星が600個あるっていうことか」


「はいですにゃ。

 そのうち50光年以内(いにゃい)に神界認定世界がある爆発予想天体は30ですが、その恒星系では既に避難や移住の準備が進められております」


「なんかそれ多くないか?

 地球から半径50光年以内には恒星なんかあんまり無いぞ」


「銀河の星々の密度は中心部のバルジにかにゃり偏っています。

 地球はこの中心部から2万6000光年もはにゃれているので周囲に恒星が少にゃいのですにゃ」


「そうか、中心部では恒星も超新星爆発予想天体の数も多いのか」


「はいですにゃ」


「その超新星爆発予想天体から50光年以内にある未認定世界の数は?」


「知的生命体が存在し、未だ神界認定に至っていにゃい恒星系は90ほどですにゃね」


「そいつらは見殺しか……」


「はい……

 避難や移住は銀河技術や神力の助けがにゃければ不可能ですが、それは神界の方針で禁じられていますにょで……」


「知的生命体がいなくとも、生命は存在する惑星もたくさんあるだろう。

 それも見殺しか……」


「はい……」





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