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*** 26 古の救済大失敗 ***

 


 オーキーたちは楽しそうに畑仕事してたよ。


 まずは1反(10アール)ほどの地面を囲って穴を掘って、底に排水のための石を敷き詰めた後に土と有機肥料を混ぜ合わせながら敷いていったんだけどな。

 それでニャルーンさんに頼んで気象制御してもらって、その土地には夜だけ小雨が降るようにしてもらったんだ。


 そうして1週間ほど放置して肥料が土に馴染んでから、2人は畑を耕し始めたんだよ。

 それでさ、届けて貰った農作業用品の中に牛鋤があったんだ。

 あの小さなソリみたいなもんの下に刃がついてるやつ。

 それを牛に引かせてソリに人が乗ってると、土を深く耕せるわけだ。


 そしたらさ、オーキーがその牛鋤引いて、オーキリーナが牛鋤に乗ってたんだ。

 それで張り切り過ぎたオーキーが思いっきり鋤を引っ張ったもんだから、でこぼこ部分でリーナが跳ね飛ばされて畑に突っ込んじゃったんだよ。

「ぷぴ―――っ!」とか悲鳴を上げながら。


 リーナは最初ぷーぷー文句言ってて、オーキーは平謝りしてたんだけどな。

 でも、リーナが気づいちゃったんだ。

 ほら、豚や猪って泥遊びが大好きだろ。

 だから豚人系種族のオーク族も泥遊び好きが本能にインプットされてたんだな。


 それでオーキーたちは肥料を入れる前の土を使って水も張って『ぬた場』を作り始めたんだ。

 そこで2人して転げまわって大喜びしてるんだよ。

 オーキーが農業したいって言ったのも、土に触れたいっていう本能の囁きだったのかもだ。


 でもさ……

 2人ともマッパになってぬた場で転がりまくってるもんで、目のやり場には困ったわ。

 リーナって豚耳と豚鼻と豚しっぽ以外はスリムで小柄な15歳ぐらいの少女だからな。

 それにこいつらって羞恥心あんまり無いみたいだし……


 それで水着も用意してやったんだけど、2人ともやっぱり全身が泥に触れる裸がいいって言うんだ。

 さんざんぬた場で遊んだ後にシャワー浴びて、体を拭いて乾かすときにも平気でマッパのままだし。

 すっかり満足した2人が見つめ合ってるうちに、オーキーのナニが反応してむくむくしてくるしな。

 それを見たリーナも喜んでるし。


 だからそういうのは家でやれっつーの!



 そうこうしているうちに俺気づいちゃったんだけどさ。


「なあニャイチロー、なんかリーナのお腹が大きくなってきてないか……

 旨いもの食べ過ぎたからか、それとも……」


「もちろんご懐妊ですよ。

 遠隔検査の結果、男の子と女の子の双子のようです」


「そ、そうか……

 そ、それはおめでたいな……」



 それからはオーキーがリーナに畑仕事とか一切させないんだ。

 それでリーナは猫人さんたちに料理なんかを教わってたよ。

 小さくて可愛らしいエプロンつけて。


 でも…… あの……

 リーナさん、いくら暑いからっていっても、裸エプロンはカンベンして頂けませんでしょうか。

 しっぽが短くて丸まってるせいで、おしりが丸見えなんですけど……

 妊娠して大きくなってきたおっぱいもエプロンからハミ出てるし……

 ボクこれでも15歳の血気盛んな男の子なもんで……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 その後のレベルアップも魔力鍛錬も順調だったよ。

 それでニャサブローの講義も、銀河知識から実践編になっていったんだ。



「ふーん、ということは、神界に認定されていない未認定世界に対しては、神界や銀河連盟の存在を明かしたり、直接関与したりすることは禁止されているんだ。

 なんでだ?」


「100億年ほど前に銀河連盟が成立した後は、神界と銀河連盟が共同で未認定世界に接触しての救済も行っていたんですにゃ。

 でもそれで事故が発生してしまいまして、それ以来直接関与は禁止されてしまったのですにゃよ」


「ずいぶん昔の話なんだな。

 まだ太陽系なんか存在もしていなかった頃の話か。

 それでどんな事故だったんだ?」


「その未認定世界は科学・技術はレベル7までに至っていたんですが、社会成熟度はレベル1にも至っていにゃかったんです。

 要は科学や技術は進んでいたんですが、犯罪も紛争行為も全く抑制されていにゃい世界だったんですにゃ」


「そうか、いくら科学や技術が発達しても、社会制度が発達しているとは限らないっていう見本みたいなケースだな」


「はいですにゃ。

 それでその恒星系の母惑星が大規模な氷河期を迎えてしまったんですにゃよ。

 おかげで高緯度地方の国々が低緯度地方の国々に侵略して、農産物を略奪したり属国化して農地を奪おうとするケースが続出していましたんですにゃ」


「そうか、寒冷化と食料不足が侵略を誘発していたのか……

 まあよくあるケースだな。

 地球でも15世紀から小氷期になったんで、欧州なんかの寒い国々がアフリカだの南米だの東南アジアだのに侵略を始めてたし。

 大航海時代とか綺麗ごと言ってるけど、あれは本格侵略前の威力偵察だからな。

 どの星でも犯罪国家の考えることは同じか」



「それで当時の神界と銀河連盟は合同でその惑星に特使を派遣し、食糧援助と引き換えに停戦を求めたんですにゃ。

 その一方で氷河期対策も始めようとしてたんですが、まずは停戦と緊急食糧援助が必要だとしまして」


「因みにどんな手段で氷河期対策をしようとしてたんだ?」


「もっとも安全で確実にゃのは、その惑星の衛星軌道に小型の人工太陽を複数配置することですにゃ。

 あまり大きな人工太陽を配備すると、ダイナモ効果で火山活動が活発化してしまいますにょで。

 その際には核融合炉そのものは3.003次元空間に配置して、熱エネルギーだけを排出する衛星を配備することにしていたんですにゃ」


「なるほど。

 それだったら人工太陽の熱放出量もコントロール可能だっただろうな。

 それでどんな事故が起きちゃったんだ?」


「まずは各国の指導者層が、援助された食料を隠匿して民にほとんど配らなかったんですにゃよ」


「うっわー」


「まあ飢饉世界では、食料の備蓄量こそが権力基盤になりますにょで。

 それで、おかげで全ての国々で食料を巡る内乱が発生してしまいましたんですにゃ。

 その内乱で現政権を打倒した新政権も、やはり食料を配らずに独り占めしようと試みたにょで延々と内乱が続きました」


「な、なあ、それってやっぱりヒト族の星だよな……」


「はい、もちろんそんにゃことはヒト族の星でしか起こりません……

 犬人族の世界ではボスは構成員たちを平等に扱うことでリーダーシップを誇示しますし、猫人族の世界ではそもそも政府もその役割も非常に小さい上に、誰もリーダーににゃんかにゃりたがりませんにょで」


「にゃるほど、あっ!」


((( ほっこり♡ )))



「こほん、それで神界は仕方なく各国の政治指導者たちを逮捕していったのです。

 罪状は横領罪と食糧援助の条件である民への公平な配布契約を破ったという詐欺罪でした。

 そして、政治家たちが神界刑務所に収監されると、その後継者たちも同じように食料を隠匿して逮捕されていきました」


「逮捕に抵抗する奴はいなかったのか?」


「逮捕は犯罪者本人を刑務所に強制転移させることで行われましたので抵抗は不可能です」


「そ、そうか……」


「もちろんすぐに後継の政治指導者が現れ、隠匿もより巧妙になっていきました。

 ですがその頃になると全ての政治家、軍人の脳にナノマシンが配備されていましたので、欺瞞工作はすべて摘発されています。

 また、主要な政治家たちが逮捕拘留されたために各国では独立運動が盛んになり、神界の介入前に惑星全域で200ほどだった国家はあっという間に800まで増えました」


「それもなんとなくわかるような気がするな……

 誰もが民にマウント取れる大統領や国王になりたがるからだろう」


「おかげで神界と銀河連盟の食料配布先は800か所になったのですが、ここでも政治指導者たちの逮捕と交代が相次いで、初年度だけで惑星総人口70億人のうち、10億人が収監されました」


「!」


「また、軍人将校や政治指導者たちがいなくなると、各地で反社会的勢力が暴力で食料を独り占めしようとしたために、これも指導者や実行犯の逮捕拘留が相次ぎ、当初5年間での逮捕収監数は30億人、最終的に収監数は65億人に達してしまったのですにゃよ」


「!!」


「刑務所はもちろん独房が用意されていましたので、もはや争いは起きませんでした。

 この段階でようやく残りの穏健な惑星住民5億人への公平な食料配布が実現したわけですにゃ……」


「それでその横領罪や詐欺罪で収監されてた連中が出所するとどうなったんだ?」


「彼らはもちろん刑期を終えると釈放されましたが、国会議員などは既に任期を終えていますし、軍人も武器を押収されていますので無力でした。

 それでも各地で釈放者たちが徒党を組んで建国を宣言したために、50年後には国の数が2500にまで増えたそうですにゃ……」


「うっわー」


「ですがもちろん食料の独り占めを試みると再び逮捕収監されます。

 こうしてこの惑星では、全人口の90%がいつも刑務所にいるという状態が恒常化してしまったにょですよ。

 もちろん人口は激減し、地上に残された民も就労意欲はほぼ皆無でした。

 おかげでこの惑星は、300世代も経つころになると文明は原始時代並みに退化していったのですにゃ……」


「そ、それさ、なんかすっげぇわかるような気がするんだわ。

 たぶん今の地球が大氷河期を迎えて神界と銀河連盟の援助が入っても、同じことが起きるぞ」


「神界や銀河連盟もそれに気づきました。

 当時の神界や連盟のメンバーにはほとんどヒト族は含まれていなかったために、ヒト族のメンタリティーや行動原理が理解出来なかったのですにゃね」


「そうだろうなぁ……」


「結果として、神界の介入は、ヒト族惑星文明の大停滞を招いてしまったのですにゃ」


「うん……」



「それで別の氷河期世界では、救済メンバーに多くのヒト族が含まれるようににゃったのです。

 ですがやはり大問題が発生してしまいまして……」


「どんな問題だったんだ?」


「食料配布は、重層次元内の大型輸送船から惑星上の各地へ転移技術を利用して行われていました。

 こうした技術はもちろん災害惑星住民が全く知らにゃい技術です。

 ですが、救済派遣団のヒト族の神のほぼ全員が、惑星住民によるハニートラップにより、こうした技術の内容を次々に漏らしていってしまったのですよ」


「!!!

 そうか……

 ヒト族の男はより美人とエッチすることで他の男に対してマウント取ろうとするから、そんなトラップには簡単に引っかかるんだろうな。

 女に対しては自分の方が遥かに知識があるってマウント取ろうとするんだろうし」


にゃかには近隣恒星系の位置情報や、重層次元航法装置の部品や設計図まで盗み出した神もいたそうですにゃ……」


「アホだわそいつら……」


「神界と連盟の援助で一息ついた災害惑星住民は、こうして恒星間航行技術を手に入れました。

 それを使って、今度は近隣恒星系への侵略と植民地化を企図して宇宙軍を創設し始めたのですよ」


「!!!!」


「もちろんこれも神界や連盟は察知していました。

 にゃにしろ惑星政府や軍の指導者たちもやはり脳内ナノマシンの監視下にありましたから。

 そうして、莫大な資源と資金をつぎ込んだ恒星間侵略軍が出撃した途端、乗組員全員と惑星指導者たちが神界によって転移され、逮捕拘留されることににゃったのです。

 その宇宙軍の戦闘艦艇は、今でも重層次元のどこかを彷徨っているでしょうね」


「うーん、それもわかるような気がするなぁ……

 今の地球でもまず間違いなく同じことが起きるなぁ……」





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