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*** 25 オークたち ***

 


 タケルはニャイチローたちに頼んでオーキー用の家も用意していた。

 銀河世界の一般的な住宅の完成品を買ってもらい、それをまるごと『収納』してこの3.5次元空間に設置したものである。

 銀河の製品だけあって、すべての設備が整った素晴らしい家だった。


 オーキーは自由時間をけっこう楽しんでいるようだ。

 猫人スタッフとも打ち解けて3Dビューアーの操作方法も教えてもらい、地球や銀河宇宙のプログラムを見ていたり、猫人たちとおやつを食べたりしている。

 オーキーはちゅ〇るや猫ま〇しぐらはあまり好みではなかったらしく、猫人たちがほっとしていた。

 あの巨体で好きに食べられたら、倉庫一杯のちゅ〇るもすぐに無くなってしまうと危惧していたからである。



 鍛錬も順調に進んだ。

 やはり同じレベルの者同士が真剣に戦うと、レベルアップも早くなっているようだ。

 時折戦闘を中断してニャイチローが2人にアドバイスもしている。

 試しにニャイチローと戦ったオーキーは、その強さに随分と驚いていたようだ。


 そんな生活が1月ほど続いた後。


「なあオーキー、そろそろお前もオーク族の仲間が欲しいだろ。

 それでもう一人創造しようと思うんだが、どんな娘がいい?

 この中から選んでくれ。

 もちろんお前の好みを言ってくれてもいいぞ」


 タケルが見せたオーク族の女の子たちの絵を見てオーキーが固まった。

 顔もみるみる真っ赤になって来ている。


(はは、けっこう純情な奴だな……)


 さんざん悩んだ末にオーキーが選んだのは、15歳ほどに見える小柄でスリムなオーク族の少女の絵だった。


「この子でいいんだな」


「ブ……」


 それじゃあ諸元を設定してと……

 性格は優しくて明るい子と。


 タケルが魔法生命体創造神力を発動すると、またその場が光った。

 そしてその光が収まると……


「ぷひ?」


 オークの少女が戸惑いながら自分の体を触っている。

 鼻は豚鼻で頭の上には豚耳もあるが、それ以外はほとんどヒト族と変わらない。

 猫人の女の子がすぐに着る物を持って来てくれた。


「俺の名はタケル、こっちのオーク族はオーキー、俺の鍛錬相手をしてもらっている。

 仲良くしてやってくれ。

 お前の名前はオーキリーナにしよう」


 オーキリーナの体が淡く光った。


 オーキーとオーキリーナは真っ赤な顔をして俯いていたが、時折相手の顔をチラ見している。

 たまに目が合うと慌てて反らしたりしていた。


(この分なら仲良くやっていけそうだな……)


「それじゃあ俺はこれから魔力充填をして気絶するからな」


『とほほほ、またかよ……』


「いつものように明日いっぱいぐらいは気絶したままだろうから、その間オーキーはオーキリーナを連れてこの空間を案内してやってくれ。

 猫人たちへの紹介も頼む」


「ブヒ」


「そうそうオーキリーナ、家はオーキーと一緒でいいかな。

 オーク族用の大きな家はまだ一軒しか無いんだ」


「ぷ、ぷひ……」


 オーキーとオーキリーナがさらに真っ赤になって小さくなった。



 俺が魔力充填をして転げまわって苦しんでいるのを見て、オーキーリーナはずいぶん驚いていたようだ。

 まあオーキーが熱心に理由を説明していたようだが。

 俺が気絶している間に、オーキーたちは猫人たちと一緒に食事をしたり、話をしたりしてずいぶんと打ち解けていたそうだな。



 そして俺が気絶から覚めた日、俺とオーキーはいつものように戦闘訓練を開始した。


(そうだ、デトロイトスタイルにスイッチして、ジャブを3発打ってみよう)


 いつもと違う攻撃にオーキーのガードに隙が出来た。


(よしここだ! ストレートからフックにアッパー!)


 ドバン! ドバン! ドバン!


(そしてミドルキックから後ろ回し蹴りっ!)


 バシッ! バシーン!


(お、オーキーがぐらついたか。

 よし! 今度はいつものコンビネーションで!)


 ビチュン! ビチュン! ビチュン! ドバン! ドバン! ドバン!


(続けてローにミドルにジャンピングハイキックへ……)


「ん?」


「ぷぴぃ~、ぷぴぃ~、ぷぴぃ~」


 あー、オーキリーナが大泣きしながら俺の脚にしがみついてるわー。

 大事なカレシをこれ以上いじめないでくれっていうことかぁ……



「オーキー、ちょっと休息しようか」


 オーキーが少しふらつきながらオーキリーナの前に行った。

 そこでしゃがんでオーキリーナと目を合わせる。


「ブヒブヒブヒ……」


「ぷぴぃ~、ぷ~ぴぃ~、ぷぅ~ぴぃ~」


 あー、リーナがオーキーに抱き着いてますます大泣きしちゃってるよー。

 訓練のことは聞いてはいたんだろうけど、俺たちの実際の戦闘訓練はけっこう迫力あるからなー。

 新しく来た猫人族のお嬢さんとかも涙目になってることがあるし。


「ブヒ…… ブヒ……」


 オーキーが優しくオーキリーナの頭を撫でながら説得しているか。

 まあそうだよなー、この戦闘訓練っていわばオーキーの本業だもんなー。



「ぷぴ……」


 しばらくするとようやくオーキリーナも納得したようだ。


 それで俺たちもポーション飲んでからまた戦闘訓練を再開したんだけどさ。

 リーナはずっと涙目ではらはらしながら訓練を見ていたよ。



「よし、休息しよう」


 座り込んだオーキーの下へリーナが走って行った。

 大きなカップに入った水を手渡し、その後はかいがいしくオーキーの汗を拭いている。


「ブヒ」


「ぷー」


「ブヒ!」


「ぴー!」


 オーキーに叱られたリーナが家に戻って、嫌々ながら俺の分の水とタオルを持って来た。

 器とタオルを俺の前に置く。


「ぷいっ」


 あー、そっぽ向かれちゃったわー。


 ん? なんだよこの器! 割れた器の底にほんの少し水が入ってるだけじゃねぇか!

 それにこれタオルじゃなくって雑巾だろうにっ!


「ブヒィッ!」


「ぴぴー!」


 はは、オーキーに叱られたリーナが逃げてっちゃったよ。


「ブ、ブヒブヒ……」


「い、いやかまわんさ、それにしてもお前、愛されてるなぁ」


 またオーキーが真っ赤になった。

 そんなオーキーを家の陰から顔半分だけ出してリーナが見ている。

 どうやらオーキーが本気で怒っていないんでほっとしているようだ。



 猫人の女の子が水を持って来てくれた。

 別の子たちが2人掛かりで俺の汗を拭いてくれている。


「ありがとうな」


「い、いえとんでもございませんタケルさま!」



 それで後日、猫人の女の子たちにそのタオルにサインしてくれって頼まれたんだ。

 タオル地だからちょっと書きにくかったけど、それでもサインしてやったけどな。

 いつも世話になってるし。

 それにしても……


「なあニャイチロー、あの子たちなんで俺のサインなんか欲しがったんだろうな?」


「あにょ、ジョセさまの神域で働いている猫人たちは、タケルーさまや神界の救済派の神々のおかげでかつて救われた恒星系の出身者が多いんですにゃ。

 それも恒星系大統領閣下や国王陛下の娘さんとかお孫さんとか」


「!」


「ですからタケルさまの汗を拭いたサイン入りタオルなど母惑星に持ち帰れば、最高星宝に指定されて大統領宮殿や王宮の宝物庫に収蔵されるのは間違いにゃいでしょうね」


「!!!」


「彼女たちはそんなことしにゃいでしょうけど、もしオークションに出されたらトンデモな値段が……」


「マジかよ!」




 オーキーたちを創造してからの訓練も順調だった。

 3.5次元空間で半年(≒地球時間3日)もすると、俺のレベルもとうとう500に届いたし。

 同時にMPも500を超えて、魔力枯渇鍛錬でも心無しか苦痛が少し減って来てるような気もするし、気絶してる時間も1日半ぐらいになって来てるしな。


 それでオーキーに聞いてみたんだよ、『お礼がしたいんだけど何か欲しいものはあるか』って。


 そしたら、最初は遠慮してたんだけど、どうやら畑を作って作物を育ててみたいそうなんだ。

 銀河のテレビ番組で昔ながらの農業特集とか見て興味を持ったらしい。

 だからサポートの猫人さんたちに頼んで、銀河のいくつかの惑星に注文してもらって農業用土とか肥料とか種とか農機具を取り寄せてもらったんだ。

 カネは立て替えてもらって後で武者家が払うことにして。

 それであのタケルさまのご注文って聞いたら、近隣恒星系の交易恒星船が100隻も押し寄せて来てエラいことになったらしい。


 しかも全員が代金は要らないっていうんだよ。

 もしくは恒星系政府が払ってくれるんだと。

 でも農業用土だけでも1万トンもあったし、他にも結構な量の資材が集まってたから、カネは払わせてくれってニャルーンさんに言って貰ったんだ。

 そしたら、「代金の代わりに『あのタケルさま御用達!』って宣伝していいか」って聞くから、特に気にしないでOKしたんだわ。

 それであっという間に売り上げが100倍になっちまった会社とかあったんだと。


 俺ももう少し銀河宇宙での影響力を考えた方がよさそうだな。

 ムシャラフ恒星系やミランダ恒星系に物品購入窓口を作ってもらおうか……





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