*** 24 オーク族創造 ***
「さ、さすがはタケルさま!
神さまになられたとあって、なんという穏やかなご尊顔に!」
「ま、まるで大賢者さまのような理知的なお顔に!」
「宇宙の真理に到達されたかのようなご境地に!」
(い、いや、別に神さまになったおかげじゃないんだけど……
お前らもキンタマがレベルアップするまで搾り取られたらこうなるぞ……)
「さ、さて、地球で漫画化されたラノベの資料も用意して来たし、そろそろ『神力生命体創造』も試してみるか」
「あにょ、これがタケルさまが仰られていたオーク族にゃんですか」
「そうだ」
「タケルさまはなぜこの種族を創造されるんでしょうか」
「これ、俺の大好きなラノベに出て来るオーク族の族長の絵なんだ」
「どんなお話にゃんでしょうか」
「あのな、ある日本人が神さまの手違いで3歳に若返って異世界に転移させられちゃったんだ。
それも大森林のど真ん中に。
それでまだ体は小さいし、武器もなんにも持ってなかったんで主人公は死にかけるんだよ。
でもそんな主人公をオーク族の族長が見つけてオークの村に連れて帰ってくれるんだ。
そのオーク族の村って100人もいないような小さな貧しい村だったんだけど、どうやら大昔に平原のヒト族と争って大森林の奥地に逃げ込んで出来た村だったそうなんだ。
それで決して豊かな村じゃあなかったんだが、族長は主人公を家族の一員として育ててくれたんだ。
ヒト族とは争ってはいるが、子供に罪は無いって言って。
もちろん主人公は体力でも体格でもオーク族には敵わなかったんだけど、でも主人公は魔法が使えたんだよ。
それで親切な村のみんなの役に立とうと思って一生懸命魔法を練習したんだ。
それで大森林の奥地で魔法を使って木を切って、土魔法で根も掘り起こして、ついでにみんなの家も畑も作ってやったんだ。
それまでのオーク族って完全に狩猟と採集の生活でさ、たまに狩りで獲物は獲れるけど、ほとんど木の実なんかを食べてたんだ。
でも主人公が前世の知識を生かして畑で野生の小麦を栽培し始めたんだよ。
最初は半信半疑だったオークたちも、大いに実った麦畑を見てびっくりしたんだ。
それからは女性や子供もみんな畑を手伝ってくれたんで、ますます収穫は増えたし。
それで主人公は恩人の族長とも相談して、周辺の貧しい小さな村のオークたちも呼んでやって、腹いっぱいメシを喰わせてやったんだ。
おかげで村の人口が500人を超えたんだけど。
でもさ、平原のヒト族がそんな豊かなオーク族の村に襲い掛かって来たんだ。
最初は冒険者たちを使って、次は領軍や国軍も投入して。
まあ単なる武装強盗だよな。
それで主人公は族長経由でオーク族を指揮して、ヒト族が見たことも無い罠や戦法も駆使してヒト族を撃退するんだよ。
そうして魔法も使ってついに辺境伯爵領都や王都も攻め落として、辺境伯や国王を降伏させたんだ。
でも、その後は賠償金だけ払わせて王族と貴族をすってんてんにして、街の略奪はしないで大森林に引き上げたんだ。
略奪をすると遺恨が残ってこれから何百年も争いが続いてしまうからって言って、オーク族を説得してな。
そうしてオーク族の族長から次期族長に指名された主人公は、ヒト族の街との交易も始めてオーク族の村をどんどん大きくしていって、とうとう2万人のオーク族を束ねてオーク国の建国にまで至るんだ。
俺この話が大好きで、小説も漫画も何度も読み返してたんだよ。
あんまり残虐な殺戮シーンが出て来ないんで、フィクションでしか攻撃衝動を発散出来ない病んだ読者たちに敬遠されて続巻停止になっちゃったけど。
このオークのモデルってそのオーク族族長のオーキーなんだ」
「そんなお話もあったんですね……」
「それじゃあ早速『神力生命体創造神法』を行使して、オーキーを召喚してみようか。
種族名オークを定義して、身長は2メートル、体重は130キロで体脂肪率6%のムキムキと……
レベルは今の俺と同じ418で、魔法能力も少しアリにして……
E階梯も俺と同じにしよう。
知能指数は120は有った方がいいな。
俺や他種族との意思疎通は念話でいいけど、同族内言語アリと。
予備知識、一般常識共にアリにして、格闘技知識もアリだな。
んー、同族間での生殖能力はどうするかな。
ん? 待てよ、もし人口を増やせるんだったら、今後の俺の活動の助けになるかもだ。
この空間に畑でも作ってやればいいし、食料ぐらいいくらでも用意してやれるし。
増えすぎたら夫婦1組につき子供はなるべく2人までにしろって言えばいいだろうしな。
それじゃあ同族間生殖能力アリと。
ついでに一夫一婦制種族で浮気はナシと。
まあオーキーの奥さんはオーキーに選んでもらおうか。
よし! 『神力生命体創造』!」
その場を強い光が覆った。
(おー、けっこうな神力を持ってかれたか……)
そうして、光が収まると、その場には身長2メートルでムキムキなオークが立っていたんだ。
オークは自分の手足を見たり、手を握ったり開いたりしていた。
「やあ、俺はタケルという。これからよろしくな」
「ブゴ。(こちらこそよろしくお願い申し上げます創造主さま)」
「お前の名はオーキーとする」
オーキーの体が淡く光った。
「ブゴゴ。(私を創造してくださってありがとうございます創造主さま)」
「俺のことはタケルと呼んでくれ」
「ブヒ。(はい、タケルさま)」
「ところでどうだ体の具合は。
どこか調子の悪いところはあるか?」
オーキーが体を動かし始めた。
(うーん、随分と軽快に動くな。さすがに強そうだ……)
「ブゴ。(まったく不具合はございませんタケルさま)」
「それはよかった。
お前には俺と格闘訓練をしてもらいたい。
その訓練は俺のレベルを上げるためではあるが、お前のレベルも相当に上がるだろうな」
「ブヒ。(仰せのままに)」
「ところでお前、腹減ってないか。
この魔石はお前の食事用に用意したものなんだが、試しに魔力を吸ってみてくれ」
「ブヒ」
魔石を持ったオーキーが魔力吸引を始めた。
「ブキィ―――っ!」
「ど、どうしたオーキーっ!」
「ブヒブヒブヒ……
(あ、あまりにも濃密な魔力が一気に流れ込んで来まして……)」
見ればオーキーの腹が膨らんでいた。
「そ、そうか。これからは魔力を吸うときは少しずつな」
「ブヒ……」
「まあそこの椅子にでも座って少し休んでいろ。
そうだ、茶でも飲むか?」
タケルは収納空間から大きなカップとティーポットを取り出した。
シュガーポットとミルクもある。
「魔力だけだと味気ないだろ、この紅茶も飲んでみろ」
紅茶に口をつけたオーキーの目がまん丸になった。
「ブキィ!(旨いです!)」
「そうか、それはよかった。
それじゃあこれも試してみろ」
タケルが皿に盛ったクッキーを取り出すと、オーキーは1枚をゆっくりと口にした。
「ブキィィィッ!」
「そうか気に入ったか。
それならもっと喰え」
(やっぱり魔力だけじゃあ味気ないよな……)
タケルは食事などのサポートをしてくれている猫人スタッフに頼んで、食事はオーキーの分も作って貰うことにした。
因みにこの3.5次元空間でのタケルのサポートの仕事は、猫人たちに人気がある。
あのタケルーさまの生まれ変わりであるタケルさまのお世話が出来るだけでなく、ちゅ〇ると猫ま〇しぐらがふんだんに置いてあったからであった……
タケルとオーキーは戦闘訓練を始めた。
どうやら同じレベルでも、スピードとテクニックはタケルが上、パワーと防御力はオーキーの方が上のようだ。
2人は壮絶な殴り合い、蹴り合い、グラウンドの戦いを続けていた。
どちらかのHPが10以下になるとそこで訓練は中止され、ポーションを飲むか休息を入れてからまた戦闘が再開される。
万が一いいのが入ってHPがゼロになっても、タケルはエリザベート上級神の加護でその場で光りながら復活し、オーキーは光りながら消えていった。
もちろんすぐにタケルが『神力生命体創造』で復活させる。
「なあオーキー、HPがゼロになってお前が消えたときって、どこにいてどんな感覚なんだ」
「ブヒ。(どこにもいませんし、感覚もまったくありませぬ。ただすぐに復活しているだけであります)」
「お前は自力で消えることは出来るのか?」
「ブ。(試してみます)」
オーキーが消えた。
すぐにタケルが再召喚する。
「どうやら出来るようだな」
「ブヒ」
「これから俺は午前中は銀河知識取得、午後はお前との戦闘訓練、そして夕食後には魔法訓練をして気絶する。
今は気絶している時間は2日ほどになっているが、だからお前にはけっこうな空き時間があるんだ。
その間お前はどうする?
ゆっくり寝ててもいいし、消えていてもいいぞ」
「ブヒ。(生というものは素晴らしいです。出来れば消えずに存在していたいと……)」
「そうか、お前の好きにしろ」
「ブ。(ありがとうございます……)」




