*** 220 魔法教室 ***
その晩、メシを喰いながらバルモス組合長が教えてくれた。
「タケルよ、お前ぇならすぐにも十人長は務まるだろう。
十人長に必要なのはなによりもまず強さで、その次は率先して魔物の群れに突っ込んでいく勇気だ。
お前ぇは今日その両方とも見せてくれた。
もちろん人望も必要だが、お前ぇにはもう舎弟が300人もいるしな。
だがな、百人長に必要なのはそれ以上に救援を要請する勇気なんだよ」
「…………」
「今日ガルゴラ百人長が、追加の魔物が出て来てすぐに救援要請の指笛を吹いただろう。
あれはなかなか出来ることじゃねぇ」
「そうだな……」
「強ぇ奴ほど自分でなんとかしてやろうと思ってその場で踏ん張るのよ。
だがそれで自分に万が一のことがあれば、部下たちは全滅に近い打撃を受ける。
だからガルゴラは救援を要請しつつ隊を下がらせたんだ。
自分や副長たちを殿にしてな」
「確かにそれは別の種類の勇気が要ることだな……」
「お前ぇには当面今日と同じように遊撃救援隊として行動してもらいたい。
ただし、隊員はお前ぇだけの特別遊撃救援隊で、扱いは百人長と同じだ。
いつも俺の横に付いて待機していてくれ。
それが最も戦士たちを死なせねぇ方法だろう」
「わかった」
その日タケルが転移で帰宅すると、子供たちが2足歩行でよちよちと近寄って来た。
まだ幼く、ほとんど猫の形態に近いので後肢が短く、それでも一生懸命2足で歩く姿はコミカルで可愛い。
その手にはオレンジジュースの入った小さなカップを持っていた。
(あー)
「「 パパ、これ少しだけ飲んでくだしゃい♡ 」」
「おう」
タケルがカップのジュースに少しだけ口をつけると、子供たちは残りのジュースを嬉しそうに飲み干した。
そうして、カップを『念動』でテーブルに戻すと、ソファに座るタケルの脚をよじよじと登り始めたのである。
(はは、いつもは自分で身体防御かけて念動魔法で砲弾みたいにすっ飛んで来るのにな。
こんな風に脚をよじ登って来るのは生まれてすぐのころ以来か)
子猫たちはタケルの胸にしがみつくと、その場でごろごろと喉を鳴らし始めた。
タケルが背中や耳の後ろを撫でてやるとその音が大きくなる。
ふと見ればエリザベートとジョセフィーヌもエールのカップを差し出しながら立っていた。
タケルはもちろんそれぞれのカップから少しずつエールを飲むと、ヨメ2人は残りを嬉しそうに飲み干した。
そうしてトーガの襟を開け、タケルにくっつくように左右に座ったのである。
タケルの右上腕はエリザベートの雄大なおっぱいに挟まれ、左上腕はジョセフィーヌの小ぶりなおっぱいに挟まれていた。
(ジョセフィーヌも成長しておっぱいでタケルの腕を挟めるようになったようだ)
エリザベートもジョセフィーヌも子供たちの背中やしっぽを撫でていた。
こうして家族5人は静かだが満ち足りた団欒のときを過ごしていたのである……
(まてよ、いつもの夜の生活は親子丼だったけど、これでエール義兄弟になったんだよな。
っていうことは、エール義姉と義妹とのエッチ、つまり姉妹丼にもなるのか……)
その晩のエッチは、みょーな背徳感に興奮したタケルがハッスルしたために、またタケルのキンタマのレベルは3も上がったそうである。
完全にノックアウトされたエリザベートとジョセフィーヌは、あられもない姿で気絶したように寝ていた。
『ようタケル』
(あ、タケルーさんお久しぶりです)
『さっきの交尾は凄かったなぁ。
娘の方はともかくあのエリザまで気絶させるとはよ』
(はは、つい興奮しちゃいました)
『これでもうエリザも娘も完全にお前ぇの虜だろ。
ベッドの上ならお前が頼めばなんでもしてくれるぞ』
(へへ)
『昼間は魔物相手に存分に戦い、夜はとんでもなく美人のヨメたちを気絶するまで可愛がるか。
或る意味男としての理想の生活だな。
俺も楽しませてもらってるぜ、ありがとうよ』
(いえいえ、そもそも5万年前のタケルーさんの頑張りがあってこその今の俺ですから。
これからもよろしくお願いします)
『こちらこそだ』
(はは、エリザも、昼は子供たちを可愛がり、夜は惚れた男に気絶するまで可愛がってもらっているか。
これも女としての理想の生活だよな。
敵対する上級神共もあらかた刑務所行きになって気苦労も減ったし、天界上層部の信任もとんでもなく厚いし、なによりエリザも笑顔が増えたしよ。
5万年前にはいつも眉間に皺寄せておっかねぇ顔してたからな。
俺も昔の番相手が幸せそうなんで安心したぜ。
こりゃあ俺ももうタケルに全部任せて今の暮らしをゆっくり楽しませてもらおうか。
それにしても大した漢だわ……)
タケルは早朝から救済部門司令部の定例会議に出かけて行ったが、エリザベートとジョセフィーヌが目を覚ましたのは、昼近くになってからだったそうだ。
2人とも自分の体やベッドのあまりの惨状に、頬を赤らめながらクリーンの魔法をかけていたとのことである……
タケルが司令部の会議室に入っていくと、ニャイチローたちが小さなエールカップを持って立っていた。
その後ろにはオーキーが、さらにその後ろにはマリアーヌのアバターまでもエールカップを持って立っている。
タケルは心の中でため息をつくと、全員のカップから少しずつエールを飲んだ。
みんなはにこにこしながら残りのエールを飲み干している。
「あの、タケルさま、オーク戦士たちも舎弟にしてやって頂けませんでしょうか……」
「も、もちろんいいぞ」
「ありがとうございます!」
その日から定例幹部会の度に100人近いオーク戦士たちが本部を訪れ、次々にタケルとエールの儀式を行って舎弟になっていった。
中には感激のあまり泣いているオーク戦士もいる。
タケルは知らなかったのだが、このエールの儀式は銀河認定世界では割と知られたものだったそうだ。
(キミタチ、銀河中で任務に就いているよな……
この儀式のために転移した距離って、全員合計で何百万光年になるんだ?)
『全員合計で約2205万光年です』
(そ、そうか……
それアンドロメダ銀河まで4往復出来るな……)
『ニャイチローとニャジローとニャサブローが、エールの儀式を通じてあのタケル天使さまの舎弟になった』
このことは彼らの母惑星にも伝わり、3人のママたちはまた号泣していたそうだ。
その日は『舎弟の日』として3つの恒星系の祝日になったらしい……
そんなことでいちいち祝日を作ってたら、そのうち1年中祝日になっちゃうぞ……
また、オーク戦士たちは各恒星系を表敬訪問するたびに恒星系大統領を始めとする超VIPたちとエールのカップを交わし、次々とエール義兄弟になっているそうである。
どうやら義兄弟の義兄弟は皆義兄弟ということで、タケル天使さまの又義兄弟になれたことを皆喜んでいるらしい。
因みに、セルジュくんとミサリアちゃんは、天界幼稚園で同級生の年少組さんたちほぼ全員を舎弟にし、『セルジュのアニキ』『ミサリアのアネゴ』と呼ばれているそうである……
ん? 感染症は怖くないのかって?
あー、それは未開原始社会の発想だね。
銀河の認定世界に感染症とかあるわけないでしょ。
たとえそんなもんが残っていたとしても、体内の医療ナノマシンが即座に発見して数分で治療を終わらせているよ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その後の10日間でタケルは3回の遊撃救援を行い、個人キルスコアは3000を超えた。
出撃の無い日はバルモス組合長のいる壁のすぐ裏で、非番の若い戦士たちに乞われて魔法の訓練も施すようになっている。
既に簡単な生活魔法を使える戦士には、まず魔力循環を教え、その後は作ってやった空の魔石への魔力注入を勧めていた。
「あのな、魔力循環はともかく、魔石への魔力注入をやってると、割とすぐに気持悪くなってくるだろ。
それでも無理して続けていると、激痛が走る上に5日ぐらいは気絶したままになるからな。
そんなことになりゃあ、魔物とも戦えないし鍛錬も出来ねぇからよ。
だから気持ちが悪くなった時点で鍛錬は止めろ。
それでも寝る前に毎日続けてれば十分に効果はあるからな」
「「「 はいっ! 」」」
既にある程度の生活魔法を使えている少数の魔法初級者たちには『身体強化』を教えてやった。
「す、すげぇ!
お、俺こんなでけぇ石を持ち上げられるっ!」
「こ、こんな重い石斧を振れるようになるなんて……」
「これがタケルのアニキがあんなに強ぇ理由か……」
まだまだレベルは低いが、結果を出せた者たちを見て初心者たちも熱心に鍛錬をしている。
また、魔臓が動かずに魔法が使えない者たちには、タケルが水月のやや上あたりに手を当てて魔臓を活性化してやっていた。
「うおぉぉぉ―――っ!
お、俺指先から水を出せたぞぉっ!」
「まだそよ風だけど、俺も風を出せるようになったわ……」
「「「 タケルのアニキ、ありがとうございますっ! 」」」
そして……
「ねえねえ、タケルのアニキさん」
(なんだよその呼び方……)
「アタシらもあの洗濯魔法や乾燥魔法を使えるようになりたいんだけどさ。
魔法を教えてくれないかね」
ということで、タケルは戦士村の女性陣にも魔法を教えることになったのである。
この魔法教室は戦士の力の底上げにもなるし、村の生活の改善にも繋がるため、バルモス組合長も大いに喜んでいた。
そして、魔法を使えない女性陣の魔臓活性化では……
水月に手を当てるのは服の上からでも全く問題ないと何度も言っているにも関わらず、魔臓治療の際には未婚の若い少女たちが皆上半身裸になっておっぱいポロリするのである。
それも目をハート形にして頬を赤らめながら……
(マリアーヌ、ジョセ……) 『畏まりました』
ジョセフィーヌは最近日に何度も意識が飛ぶのを不思議に思っているそうだ……




