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*** 196 惑星マーガンサー ***

 


「その奴隷オークションの参加者は?」


『主に各国の王族貴族から委託を受けた奴隷商になります』


「次の集会開催日は」


『3次元時間で2か月後になります』


「ならば準備の時間はそれなりにあるな。

 それでその惑星の種族別構成比と支配地域比率は?」


『人口構成比はヒト族50%、犬人族30%、猫人族20%になります。

 支配地域構成比は犬人族+猫人族居住地域が40%、ヒト族居住地域が60%です。

 数百年前まではヒト族地域も50%ほどだったのですが、寒冷化と農業生産の低下に伴い、森林を伐採して農地を拡大して来た結果そのようになりました。

 同時に伐採した森に住んでいた犬人や猫人を奴隷化してきた模様です。


 これに伴い特に主に犬人族とヒト族の対立が激化いたしました。

 当初は犬人族猫人族の部族集団ごとの構成人数が少なかったために犬人族猫人族たちが押され気味だったのですが、最近では大きな森林地域の有力部族中心に急速に集団化が進み、このままでは大規模な犬人族や猫人族とヒト族の戦争が始まるかもしれません』


「オーキー」


「ブヒッ!」


「AIほこら部隊と共にこの惑星各地の主要な犬人族集落や猫人族集落を廻って協力を取り付けてくれ。

 まずは俺たちが奴隷を解放すること、そのヒト族宗教勢力を叩き潰すこと、森林伐採を止めさせることを伝えて武力衝突を回避するよう説得だ。

 もちろん必要とあれば犬人族の長との戦闘も許可するし、大規模な食糧援助も行ってくれ。

 まあこの辺りは惑星ケンネルやケットの救済と同じようなもんだな。

 さらには解放奴隷の受け入れも要請したい。

 そのための設備供与や食糧援助は無制限だ」


「ブヒブヒッ!」


「マリアーヌ」


『はい』


「この星の救済は時間をかけずに一気に行おうと思う。

 そのために、2000あるヒト族国家を一時的に城壁で隔離したい。

 建設資材は確保出来るか?」


『鉄筋鉄骨は体積ベースで地球3個分、石材は5個分用意してあります』


「そんなにあるんか……」


『タケルさまの救済方針を分析研究した結果、『誰も死なせない救済』を実現するためには、資材も人員も惜しまず使うということが判明いたしましたので、準備にも十分な人員と資源を配しております。

 もちろんその資材も即座に転移させて使用出来る態勢は整っています』


「そうか、さすがだな。

 ヒト族国家を隔離する壁は幅20メートル、高さも20メートル、地下部分10メートルとし、その内部総面積はおおよそ陸地面積の40%になるようにしよう。

 母川回帰性の魚もいるかもしれないから、河川を跨ぐ場合は水路トンネルや水流を通すスリットで対処すること。

 それから、惑星上のすべての奴隷、創世神教関係者と、奴隷商と奴隷売買を認可している王族貴族にロックオンしておいてくれ。

 奴隷はいったん保護施設に収容し、その他犯罪者には収監後に裁判を行う予定だ」


『はい』


「そうした作業のためにも、この惑星マーガンサーにはAI部隊を多めに派遣してくれるか」


『それではAI1個中隊300名とアバター30個軍団300万の派兵を許可していただけますでしょうか』


「もちろん許可する。

 それでも足りなければお前の判断でいくらでも増派して構わん。

 さらにはその新興宗教の神殿5000もロックオンして各種魔法も行使出来るようにしておいてくれ」


『はい』


「ニャサブロー、お前も地球のラノベ読んだろうからわかると思うが、銀河宇宙にゴブリン族とかリザードマン族とかはいるか」


「いませんですにゃ」


「そうか、それじゃあニャジロー、ヒト族をゴブリン族や犬人族、猫人族に変化させる『変化の魔法』のマクロを創っておいてくれ。

 ゴブリン族の身長は80センチ、体色は紫色で体表は鱗、耳はデカくしっぽもリザードマン並みに大きなのをつけてな。

 犬人族や猫人族の身長も80センチとしようか」


「はい!」


「そうそうマリアーヌ、その新興宗教の神殿には創世神の像とかあるのか。

 それとも偶像崇拝禁止の宗教なのか」


『すべての神殿に大きな創世神像がございます』


「それちょっと見せてくれ」


『はい』


 その場に男性神のホログラムが出て来ると、全員が一斉にタケルを見た。


(よりによって俺に似た神像かよ……)


「これはもう完全に潰すしかないな……

 ニャジロー、俺をこの神像の姿に変える変化の魔法マクロも創ってくれ」


「は、はい」


「マリアーヌ、各地の神殿内部やその上空に大きなスクリーンを配置して中央神殿と俺の姿を映せるようにしてくれるか。

 中央神殿には俺が直接出向く」


『畏まりました』


「それでは早速準備に取り掛かろう。

 まずは現在進行中の奴隷狩り部隊を退治して、攫われた犬人と猫人を救う。

 次に森林地域の犬人族をオーク部隊が説得し、猫人族もなるべくまとめて大規模なクニを作らせてくれ。


 クニにはほこらも多数配置し、住宅、病院、学校も建設し、受け入れ準備が整い次第、ヒト族の国にいる奴隷を転移させるように。

 マリアーヌ、詳細鑑定で犬人族や猫人族の奴隷たちの出身地は特定出来るか?」


『可能です』


「ならばなるべく出身地に戻してやってくれ。

 血縁者もいるかもしれないからな」


『はい』


「同時に奴隷商と幹部たちは全員捕獲して、いったん時間停止倉庫に収容しよう。

 その後順次簡易裁判で量刑決定だな。

 まあほとんどが終身刑になるだろうが」


『奴隷所持者の一般ヒト族は如何いたしましょうか』


「そいつらへの処罰は別途行うので、ロックオンで特定しておくだけでいい」

 宗教関係者を含むヒト族制裁決行日は次の宗教集会の日だ」


「「「 はいっ! 」」」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 オーク族族長オーキーは100人ほどのオーク戦士たちを前にして訓示をしていた。


「お前たちにはこれより神聖騎士団を名乗る奴隷狩り連中を退治してもらう。

 タケルさまのご指示は圧倒的に派手に打ち倒せということである。

 もちろんお前たちにはAI族のサポートが付き、『セミ・ゴッドキュア』や『重力魔法』もかけてもらえるので、首を落としたり胴体を爆散させても敵が死ぬことは無い。

 だが絵的にはやや問題があるので、そこはある程度手加減も必要だ」


 何本かの手が上がった。


「なんだ」


「奴隷狩りなどという行為は重大な犯罪です。

 なぜ有無を言わせず犯罪者を転移で捕縛しないのでしょうか」


 オーキーが微笑んだ。

 オークたちが神域学校で法令などを学んでいる成果が出ているようである。


「これより別動隊が森林地帯の犬人族や大型猫人族の集落を巡り、ヒト族との戦争回避を説得して行く。

 もちろんその際には各部族の長との戦闘も行われるだろう。

 その際には、ただ戦闘に勝利するだけでは不十分だというのがタケルさまのお考えだ。

 彼らに、もはやヒト族による奴隷狩りなどは我らが完全に阻止すると示してやらねばならぬ。

 よって、これよりお前たちがヒト族奴隷狩り連中を派手に打ち倒す映像は、森林内の各部族集落にて披露されることになる。

 つまり我らオーク族がヒト族の犯罪行為を阻止することが容易だということを見せてやるわけだ」


 その場のオークたちが頷いている。


「同時に奴隷として捕らえられた犬人族や猫人族を解放する映像も見せてやる。

 その後に森林内の各部族にはAIほこら部隊により膨大な食料が供給され、解放された奴隷たちの保護も依頼することになるわけだ。

 お前たちが数千ほどの奴隷狩り部隊を壊滅させる映像を見せてやれば、多くの犬人族や猫人たちは納得してくれることと思われる。

 要はお前たちに求められる役割とは、お前たちが圧倒的に徹底的にヒト族奴隷狩り部隊を叩きのめせるということを彼らに納得させてやることである。


 そうして犬人族や猫人族を説得して大規模戦闘を回避した後には、既に奴隷としてヒト族に拘束されている種族の解放と保護も始まるだろう。

 同時にタケルさまにより諸悪の根源である創世神教団と王族貴族への懲罰も行われる。

 お前たちの役割は理解出来たか」


「「「 おう! 」」」


「それでは各人AI族のサポートの下、惑星各地に散って犯罪者どもを撲滅せよ!」


「「「 おおおおおおう! 」」」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 オークリーはオーク族戦士501人のうち495番目に創造された男だった。

 一緒に創造された妻との間に2人の子もいる。

 最近ではその子供らも時折2足歩行する姿を見せるようになり、そのたびに妻と2人で手を叩いて賞賛してやっている。

 そうすると子供たちも嬉しそうににっこりと微笑んで誇らしげによちよち歩くのだ。


 また、最近では任務に出かけるときは、妻だけでなく子供らも抱き着いてきて鼻チューをしてくれるようになった。


(鼻チュー:オーク族や豚人族が親愛の情を表す行動の一種。

 鼻同士をくっつけること)


 オークの戦士たちは午前中は戦闘訓練、午後は学校で学び、夕刻には畑にいる家族と合流して農作業を手伝っている。

 その後はやはり家族と共にぬた場の泥の中を転がりまわって楽しむのだ。


 休日には同僚の戦士一家と共にバーベキューをしたり、近場にピクニックに行くこともある。

 また、各人月に1度ほどは神域幼稚園や保育園で他種族の幼児たちに体術を教えることもあった。

 まあ、子供らに自分を叩かせてレベルを上げさせてやっているだけなのだが。

 それでもレベルが上がって喜んだ幼児たちが『オークのおじしゃんあいがとー♪』と微笑みかけてくれるのだ。

 最初のうちは『オークのお兄さんな』と何度も訂正していたのだが、どうやら幼児たちにとって子供のいる大人はすべて『おじしゃん』なのだと気づいて最近では気にしていない。



 そんな幸せの絶頂にいるオークリーも、タケル神さまに創造していただいてすぐのころには疑問も抱いていた。

 我らはなぜ戦闘訓練などするのだろう。

 尊敬するオーキー族長によれば、今後タケル神さまが銀河の未認定世界を救済される際にその戦力となるためとのことだったが……


 なぜ救済のために戦わねばならないのだろうか?


 その疑問は惑星ケンネルや他の犬人族世界に派遣された際に少しは解けた。

 原始犬人族の世界では、食料を配布するにせよ農業指導をするにせよ、強者でなければ誰も従ってはくれないのだ。


 また、原始ヒト族の世界で実際にヒト族の軍勢とも戦ってみた。

 もちろん自身は全く傷つかずに敵を圧倒出来たが、その戦後処理には大いに驚かされたのだ。

 自分たちが勝利した後には、虐げられていた農民や奴隷たちの生活が劇的に改善していくのである。

 農民や農奴たちに笑顔が溢れていくようになるのだ。


 さらにその様子が銀河連盟報道部によって配信されると、驚くべきことに銀河全域24京9990兆人がこれを見て賞賛しているというのである。

 銀河3000万認定世界のうち、豚人族の種族会会長もタケルさまの神域にあるオーク族の村を訪れ、涙を流しながら我らの活躍を絶賛してくれたのだ。


 どうやら本当に我らはタケル神さまだけではなく、銀河宇宙のためにも役に立っているらしい。


 そう思ったオーク戦士たちは、前にも増して訓練に力を入れるようになっていたのである……





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