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*** 190 総兵力3億 ***

 


「あの、タケル王陛下」


「ん? なんだ」


「よろしければ私共の昼餐会に御列席願えないかと思いまして……」


「はは、そういえば有利な講和条件を引き出すために、まず俺を美食と美酒と美女で持成そうとしていたな。

 だがもう講和は成ったのだから必要無いんじゃないか?」


「い、いえ、タケル王陛下ほどのお力をお持ちの方であれば、今後とも親しいお付き合いをお願い申し上げたいと考えまして」


「そうか……

 だが俺はある理由で美食も美酒も美女も受けられないのだ」


「それはどのようなご理由なのでございましょうか。

 もちろん私共には陛下を害する意図はございませぬが」


「いや、そのようなことを心配しているわけではないが、理由は聞かないでもらえるとありがたい。

 だがそうだな、せっかくの招待だ。

 料理も酒も女も見るだけでいいということならば、一度だけ参加させてもらおうか」


「あ、ありがとうございまする」


「その際には現在蟄居謹慎中の王弟3人と王子3人、加えて上級公爵家当主60名も参加させて構わんぞ」


「「「 !!!!!! 」」」


「そ、そのようなことまでご存じであらせられましたか……」


「また、明日以降、今回の講和についてテーバイの民すべてに対し念話で説明を行う」


「そ、そのようなこと、我らが行いますのに」


「いや文字を読めない者も多いだろうからな。

 近衛兵に508のポリス、3720万の民すべての前で説明させる気か?

 そんなものタケルポリスの念話一斉放送ならば30分で終わるだろうに」


「は……」


「それでは俺はこれで帰還する」


「本日は寛大なるご処置、誠にありがとうございました……」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 その日の夜、テーバイ譜代ポリス連合軍総司令官たちは、王城内の一室でタケルポリス法令集の読み合わせをしていた。


「ふむぅ、この基本的人権という概念、読めば読むほどに民を大切にしたものだという事がわかるの」


「行動の自由、住居移動の自由、職業選択の自由、言論の自由、表現の自由……

 どれも初めて聞くものでありますが、タケルポリスの民はここまで守られているのですね……」


「しかも不敬罪も禁止され、民に対する罰はたとえ王族貴族であってもタケルポリスの裁判によらねば与えることは出来んのか」


「ひとつ気になることがあります」


「なにか」


「この『法』によれば、農民は王族貴族に作物を『献上しない』自由も有しているのではないでしょうか」


「そうかもしれぬの……」


「また、この『他人に暴力を振るうことは許されない』『暴力を匂わす脅迫によって他者の財を奪うことも許されない』『そうした脅迫や強盗行為を配下に命じることも許されない』という法ですが、これには収穫期後の略奪遠征も含まれるのでしょうか」


「むう、タケル陛下の秘書官殿にお聞きしたいことが多くあるの」


「ですがもう外は夜です。

 明日の朝お聞きさせていただきましょうか」



『それには及びません』


「「「 !!! 」」」


『こちらはタケルさまの秘書官マリアーヌです。

 あなた方からの連絡やご質問についてはいつ何時でもお答えするようタケルさまより言いつかっております。

 万が一わたくしが忙しくとも、わたくしの部下(実際は娘)がお答えいたします。

 それでまずは『収穫物を献上しない自由』についてでしたね」


「あ、ありがとうございます」


『もちろん民の自由権の中には『献上しない自由』も含まれます。

 これに対して王族貴族が罰を与えたり罰を与えると脅迫して献上を強要することは、暴力及び暴力を匂わせる強盗行為となり、その兵や兵に命じてそのような行為を行わせた王族貴族も併せて罰せられ、牢に入れられることになるでしょう』


「そ、それでは外様ポリスはこれよりほとんど献上を行わなくなると考えられます。

 王族や貴族はこれからどうやって生きていくのでしょうか……」


『それは彼ら自身が考えることですね。

 まあ一番簡単なのは自分のポリス近郊で農業を始めることでしょう』


「か、彼らにそのようなことが出来るのでしょうか……」


『明日テーバイグループすべての方々に念話一斉放送でご説明いたしますが、すべてのポリス近郊にやや小型のタケルポリスの支城が配置されます』


「「「 !!!! 」」」


「ご、508ある全てのポリス近郊に支城を配置されると仰せですか!」


『はい』


「「「 ………… 」」」


『それらのポリスには学校という教場が置かれます。

 そこでは読み書き計算に加えて農業の行い方も教えますので、王族貴族の方々もそのうちに農業が出来るようになるでしょう。

 また、その学校で真面目に学習すれば、食べて行けるだけの銅貨も褒賞として支払われます。

 それ以外にも井戸堀りや農業用灌漑用水路、溜池の掘削などの仕事の斡旋も行われ、賃金も支払われますので食べて行くには十分でしょう』


((( 王族や上位貴族に井戸掘りや溜池掘りなどさせるのか…… )))



「あ、あの、それでは兵に扶持麦を支払うことも出来なくなるのでは……」


『略奪遠征も強盗行為として禁止されますので、もはや軍が有る必要は無いのでは?』


「「「 !!!!!! 」」」


「そ、それでは他の有力ポリスが攻め込んで来た時に迎え撃てません!」


『現在この星の5つの大陸上にある有力ポリス300の近郊には全てタケルポリスの城を配備いたしましたので他ポリスからの侵攻は無くなりました』


「「「 !!!!!!!! 」」」


『因みに、スペアンポリスとローマンポリスはタケルポリスに攻め込まんとして大軍勢を集結させているところですが、これもテーバイと同じくすぐに全軍を捕獲出来ることでしょう。

 またエジプタポリス、ミケナイポリスは既に全軍を失っており、王族や上位貴族は周辺の親藩ポリスなどに逃げ出していますので事実上滅びました。

 今後は亡命先のポリスも滅ぼしていく予定です。

 さらにペルシアポリスは、全ての城壁を失って降伏して来ましたが、降伏条件交渉の場でタケルポリスの使者を捕らえて人質にしようとしたために、王族と上位貴族を全員捕獲した上で現在本国ポリスの王宮と貴族街を更地に変えているところです』


「「「 …………………… 」」」



 因みに譜代ポリスに逃げていたエジプタとミケナイの王族たちは、すべての建物と城壁が無くなって更地になってしまったポリス跡地で広場恐怖症(アゴラフォビア)を発症してエラいことになっているらしい。

 数百人がダンゴムシのように丸くなり、くっついて塊になって暮らしているそうだ。



『また、現在この星の5つの大陸上にある約1万ほどのポリスはすべて魔法で監視しています。

 ですから、たとえ中小ポリスがテーバイグループに略奪侵攻を企てたとしても、全軍をすぐに捕獲出来ますのでご安心ください』


「こ、この世界5つの大陸を全て平定されると仰せですか……」


『実はこの星と同じように戦乱の絶えない星は全部で約2000万あります』


「そ、そんなに……」


『そのうち特に危険度の高い戦乱世界800万については、タケルさまは既に平定を終えていらっしゃいますよ?』


「「「 !!!!!!!!!!!!!! 」」」


『残るはあと1200万ですね。

 その中にはこの星も含まれます』


「と、いうことはタケル陛下やその配下の方々は星を渡るお力をお持ちだと……」


『もちろんです。

 高度な転移魔法を使えば星を渡ることも容易ですので。

 因みにタケルさまのご家族は夜空に光る星のうちの1つの近くにお住まいですが、タケルさまは毎日ご自宅に帰られてご家族と共に食事を取っておられます』


「あ、あの!

 タケル王陛下のご配下にはどれほどの将兵がおられるのでしょうか!」


『現在は約3億です』

(含むマリアーヌの娘たち。

 ほとんど最盛期のバルタン星人並みの総戦力である。ふぉっふぉっふぉ)


「「「 !!!!!!!!!!!!!! 」」」



「そ、それほどまでのお方さま相手に我らは戦を仕掛けていたというのか……」


『まあ知らなかったので仕方がありませんが、これからはあまりあのお方さまを怒らせない方がよろしいでしょうね。

 あの方が本気になれば、508か所のテーバイすべてのポリスもお一人で5分もかからず殲滅出来ますので。

 しかもその地はほとんど人の住めない土地になりますし』


「「「 …………………… 」」」


『ということでですね、王族も貴族も兵も農業もしくは農業のための工事などに従事されれば、もはや略奪などに頼らずとも全てのヒトが飢えずに済むようになるでしょう。

 そのような状態こそタケルさまが目指しておられるものなのです』


「「「 ……………………………… 」」」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 翌日。


『テーバイポリスグループのすべての皆さま、こちらはタケルポリスです』


「な、なんだ!

 今頭の中に声が聞こえて来たぞ!」


『これは念話一斉放送と申しまして、テーバイグループ3720万人の方々すべての頭の中に話しかけさせていただいています。

 タケルポリスは15日前、テーバイポリス国王に対して友好と交易を求める親書を送りました。

 にも拘わらずテーバイは返書も返さず、400万もの大軍を集めてタケルポリスに対し略奪を目論んだのです。

 タケルポリスはこの攻撃を一蹴して400万の軍勢すべてを捕獲し、その上でこれ以上の敵対行為を抑止するために、テーバイ本国の第4城門と第3城門を破壊いたしました。


「「「 !!!!!!! 」」」


『その結果、テーバイ軍はタケルポリスに使者を派遣し、降伏を前提とした停戦・講和交渉を求めて来たのです』



 譜代ポリスで謹慎中の王族、上位貴族はこの念話放送を聞いて歯軋りしていた。


(こ、これではテーバイが敗北したことがすべての貴族と民にバレてしまうではないか!)


(わ、我がテーバイ王族や上級公爵家の権威が損なわれてしまうぞ!)


 いや、大敗北した段階で権威も何も無くなってるんだよ?

 ったく実力も知能も無い者ほど『権威』とかいうもんを大切にするんだねぇ……



『その結果、我がタケルポリスのタケル王は寛大にもテーバイの罪を許し、昨日降伏・講和条約が締結されました。

 降伏・講和の条件は、今後テーバイグループすべてのポリスがその司法権限をタケルポリスに譲り渡すというものです。

 これにより、今後テーバイグループ内ではタケルポリスの法が適用されることになります。

 法の具体的な内容を記した冊子は、現在テーバイ本国からすべての傘下ポリスの王宛てに送付されているところです。

 特に各ポリスの為政者の方々は、この法冊子を熟読くださいませ。


 それではこれより、このタケルポリス法の中でも最も重要なものをお伝えさせていただきます。

 それはまず『暴力の禁止』であります。

 いかなる理由があろうとも、他人に対して武装非武装を問わず暴力を為すことは禁じられました。

 これを行おうとしただけでも未遂罪として罰せられます。

 この法より派生して『暴力を匂わす脅迫をもって他人を従わせようとする行為』もそれを試みようとすることも禁じられます。

 さらに、『部下や配下などに命じて暴力を振るわせたり脅迫を行わせる行為』も禁じられていました。

 これを『教唆』行為と呼びますが、この教唆行為を行った方も、実際に暴力を振るおうとしたり脅迫を行おうとした方と同等の処罰を受けます。


 もちろん盗みや詐欺も禁止されますが、その他皆さまの今後の生活に影響が大きい法としては『不敬罪の廃止』があります。

 今後、王族家や貴族家の方々は、平民や軍人に対して『不敬があった』という理由で処罰を行うことは禁止されました。


 タケルポリスの法についてご質問のある方につきましては、現在508か所のテーバイグループすべてのポリス近郊にタケルポリスの支城が配備されましたので、ご質問やご要望はこの支城の入り口付近に常駐する法執行官にお伝えください。


 それではこれより、譜代ポリスと外様ポリスの方々に個別連絡を行わせていただきます。

 ご清聴ありがとうございました』





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