*** 19 銀河連盟大学卒業 ***
次は社会学か。
いろんな惑星、種族の実例がたくさんあって面白いわー。
おーおー、やっぱりモデルは微分方程式だらけだわー♪」
(にゃんかさらに楽しそうに読んでるにゃ……)
(あー、遂にダークマター物理学まで出て来たか。
ダークマターにもちゃんと元素ってあるんだな。
聞いたことも無い化合物も山ほどあるじゃん。
なになに、ダークマターは重力相互作用よりダークエネルギーによる反発力の方が大きいから、滅多に星を形成しないのか。
そりゃ幸いだったよな。
ダークマター恒星の超新星爆発とか、ダークマターブラックホールとかあったらヤバすぎるもんなぁ。
はは、化学のテキストは高分子化合物の設計と製造だって。
これってどんな化合物でも設計図通りに合成出来るってぇことか。
地球の化学者に見せたら泣いて喜ぶな。
ははは、立方晶窒化炭素の製法まで載ってるぞ。
お、今度は重層次元物理学か。
へー、次元が変わるとこんな現象まで起きるんだな。
その現象の理論的解析まで出て来るし。
さらに相互作用物理学かよ。
さすがは銀河宇宙の学校教材だわ。
次は魔法学か。
これはまあニャサブローにけっこう教えてもらってたから簡単だな。
でも魔法だけじゃあなくって、神さまにしか使用を許されていない神法ってぇもんもけっこうあるな。
そのうちエリザベートさまにお願いしたら使えるようになれるかもしらん……)
「あにょ、一通りテキストもお読みににゃったようですにょで、確認テストをされてみますか?」
「そうだな、試しにやってみるか」
(銀河連盟大学付属中等学校の卒業試験に合格しちゃったにゃ……
それじゃあ次は連盟大学付属高等学校の入学試験に……
そして1年後(地球時間では6日後)。
(ああああー、とうとう高等学校の卒業試験と銀河連盟大学総合学部の入学試験にも合格しちゃったにゃよー。
総合学部は連盟大学でも最難関にゃのに……
ボクやニャイチローやニャジローも飛び級で連盟大学に入れたけど……
それで無事卒業も出来たから天使見習いにしてもらえたんにゃけど、このタケルさま、タケルーさまの生まれ変わりでにゃくっても、自力で天使見習いにはにゃれたんだ……
それも延べ時間たった3年間の勉強で……)
そしてさらに3.5次元空間で1年間の勉強とテストの後……
「タケルさま、今日銀河連盟大学からこの通知が送られて来ましたにゃ……」
「ん? なんだこれ?
なになに、銀河連盟大学総合学部卒業証書。
なにコレ?」
「おめでとうございますにゃ。
タケルさまは見事に銀河連盟大学の卒業資格を取得されましたですにゃ……
しかも最優等の成績で……」
「えっ、あのテストって模擬テストじゃなかったの!」
「あの通信教育マシンは銀河連盟大学とその付属高等学校、中等学校、初等学校直結のマシンですにゃ。
ですから、あのテストは全て本物の入学テストや卒業資格テストだったんですにゃよ……」
「げげげげげ……」
「本当に凄いです、おめでとうございます……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
魔法の講義も実技も本格化して来ていた。
「ところでニャジロー、おかげで俺も魔法レベル400にまでなれたけどさ、やっぱり最近レベルの上がり方が相当鈍くなってきたと思うんだよ」
「まあそれは仕方の無いことでもありますにゃ」
「でもほらMPがゼロになるまで頑張ると、その分MPの上昇が早まるんだろ。
だから、ここらでそろそろMPがゼロになるまで魔法使って鍛錬してみたらどうかな」
「…………」
「ニャジローは反対なのか?」
「あにょ、怖いんですにゃよ……」
「怖い?」
「実はボクたち猫人族はMPがゼロににゃってもそれほど苦しくにゃいんです。
せいぜい少し吐き気がして寝てしまうぐらいで。
そにょ代わりにMPをゼロにしてもあまりMP総量は増えないし魔法力も上がらにゃいんですにゃ」
「そうなんだ」
「ですから安全な環境で鍛錬の時間が取れるひとなら、それなりにMPが上がって魔法力も伸ばせます。
でも犬人族はMPがゼロににゃると相当に苦しみます。
胃の中が空っぽににゃって、体もかにゃり痛むそうです。
その代わりに100回気絶するとMPが1ぐらい増えるようにゃんですよ。
でもけっこう辛いにょで魔法鍛錬を続けられる人は少ないそうにゃんです。
まあ元々身体能力はかにゃりある種族にゃので、どちらかというとその能力を伸ばす方向に行くようにゃんですにゃ」
「なるほど」
「でもヒト族はMPがゼロににゃるとものすごく苦しみます。
胃が空っぽににゃるのはもちろん、全身に激痛が走って気絶するそうにゃんです。
MP枯渇で気絶するというより激痛で気絶するようですね」
「そ、そうなんだ……」
「その代わり、ヒト族の方はMPをゼロにするとほぼ確実にMPが0.1上がるそうにゃんですにゃ……
でもあまりの苦痛がトラウマになって、魔法鍛錬を止めてしまう方がほとんどにゃんです。
まあ種族特性と言ってしまえばそれまでにゃんですけど。
だからヒト族の方で魔法レベルが高い方はほとんどいらっしゃらにゃいんですよ。
ボクはタケルさまの魔法訓練担当にゃので、タケルさまが魔法訓練を忌避されるようになるかもしれない方法は怖いんですにゃ……」
「そうか……
お前がそう言うんなら俺ももう少し考えてみるよ」
「勝手なことを言ってすみませんでしたにゃ……」
「いや気にするな。
そういうことを考えるのもお前の仕事のうちだろうからな」
「ありがとうございますにゃ……」
「そういえば、ニャイチローって今の銀河世界では最高峰に近いレベルなんだろ」
「まあ天使見習いの身としてはそうですけど……
でも優に数千万年の御寿命を持つ上位の神さまの中にはレベル500台の方もそれなりにいらっしゃいますにゃ」
「でもさ、レベルが遥かに上の者と戦うとレベルアップが早いんだろ。
ということは、このまま鍛錬を続けて俺のレベルがニャイチローのレベルに近づいて行ったら、俺のレベルアップも相当に鈍化するんだよな」
「はいですにゃ」
「ということは、平常時レベルが1200もあったタケルーさんっていったいどうやってそこまでレベルを上げられたんだ?」
「それは今の銀河宇宙でも謎とされているんですけど……
でも一つヒントになるのが『神力生命体創造』の神法にゃんですにゃ」
「?」
「魔法レベルがある程度以上になると、神力と神法によって神力生命体を生み出すことが出来るようになるそうなんですにゃよ。
この神力生命体のレベルは生み出した当人と同等のレベルにまで出来るんです。
もちろんこれは生命創造という神さまのお力も無いと無理にゃんですけど。
噂ではタケルーさまはエリザベートさまにこの能力を授けていただいて、常に自分と同等のレベルの神力生命体と戦い続けられたことで、そのレベルを銀河史上最高の1200まで上げられたのではにゃいかと言われておりますにゃ」
「そうだったんだ……
あ、ところでその神法にもレベルってあるのか?」
「神法のレベルは魔法レベルに比例しますにゃ。
ですから魔法レベルを上げれば神法レベルも上がりますにゃよ。
単に行使が神さまに限定されているだけにゃんですにゃ」
「なるほど……」
それで俺、地球に帰ってからタケルーさんの記憶に聞いてみたんだよ。
(すいませんタケルーさんの記憶さん、今少しよろしいでしょうか)
『おういいぞ、それにしてもその呼び方面倒臭ぇだろ。
フツーにタケルーさんでいいぞ』
(は、はい。
あの、まずはレベル上げについてなんですけど、タケルーさんの総合レベルは1300もあったんですよね)
『おう、すげぇだろ』
(それってひょっとしてエリザベートさまに頼んで、神力生命体創造の神法を授けてもらったからですか?)
『はは、やっぱりバレてたか。
そうだ、あの能力さえあれば自分と同じレベルの神力生命体を創造・召喚出来るからな。
だから極秘で授けて貰ってたんだわ。
レベルが遥かに上の奴と戦ってもレベルアップは早いが、レベルが全く同じ奴と死闘を演じてもレベルアップはそれなりに早いんだぜ。
だからお前もレベル500が近づいたらエリザに頼んでみたらどうだ』
(そうしてみますね。
あと、俺の魔法能力の師匠であるニャジローが言ったんですけど、MPが枯渇するまで魔法を使って気絶すると魔法能力の上昇が早いそうなんです。
でも、ヒト族がMPを枯渇させると胃の中のモノを全部吐き出すだけじゃあなくって、ものすごい激痛があるそうで。
だからヒト族がそんなことをすると、それがトラウマになって魔法の鍛錬が出来なくなってしまうことがあるそうなんです。
それが怖くてニャジローは俺がMPをゼロにするのを躊躇っているんですよ。
でもタケルーさんは魔法力が1350もあったんですよね。
それはやはりMPが枯渇することを繰り返していたからですか?」
『ああ、確かに最初にMPを枯渇させたときは地獄の苦しみだったわ。
3日ぐらい気絶したままだったしな。
ただよ、それでほとんどのヒト族はトラウマが出来て魔法鍛錬を止めちまうって聞いてたもんでな。
そんな根性無し共と同じように鍛錬止めてなるものかって意地になっちまったんだ。
それで根性出しまくって吐きまくって激痛に耐えてたのよ。
そしたらさ、そんなことを500回ばかり繰り返しているうちに、『苦痛耐性』っていうスキルが生えて来たんだ。
あと『状態異常耐性』っていうもんも』
(!!!)
『どうやら俺の体内の特製ピコマシンが、俺の体を苦痛に適応するよう作り変えていってくれたらしいんだ。
だからそれからはどんどん楽になっていったんだぜ。
まあ気絶はするけどな。
そうなったらもうシメタもんだ。
なにしろ気持ちよく気絶して寝るだけで魔法能力が上がっていくからな』
(そうだったんですか……
教えて下さってありがとうございます)
『礼には及ばねぇ。
なにしろお前は俺の生まれ変わりだからな』
「は、はい……」