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*** 183 念話一斉放送 ***

 


「王族共と貴族共はよく聞け。

 俺は当初、タケルポリスの王としてアテナイの王に友好と交易を求める書簡を送った。

 だが、この字も碌に読めない阿呆王は、内容を確認もせず無視した。

 阿呆すぎて字も読めないなら、読める奴に聞けばいいものをよ。

 さらに無視しただけでなく、次は王子を名乗る者が一方的にタケルポリスに攻撃を仕掛けてきた」


 国王がかろうじて震える声を出した。


「あ、あれは下級王子が勝手にやったことであり……」


「莫迦野郎っ!」


「うひぃっ!」


「王子であり軍人でもある野郎が為した不始末はすべて王の責任だろうがぁっ!」


「うひひぃっ!」


「しかもお前は王子が自爆しただけなのにも拘わらず、メンツを潰されたとして軍にタケルポリスに対して総攻撃をするよう命じた。

 まあ、翌日には忘れていたようだがな。

 ったく度し難い阿呆王だ!」


「「「 ………… 」」」


 もちろんその場のほとんどの者がそんな勅令が出たこと自体を忘れていた。



「さらに王への書簡に書いてあった通りにタケルポリスがアテナイ南方300メートルに達すると、今度は総攻撃の布陣を取った。

 それでも俺は戦ではなく交渉を行おうと少数の兵を率いて対峙したのだ。

 だが、その俺に対して、またもアテナイは一方的に攻撃を仕掛けてきた。

 さらには遊撃軍3万もタケルポリス内で略奪を働くために武装して侵入してきたのだ!


 ことここに至って、俺は自衛のためにアテナイ軍を無力化することを決定した。

 結果、略奪軍と遊撃軍、合わせて13万を殲滅したが、このままでは大城壁に守られたアテナイ王族は何度でも攻撃を仕掛けて来るはずだ。

 停戦の使者も和睦の使者も降伏の使者も来なかったしな。


 そこで俺は一方的に攻撃された報復として、王族を守るアテナイの大城壁を魔法で破壊することにした。

 まさか俺もアテナイ自慢の3枚の城壁をたった1時間で破壊出来るとは思っていなかったがな」


「「「 …………………… 」」」


「傲慢かつ無能なアテナイは、ここに至ってようやくタケルポリスに停戦協議のための交渉団を送ってきた。

 結果、今日のこの場所が停戦交渉の場となったわけだ。

 つまりお前たちは戦で大敗北を喫した後になって、勝利国であるタケルポリスに停戦を申し入れて来たわけだ。

 そんなもの誰が見たって実質的な降伏宣言だろうに!」


((( ……あぅ…… )))


「俺はその時点では停戦しても構わないと思っていた。

 それどころか賠償金も免除してやる気になっていた」


((( ……そ、そうだったのか…… )))


「だが、その俺を迎えたのは武者隠しにいる武装兵100と隠し穴に潜む暗殺兵30だった。

 そこで震えている王太后は、暗殺兵に対し吹き矢の毒は即死毒ではなく痺れ毒を使うよう指示を出している。

 そして痺れ毒で動けぬようになった俺を王太后自らが切り刻んでやると息巻いていたのだ」


(な、なぜそれを知っている!)


「これが隠れていた近衛兵が持っていた剣と暗殺兵の吹き矢筒だ」


 タケルの前方上空に100振りの剣と30本の吹き矢筒が浮かんだ。


「「「 !!! 」」」



「なあおい、そこに這い蹲っている王太后とかいうババアよ。

 なんでオマエラはそこまで愚かで傲慢なんだ?」


 王太后が床に頭を押し付けられたまま声を絞り出した。


「ご、傲慢なのは貴様の方じゃ!

 4000年の歴史を誇る我がアテナイに対し、新興のポリスが逆らうとは!」


「なあ、歴史が長い国はそれだけエラいと言いたいんか?」


「あ、当たり前じゃ!

 歴史が長いということは、それだけその一族が高貴で優秀だったことの証であろうっ!

 お前のような新参下賤なるものは、我がアテナイを盟主と仰ぐ傘下60のポリスの総兵力を結集して必ずや滅ぼしてくれようぞ!」


「あー、それはもう無理だな」


「な、なにっ」


「アテナイ傘下の60のポリスの横には、ここアテナイと同じようにタケルポリスの分城を派遣してある」


「「「 !!! 」」」


「ろ、60もの動く城を持っているというのか!」


「いやそれだけじゃあない。

 この大地には全部で約1万のポリスがあるが、そのすべてのポリスの横には俺のタケルポリス城を派遣するだろう」


「「「 !!!!!! 」」」


「お前は有力ポリス30の王族を集めて茶会を開き、いい気になっていただろう。

 その30のポリスの王は自領近傍に出現したタケルポリスを見て、ここアテナイに援軍要請の使者を出したがな。

 同じくアテナイの横にタケルポリスがあり、城壁がすべて崩されていることを知って、使者はすごすごと帰って行ってるぞ」


「なんだと……

 我が大城壁が破壊されたのを各国の使者に見られてしまったというのか!」


「お前どこまで見栄張りなんだよ。

 こんだけ破壊されたアテナイを隠し通せるわけないだろうに。

 やっぱお前も頭悪いわ」


「ぐぎぎぎぎ……」


「その中でもあのスパルタの王太后は優秀だったな。

 スパルタの横にもタケルポリスが出現したと聞いてすぐさま自国に戻り、王に命じてタケルポリスとの友好と交易の条約に調印していたぞ。

 おかげでスパルタの城壁はそのままだ」


「ぬがががが……」


「おかげでスパルタはタケルポリスから安くて旨い麦をいくらでも買えるようになった。

 お前らの畑が貧弱なせいで、アテナイでは麦1斗が銀貨1枚もするだろう。

 タケルポリスでは銀貨1枚で麦1石が買える」


「「「 !!! 」」」


「だからタケルポリスと交易してりゃあ、同じカネで10倍の麦が買えたんだぞ。

 そうすりゃあもう他のポリスに略奪軍を送る必要も無くなるだろうによ」


((( ………… )))


「それを字も読めねぇ莫迦王が無視した上に総攻撃命令まで出し、しかも停戦協議の場でこの俺を暗殺しようとしやがって……

 もう一度聞く。

 お前らはどうしてそう傲慢なんだ?」


「だから言っておろう!

 4000の歴史を誇るアテナイ一族に新興の蛮族ポリスが逆らうことこそ傲慢の極みである!」


「そうかそうか、歴史の長いポリスの方が偉いから敬意を払えと言いたいんだな」


「あ、当たり前であろう!」


「あのな、確かに俺はタケル王国の初代王だけどな。

 俺の父親はムシャラフ王朝の王子なんだよ。

 母親はミランダ王朝の王女だ」


「「「 !!! 」」」


「それでな、ムシャラフ王朝の歴史は8000万年あるんだ」


「「 !!! 」」


 王太后と女官長は驚いていたが、その他の全員の頭の上には『?』マークが大量に出ていた。


(やっぱ莫迦だわこいつら。

 威張り散らす前にせめて読み書き計算ぐらい覚えろよ……)


「このババアはアテナイの歴史は4000年もあるのだから敬えとかホザいていたがな。

 その4000年の倍が8000年だ。

 さらにその1万倍が8000万年だ」


「「「 !!!!! 」」」


「さらにミランダ王朝の歴史は6000万年だ。

 つまりはアテナイの1万5000倍だ。

 俺はそのアテナイの何万倍もの歴史を持つ両王朝の王から、次の次の王になってくれと頼まれたが、それを丁重に断って自分で国を興してそこの王になったわけだ」


「「「 !!!!!!! 」」」


「もしもお前の言うように歴史の長い国の王族ほどエラいのが本当ならば、お前が俺の前で額を床に擦り付けて敬意を表しているのは当然だな」


「あぎぎぎぎぎぎぎ……」


 

「さて、莫迦共に説教するのはこれぐらいにして、戦勝国の王としてお前ら敗戦国アテナイに沙汰を申し渡す。

 まずは王族と貴族は全員平民に落とす」


「「「 !!!!! 」」」


「もちろん今後は王室費も貴族年金の支給も無い。

 自分の食い扶持は自分で働いて得るように。

 さらにその財産も全て没収し、その財産は俺が保護したアテナイの奴隷たちの食費や生活費に充てる」


 王が喚いた。


「降伏します!

 降伏致しますのでどうかそればかりはお許しをっ!」


「遅ぇよ。

 降伏するんならせめて略奪軍が全滅した時点でしろや」


「そこをなんとか!」


「仮にお前たちが他所のポリスを攻め、そこの軍を全滅させたとしようか。

 それだけでなく城壁も破壊して王城に迫ったとしよう。

 そのときにようやく相手が停戦協議を申し入れて来たと思ったら、その停戦協議の場で戦勝国の王であるお前を暗殺しようとしたんだ。

 お前らがそうした立場だったとしたらどうする?」


「そ、それは……」


「もちろん敗戦国の王族や上位貴族は一族全員縛り首だろ?

 今までだってそうして来たんだろうし」


「「「 !!!!!!!! 」」」


「それじゃあ平民に落とされる代わりに縛り首を選ぶのか?」


「あひぃぃぃぃぃ―――っ!」


「縛り首を希望する者は申し出ろ。

 それ以外の者は俺の温情により平民落ちで許してやる。

 また、アテナイの城や貴族邸はすべて魔法で破壊してこの地を畑に変える」


「「「 !!!!!! 」」」


「今後、お前たちを含むアテナイの平民は、この地で農業に勤しみ、自分の食い扶持は自分で育てろ」


「「「 ………… 」」」


「つまり、今日この瞬間をもってアテナイは滅び、タケルポリスの地になったということだ。

 今後の統治方針は、間もなく念話一斉放送によって説明する」


 タケルが手を挙げると、空中にあった毒吹き矢が落ちて来て王族たちの尻に突き刺さった。


「「「 はぅぁぁぁっ! 」」」


 特に王と王太后の尻には10本近い矢が刺さり、ハリネズミのようになっている。



「お前たちはこれより旧大城門があった場所に転移させる。

 その目でアテナイが滅びるのを見ていろ!」


 その場の全員が宙に浮き、破壊しつくされた城門があった辺りの上空10メートルに転移させられた。

(もちろん平民3人は解放されて大城壁外にいる)


「「「 !!!!!!! 」」」


 尻に麻痺毒を打たれた王族たちも口からヨダレを垂らしながら浮いていた……




『アテナイの皆さまにお知らせいたします』


「な、なんだ!

 頭の中に声が聞こえて来たぞ!」


『こちらはタケルポリスです。

 ただいまアテナイの皆さま全員に一斉念話放送を行っています。

 アテナイの王族と貴族は友好と交易を求めたタケルポリスに対し、一方的に攻撃を仕掛けてきましたが、タケルポリス軍によって略奪軍と遊撃軍が全滅させられました。

 ですがみなさんご安心ください。

 アテナイの兵に死亡者は1人もいません。

 ただし、タケルポリスの法により、全員が犯罪者として牢に入れられています』


「「「 !!! 」」」


『その後、アテナイはタケルポリスに対して停戦の申し入れをして来ましたが、その停戦協議の場で卑怯にもタケルポリス王の暗殺を試みました。

 もちろんこの企ては失敗いたしましたが、度重なる犯罪行為のために、タケル王はアテナイの全ての王族と貴族に懲罰として平民落ちを命じられました』


「「「 !!!!! 」」」


『よってこれ以降、アテナイの地はタケルポリスが統治します。

 また、これよりタケル王は、今後2度とこのようなことの無いように、アテナイの城壁、王城、貴族街を撤去し、畑に変えることを決められました。

 これより撤去作業を始めますので、第2、第1城壁内にいる方は、皆さん建物の外に避難されることをお勧めします』



 アテナイポリス第2、第1城壁内のすべての建造物がまず屋根から砂化していった。

 木材は粉になっている。


 第2城壁外の平民や農民の家は無事だったが、城壁、王城、貴族邸はさらさらと崩れ続けた。

 不思議なことに、その砂や粉も地面に溜まらずに消えていっている。



「な、なにをしておるぅっ!

 邸の宝物庫からすべての財を運び出せぇぇぇ―――っ」


「あの、侯爵嫡男閣下、宝物庫の宝物がほとんどすべて無くなっています……」


「な、ななな、なんだとぉぉぉ―――っ!

 そ、それでどの宝物が残されているというのだ!」


「あの、歴代ご当主さまの肖像画だけであります……

 たぶん宝物とは見做されなかったのでは……」


「「「 !!! 」」」





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