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*** 176 城門崩壊 ***

 


「マリアーヌ、城門と城壁の内側に遮蔽フィールド展開」


『遮蔽フィールド展開完了しました』


「それでは攻撃を開始する。

 弾種徹甲弾選択っ! 目標城門っ!

 3、2、1、ファイアーっ!」


 ずどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど……



 分厚い城門が見る間に粉々になっていく。


『うひょ―――っ!

 予想以上の手応えだぁぁぁ―――っ!

 痺れるぜぇぇぇ―――っ!』


(確かにこれは凄いですねぇ)



「な、なんという速射魔法だ……」


「アテナイの魔法師たちの魔法が子供の遊びに見えるぞ……」




 1分ほどの砲撃後に、タケルは念話で告げた。


(撃ち方止めっ!)


 ぴたっ!


(弾種を炸裂弾に変更して再度攻撃を行う!

 3、2、1、ファイアーっ!)


 ずどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど……

 どがんどがんどがんどがんどがんどがんどがーん……


 かろうじて原型を留めていた城門が跡形もなく吹き飛んで行った。


(撃ち方止めっ!) 


「第2小隊は40ミリ魔道機関砲を用意せよっ!

 弾種は同じくまず徹甲弾だ!」


「「「 応っ! 」」」


 さすがに80キロもある40ミリ機関砲はいくらオーク隊と雖も手持ちでの運用には無理があり、二脚架を使用しての射撃になる。

 タケルの前にも40ミリ機関砲が設置された。



「も、もっと太い杖が出て来たぞ!」


「あんなもんで撃たれたら城壁すら崩れるかもしらんぞ!」


「莫迦な! この城壁は厚さ2メートルもあるんだぞぉっ!」


「に、逃げろっ! 俺は逃げるぞっ!」


 城門の上に陣取っていた兵たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。



「第2小隊射撃準備! 目標城門周囲の城壁!

 幅30メートルに渡って城門を崩せ!

 3、2、1、ファイアーっ!」


 どむどむどむどむどむどむどむどむどむどむどむどむ……

 どがんどがんどがんどがんどがんどがーん!


『こ、これもすげぇっ!

 発射の衝撃波で内臓がブルンブルン震えてるぜぇっ!』


「お気に召して頂いてなによりですタケルーさん」


『おお! お気に召したぜぇっ!

 最高だぁぁぁ―――っ!』



 城壁も見る間に崩れていった。


 もしもこの城壁が自然石を組んだ石垣であれば、40ミリ機関砲と雖も崩すには相当な時間がかかったことだろう。

 だが、所詮は日干し煉瓦で造られた壁である。

 40ミリ徹甲弾の前には完全に無力だった。



(撃ち方やめ!) ぴたっ。


「弾種を炸裂弾に変更!

 3、2、1、ファイアーっ!」


 どごんどごんどごんどごんどごんどごんどごんどごーん!



 こうしてアテナイポリスの誇る城門も城壁もあえなく粉砕されていったのであった……




(撃ち方止めっ!) 


「マリアーヌ、AI娘部隊に堀を埋めさせて瓦礫の撤去もさせてくれ」


『はい』


 すぐに土魔法で堀が埋められ、粉々になった城門と城壁の破片もみるみる消えていった。





 これより少々前。

 後宮の昼餐の間で昼食をお取りになられていた王太后陛下はふと眉を顰められた。


「なんじゃあの音は」


「近衛兵、あれはなんの音なのですか」


 銀色に輝く鎧をつけた女性近衛兵が3歩前に出て片膝をついた。


「王太后陛下に申し上げます。

 タケルポリスと名乗る蛮族が不遜にも我がアテナイに挑んで来たために、アテナイ軍がこれに懲罰を与えんとしているそうでございます」


「まだそんな愚かなポリスがおったとは……

 見せしめのためにもその蛮族を全滅させるよう軍に命じよ」


「はっ!」


「王太后さま、3時よりの茶会は如何いたしましょうか」


「もちろん予定通り行う。

 まさかアテナイが蛮族ごときに怯む姿を見せるわけにはいくまい」


「はい」



 この茶会とはアテナイ傘下のポリスの内、有力ポリス30の王太后、王妃と王女を集めて行われるものであった。

 要はアテナイの最高権力者である王太后が、傘下にあるポリスの王太后王妃王女たちにマウントを取るための催しである。

 同時に下級王子たちの配偶者を決めるための会合でもあった。




 一方破壊された外郭城門前では。


「オーク隊、前進っ!」


「「「 応っ! 」」」


 ズタズタにされた最外郭城門とその周囲の城壁を通過したところで、タケルは全員に停止を命じた。


「AI娘部隊は第2中城門までの遮蔽物を全撤去し、道幅を30メートルまで拡張せよ」


『『『 はいっ! 』』』


 第2城門に至る道がみるみる平らになっていった。

 途中にあったトーチカも全撤去されたために、内部にいた弓兵たちが逃げ惑っている。



「30センチ砲3門を配備せよ」


『はい』


 その場に300トンに及ぶ鋼鉄の台座上に設置された30センチ砲が3門出て来た。

 砲身長は12メートル、重量500キロの魔素弾を自動装填し毎分10発発射可能な高性能砲である。

 その砲を搭載した砲台が整地された地面の上に浮き、念動魔法で前進して行く。

 タケルとオーク隊もそれに続き、第2城門まで100メートルの地点で停止した。



「な、なんだよあの莫迦デカい筒は……」


「ま、まさか火魔法の発動体か?」


「あんなもの喰らったら……」


「はは、大丈夫だ。

 この城門は黒樫と銅板を張り合わせて厚さが2メートルもあるんだぞ。

 城壁だって厚さ5メートルもあるんだ。

 火魔法ごときでどうなるものでもあるまい」


 第2中城門周辺の兵からパラパラと矢や投石が飛んで来たが、もちろん全て遮蔽フィールドに阻まれて地面に落ちている



「30センチ魔導砲発射準備!

 目標第2中城門!」


『城門城壁後方の遮蔽フィールド展開終了しました』



 その場に鋼鉄製の掩蔽壁が出て来た。

 砲発射時の衝撃波から隊員を守るためのものであり、オーク隊は掩蔽壁の後方に避難し、口を開けて耳を押さえるよう訓練されている。



 タケルが砲の斜め後方にあるトリガー席についた。

 尚、この3門の砲は有線接続されて砲手1人での発砲が可能である。


「斉射3連、3、2、1、ファイアーっ!」 


 どどどぅ―――ん!


 長さ30メートルに及ぶマズルフラッシュの中、500キロ魔導砲弾がマッハ5の速度で発射された。

 よく見れば飛行中の砲弾の周囲は音速突破の衝撃波で景色が歪んで見える。

 また、目標までの地面も衝撃波で盛大に抉られていた。


 どどどがーんっ!


 3発の砲弾が同時に城門中央に着弾。

 城門周囲の城壁が大きく揺れ、城壁上のアテナイ兵がぽろぽろと落ちていった。

 もちろんすぐに『セミ・ゴッドキュア』が発動し、同時に兵は重層次元倉庫に消えて行っている。


『うひょひょひょーっ!

 内臓ぶるんぶるんだぜー♪』


(確かにすっげぇ衝撃だわ……)



「な、なんだあの火魔法はっ!」

「じ、城門が消し飛んだっ!」

「に、逃げろぉぉぉ―――っ!」


 城門周囲の守備軍がわらわらと逃げていく。


「ファイアーっ!」


 どどどぅ―――ん!

 どどどどがーんっ!


「ファイアーっ!」


 どどどぅ―――ん!

 どどどどがーんっ!



 幅12メートル、高さ5メートルの城門が跡形もなく吹き飛んでいた。


「目標城門周辺の城壁!

 連続発射っ!」


 どどどぅ―――ん!

 どどどどがーんっ!


 どどどぅ―――ん!

 どどどどがーんっ!


 どどどぅ―――ん!

 どどどどがーんっ!

 ・

 ・

 ・



 後宮にて。


「な、なんじゃこの騒音は!

 しかも近づいて来ておるぞ!

 まさか蛮族の殲滅に手間取っているのではなかろうな!

 近衛兵!」


「はっ!」


「至急この騒音を停止させるよう王と軍に申し付けて来い!

 妾からの勅命だと言ってな!」


「ははっ!」




 各砲30発の徹甲弾と炸裂弾を撃ち終わるころには、第2城門周辺の城壁も無くなっていた。


「残骸撤去」


『『『 はい! 』』』


「マリアーヌ、第2城門から第1城門への大通り沿いの建物に住民はいるか」


『まさか第2城門が破られるとは思っていなかったらしく、総勢5000名ほどの民間人と少数の軍人がいます』


「はは、略奪軍の大敗北を見て逃げ帰って来た貴族共か」


『はい』


「大通りの左右500メートル以内の建物より、一般人は第2城壁外に転移、軍人は第1城壁上の城門から100メートル離れた地点に転移させよ」


『はい』



「きゃぁ!」


「な、なんだここは!」


「こ、ここは第2城門の外か?」


「み、見ろ! 第2城門が破壊されて跡形も無いぞ!」


「我がアテナイポリスの軍が負けたというのか……」



「うわっ!」


「な、何が起こったんだ!」


「こ、ここは、まさか第1城壁の上か?」


「どうやらそのようですね王族小将軍閣下」


「重装歩兵軍壊滅を見て、念のため我が邸の地下壕に避難していたというのに!

 なぜわしはこのようなところにおるのじゃ!」


「さあ?

 ところで閣下、そのようなことを大声で仰られてよろしいのですか?」


「な、なんだと……」


「もし憲兵に聞かれたら敵前逃亡罪で死刑になりますよ?」


「と、ととと、逃亡ではないっ!

 攻撃計画を見直すための戦略的転進じゃっ!」


「言い訳はわたくしにではなく憲兵隊にどうぞ」


「!!!!!」



 もちろん軍人たちの一部は第1大城壁内に逃げて行っていたが、参謀本部の指揮官たち、つまりタケルポリスの視察に参加していた者たちはその場に残っていた。





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