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*** 175 アテナイポリス軍壊滅 ***

 


 レベルが300に到達している救済部門戦闘部隊50名が、素晴らしいスピードで敵軍に突っ込んでいった。


 まずは奴隷兵1万の足元を掻い潜って密集を抜けていき、すぐに奴隷兵後方の督戦兵部隊に接敵した。


 ずかぁぁぁぁぁ―――ん!


「「「 ぎゃぁぁぁぁぁ―――っ! 」」」


 救済部門兵に跳ね飛ばされた督戦兵たちがくるくると宙を回っている。

 もちろん体当たりや打突、蹴りなどで人は宙に浮いたりはしない。

 その前に衝撃で人体そのものが破壊されるからである。

 だが重力魔法も併用しているために、敵兵は地上10メートルほどまで噴き上がっていた……



「マリアーヌ、督戦兵たちの武器鎧衣服を全て転移させよ」


『はい』


 そのとき、宙に浮いた督戦兵たちが突然マッパになった。

 もちろん槍も消え失せている。


『救済部門戦闘部隊諸君、よくやった。

 これより転移にて帰隊せよ』


「「「 はぁーい♪ 」」」



『おーい、奴隷兵たち、後ろを見てみろー。

 督戦兵たちは武装解除したぞー。

 さあすぐに武器を捨ててこちらに走って来い。

 家族が待ってるぞー』


 奴隷兵から大歓声が上がった。

 もちろんほとんどの奴隷がタケルポリスに向かって駆け出したが、やはり2000人ほどの奴隷たちがマッパになって倒れている督戦兵を棍棒で滅多打ちにし始めた。

 そうして、督戦兵が全員ボコボコにされると、再び歓声を上げながら武器を捨ててタケルポリスに向かって走り始めたのである。



「き、騎馬隊、何をしておるっ!

 あの逃亡奴隷共を蹴散らせっ!」


 我に返った騎馬隊5000が突撃を始めた。



「マリアーヌ、転移開始」


『はい』


 騎馬兵たちが最高速度に達しようとしたそのとき、騎馬隊の馬、騎士の軽鎧、武器、衣服の全てが消え失せた。


 必然的に、騎士たちはマッパのまま、前傾した突撃姿勢のまま空中に放り出されたのである。


「「「 ぎゃあぁぁぁぁぁ―――っ! 」」」


 ほとんどの騎士が前傾姿勢のまま顔面や膝から地面に着地した。

 やはり首が折れて真横を向いている者も多い。

 中には地面で削られて鼻が無くなっている者もいる。

 またしても『セミ・ゴッドキュア』のエフェクトがピカピカと光っていた。


 その負傷者たちをマリアーヌの娘たちが邪魔にならぬように次々と重層次元倉庫に転移させている。

 これで重装歩兵軍は直接タケルポリス軍と対峙することになった。



 城壁上から将軍たちがタケルポリス軍に目を転じると、そこにはいつの間にか300人ほどに増えた大男たちの部隊がいた。

 もちろんレベル780のタケルの魔法でガチガチに防御された上にフルに身体強化されているオーク部隊である。


「オーク諸君!

 ついに諸君らも本格的な戦闘を迎えることになった!

 先ほども言ったが、この戦場にはもちろん『セミ・ゴッドキュア』をかけてあるために、敵が命を落とす懸念も無い!

 日頃の鍛錬の成果を存分に発揮し、念動魔法も使ってあの不細工な鎧共を噴水のように空に打ち上げてやれ!」


「「「 うおぉぉぉ―――っ! 」」」


「オーク部隊、出撃っ!」


「「「 うおおおぉぉぉぉぉ―――っ! 」」」



 スリーマンセルを組んだオークたちが重装歩兵のファランクス目掛けて突進していった。

 その重厚な体躯にも拘わらずレベル400超えのうえ、タケルの身体強化をフルに受けた彼らは、時速150キロ近い速度にまで加速している。


 先頭のオークたちが同じく先頭のファランクス部隊と激突と同時に念動魔法を発動。


 どがぁぁぁぁぁ―――んっ!


「「「 ぎゃぁぁぁぁぁ―――っ! 」」」


 ファランクス100名の内、半数近くが上空20メートルに打ち上げられた。

 まるで鎧の打ち上げ花火である。


 残った半数の重装歩兵も後続のオークたちに蹂躙されていく。


 どがぁぁぁぁぁ―――んっ!


「「「 うぎゃぁぁぁぁぁ―――っ! 」」」


 その後続のファランクスも。


 どがぁぁぁぁぁ―――んっ!


「「「 うあぎゃぁぁぁぁぁ―――っ! 」」」



 オーク兵たちは縦横無尽に戦場を駆け巡り、その度に鎧噴水が打ち上げられている。


 10分ほどで戦場に動いている鎧は皆無になった。

 多くの鎧の手足や首が不自然な方向を向いており、やはりあちこちで『セミ・ゴッドキュア』のエフェクトが光っている。


 まもなく重装歩兵たちの鎧、武器、防具、服が転移され、重装歩兵部隊は死にかけたマッパおっさん部隊と化していた……




 アテナイポリス最強と謳われた重装歩兵部隊3万が、武器も持たぬタケルポリス軍300に壊滅させられた。

 その衝撃に戦場のアテナイ軍全てがフリーズしている。


 ただ、最外壁上でまるで傍観者のように戦を眺めていた将軍閣下たちは、当事者意識が無い分だけ再起動も早かったようだ。


(に、逃げよう……)

(そうだ第1大城壁上に逃げよう……)

(そうすればいくらタケルポリス軍でも追っては来られまい!)


「な、何をしておる軽装歩兵部隊っ!

 て、敵に向かって突撃せよぉぉぉ―――っ!」


(兵を突撃させている隙に逃げよう……)


 王族将軍15名と上位貴族将軍10名は、(自分が逃げる時間を稼ぐために)部下たちを大声で叱咤し始めた。


 だが……


(マリアーヌ、あの莫迦どもをオーク隊の前に転移させてくれ)


『はい』



 喚き散らしていた将軍閣下たちは、1人、また1人と声を失って周りを見渡した。

 何故か自分たちは戦場のど真ん中にいて、先ほど重装歩兵部隊を壊滅させた屈強な敵軍に囲まれていたのである。


((( うーん…… )))


 半数の将軍閣下たちの目玉が裏返った。

 残り半数も派手な軍服を着たまま膀胱と腸の中身を全て放出した後にその場に倒れている。



(転移……)


 その将軍閣下たちもすべて時間停止倉庫に転移された。



 ここでようやく軽装歩兵部隊3万の兵たちは正気を取り戻したようだ。

 すなわち我先に逃げ出したのである。

 もちろん最外郭城壁の門は固く閉ざされていたために、彼らは外壁に沿って逃げていったが、既に全ての兵へのロックオンは終わっていたために、順次重層次倉庫に収容されて行くことだろう。


 大陸北部最強と謳われたアテナイポリス略奪軍のあっけない最後であった……




 一方そのころ遊撃軍は……


 戦場を大きく迂回した遊撃軍3万は、タケルポリスの畑を望む周辺の地に散開を終えていた。


「これより我が遊撃軍はタケルポリスとやらに侵攻する!

 大将軍閣下の思し召しにより、略奪品の2割は我ら遊撃軍の物だ!

 各員一層奮励努力せよぉぉぉ―――っ!」


「「「 うぉぉぉぉぉ―――っ! 」」」



 攻城用の梯子を持った工兵を先頭に、遊撃軍は一斉に走り出した。

 すぐに柵に梯子を架けて柵を越え、敵塹壕に飛び込んでいく。

 間もなく吶喊の声と剣戟の音が聞こえて来た。

 その剣戟の音も声も城方向に向かって移動し、徐々に小さくなっていく。


(もちろん全て録音された音声である)


「よし!

 敵の守備兵力を順調に制圧しておるな!」


 いつでも逃げられるよう騎乗したままの指揮官閣下は、ようやく地面に降り立った。

 従卒たちがすかさず豪華な椅子とテーブルを持ってくる。

 指揮官閣下はその場でワインを嗜み始められた。


「ふむ、塹壕の向こう側から畑に上がって来る兵がおらんの」


「あの畑の麦はまだ実をつけ始めたばかりであります。

 農民出身の兵たちはそんな麦には目もくれず、塹壕の中を進軍して城に向かっているものと思われます」


「ほう、そうかそうか」


 もちろん塹壕に飛び込んだ兵たち3万は、5分ほどの間に全員が重層次元の時間停止倉庫に転移させられていた。

 この後は武装強盗と殺人未遂の容疑で量刑が決定され、刑務所に収監されていくことだろう。


 こうしてアテナイポリスは遊撃軍3万をも失ったのであった。

 夕闇が濃くなっても兵が誰一人と帰ってこなかったために、遊撃軍指揮官の上位貴族は顔面蒼白となり、タケルポリスのライトアップが始まると悲鳴を上げながら逃げ出されたのである……




(さて、そろそろ次の段階に移るか……)


「オーク部隊諸君、外郭第3小城壁城門に向けて進撃せよ!」


「「「 おおおお―――っ! 」」」



『な、なあタケル』


「あ、タケルーさん」


『城壁攻撃にはもちろんアレ使うんだろ』


「ええ、せっかく作ったものですからね」


『そ、それさ、お前も参加してくれねえかな。

 そうすりゃあ俺も体感出来るからよ』


「はは、もちろん構いませんよ」



 タケルを先頭にオーク隊は城門に近づいて行き、門から100メートルほどの位置で横隊を組んだ。


 さすがに城壁上の守備軍からは投石機や弓矢での攻撃が降り注ぎ始めているが、クラス10の遮蔽フィールドがこれらをなんなく弾いている。


「な、なんか矢も石も弾かれてるぞっ!」


「も、もっと弾幕を厚くしろっ!」


「だ、ダメだ……」


「なんで弾かれるんだよぉっ!」


「ま、まさかあれは伝説の結界魔法では!」


「な、なんだとぉっ!」



「オーク第1小隊、20ミリ魔道機関砲射撃準備っ!」


「「「 応っ! 」」」


 100人のオークたちの手に魔道機関砲が現れた。

 さすがはオークたちで、30キロ近い重量の機関砲を軽々と持っている。

 タケルも機関砲を手にした。


 この魔道機関砲とは、機関内部で爆裂型ファイヤーボールを起爆させ、その勢いで固化した銃弾型の魔素を射出するものであり、射出速度はマッハ4に達する恐るべき携行兵器であった。

 尚、銃弾にも弾薬にも魔素を転移させて使用しているために給弾の必要が無く、魔石の容量内でいくらでも撃てる優れモノである。

 銃身には冷却の魔法もかかっており、一定温度以上では冷却装置も発動する仕様になっているため、銃身交換の必要も無い。



「な、なんだあの筒は……」


「ま、まさか魔法の発動体か?」


「あんな太っとい杖を発動体にするんか……」


「だがこの城門は固い黒樫の分厚い板を5重に張って、その上に青銅の板も3重に張りつけてあるんだぞ。

 あの魔法師隊のファイアーボール演習でも少し焦がすのがやっとだったろうに」


「そ、そうだよな……」





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