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*** 17 里帰り ***

 


 それで俺、それからも地球に戻るたびにいろんな食べ物買ってってやったんだよ。

 どうやら銀河の猫人族ってタマネギだのチョコレートだのも大丈夫だったみたいなんで。

 それでまあ好みの問題もあるけどおおむね全部好評だったんだ。

 因みにちゅ〇るに続く圧倒的2番人気はあの『猫ま〇しぐら♪』だったけどな……


 だからあるとき果物もいろんな種類買っていったんだ。

 それでジョセさまの神域に着いたときに、お土産の箱開けたらさ、なんか大勢の猫人たちがその場を転がり廻り始めたんだわ。

 なんかみんなうにゃうにゃ叫びながら酔っぱらったみたいに。

 このころになると、みんな俺の土産を楽しみに集まって来るようになってたから、20人ぐらいがのたうち回ってたんだ。


 ウウ~ッ! ウウ~ッ! ウウ~ッ!


 な、なんかサイレンまで鳴り始めてるぞおい!


 そしたらさ、化学戦防護服みたいなの着て酸素ボンベ背負った警備員たちが飛び出て来たんだわ。

 それで俺、そいつらにタイホ拘束されちまったんだ。



 しばらくして、俺はやっぱり化学戦防護服を着たニャルーン首席補佐官の前に引き出されたんだよ。


「タケルさま、アレは猫人族の世界では禁止薬物として所持使用を厳重に禁止されているもにょにゃんですにゃ……

 だから警報機が作動してしまったのですにゃよ……

 もし猫人族の惑星でしたら最低でも禁固3年の刑が科されますにゃよ……

 まあここは神域ですので刑罰は免除されますが」


「す、すいませんっ!

 と、ところで後学のために、『アレ』ってなんなんでしょうか……」


「これですにゃ」


 ニャルーン首席補佐官が分厚い防護手袋を嵌めた手でそのブツを持ち上げた。


「…………」


(何故にキウイ?

 あああっ、き、キウイって『マタタビ科』だったぁぁぁ―――っ!)



 それで俺、マタタビ臭に汚染された果物の箱持って地球に帰されたんだ。

 なんかその日はジョセさまの神域中にクリーンの魔法がかけられたそうだし、それからも俺が神域の転移の輪から出ると、そこに部屋が作られててやっぱり防護服を着た連中が探知機使って俺や俺の荷物をチェックしてるんだわ。



(タケルーさまの記憶さーん、猫人族に詳しいんだったら教えてくださいよー)


『なーに言ってんだお前、確かに俺の方が猫人族との付き合いは遥かに長いがな、でも地球にマタタビ科の果物があるなんて知ってるわけないだろうが』


(そ、それもそうですね、すんません)


『まあ異種族間交流ってのはそれほど大変だっていうことだ。

 とりあえずあの果物持ち込んだのが猫人の惑星でなくてよかったな』


(はい……)




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 まあそういった事件はあったけど、俺の訓練も無事どんどん進んでいったんだよ。

 ニャイチローとの組手も徐々に防具や肉体強化を外して、より実践に近いものになっていったし。

 だから怪我も増えたんだけど、打ち身や亀裂骨折ぐらいだったら、すぐポーションで治っちまうからな。



 神域へのお土産は、果物はもう懲りたからちゅ〇ると猫ま〇しぐらとチョコレートに限定することにしたわ。


 そしたらさ、ニャルーンさんたちから、ちゅ〇るとま〇しぐらのパッケージに書いてある日本語はどういう意味かって聞かれたんだ。

 だからまぐろだの鶏ささみだのカニだのっていう言葉を銀河標準語に翻訳して教えてあげたんだわ。

 対訳表を作って壁に貼ったりして。


「それでタケルさま、猫ま〇しぐらのここに書いてあるこの言葉は、どういう意味なんでしょうかにゃ?」


「ああそれは『12か月までの子猫用』って書いてあります」


「それではこれは?」


「それは『高齢猫用』って書いてありますね」


「「「 ………… 」」」



 そしたらさー、いろんな種類を大量に買っていってたんだけどなー。

 その中で『子猫用』が最初に無くなって、次に『成猫用』が無くなって、『高齢猫用』だけ残ってるんだわー。

 まあそれ以外が全部なくなると、みんな仕方なく隠れて『高齢猫用』を食べてるんだけどな。


 そういえばこの神域、ジョセフィーヌさまがアレだから、ほとんど女性猫人ばっかりで、男はニャイチローたちぐらいしかいないんだよ。

 ったくそんな中で年齢とか気にしなくたっていいのにさー。


 それにここにいるのはみんな神界認定世界の猫人たちだろ。

 つまり平均寿命300歳近いひとたちなわけだ。

 ニャルーンさんなんか中級天使だから3000歳超えてるはずなんだけど……

 もし地球にいたら猫又を通り越して神獣クラスのびっくり高齢猫なんだけどなー。


 ま、まあそんなことはコワイから絶対に言わないけど……






「タケルさま、実はご報告と言いますかお願いがございまして」


「なんでしょうかニャルーンさん」


「あにょ……

 銀河世界では労働基準法がたいへん厳しくて、神界と銀河連盟の協定により、ここ神域と雖も例外ではにゃいのです。

 それでニャイチローたちの長期休暇が取得出来ておりませんで……

 3次元時間では1か月ほどしか経っておりませんし、3.5次元でも交代で休暇は頂戴していたようでございますが……

 ですが3次元時間でも、里帰りなどの長期休暇を取らせてやりたいと思いまして……」


「ああそういうことでしたか。

 それではわたしに構わず3人に交代で休暇を取らせてやってください。

 それにしても、銀河世界の労働条件は素晴らしいですね」


「ありがとうございますにゃ……」



 それでニャイチローたちが交代で休暇を取って故郷に里帰りすることになったんだよ。

 因みにこの里帰りは神界転移部門の設置した恒星間転移装置を使うんだけど、けっこうたいへんでさ。

 まずジョセさまの神域から神界のハブ施設に転移して、そこから各恒星系担当の宙域管理神の神域に転移して、最後には短距離転移装置で母惑星に転移するんだ。


 それに、実際に3次元時間で9日間の連続休暇とか取ると、3.5次元時間では1年半とかになっちまうんだけど、でも俺も地球に行ってる時間もあるし、俺の体感時間では1年ぐらいの休暇になるんだ。



「ところでニャイチロー、お前の故郷ってどんなところなんだ」


「つい5000年前に銀河連盟に加盟した新興の恒星系で、そのにゃかでも小さな行政区の辺境に位置する小さな小さな村にゃんですにゃ」


「そこから神界に見出されて天使見習いにまでなったのか」


「はいですにゃ。

 初等学校の成績が良かったもにょですから、銀河連盟中等学校の入学試験を受けさせてもらえて、それで合格して奨学金も貰えて高等学校にも大学にも行けたんですにゃ。

 そこでも少し成績が良かったもにょですから、天使見習い心得になれて……」


「すごいな、ということは、お前は故郷惑星では英雄なんじゃないか?」


「は、はい……

 一応ウチの恒星系で天使見習みにゃらいににゃれたのはボクが初めてでして……」


「おー、すごいじゃないか。それじゃあ本当に英雄だな。

 ニャジローやニャサブローはどうなんだ?」


「ボクたちみんにゃ恒星系は違うんですけど、だいたい同じようなもにょですにゃ」


「そうかそうか、3人とも頑張ったんだなー。

 ところでお前たちの村には何人ぐらいの村人がいるんだ?」


「ウチの村は300人ぐらいですにゃ」

「ウチは200人ぐらいですにゃ」

「ウチの村も200人ぐらいですにゃ」


「そうか……」


(こいつら本当に小さな村から実力のみで天使見習いにまで駆け上がって来たのか……

 その努力もすごいけど、そうした人材を発掘出来る銀河の教育システムも素晴らしいな……)


「よし! それじゃあ俺がお前たちに土産を持たせてやろう!」


「「「 えっ…… 」」」


「土産はちゅ〇ると猫ま〇しぐらでいいな」


「も、もちろんですにゃ……」

「子猫たちも大人たちもみんにゃ喜びますにゃ……」

「あ、ありがとうございますにゃ……」


「お前らみんな収納魔法使えるよな」


「「「 はい 」」」


「それじゃあちゅ〇ると猫ま〇しぐらをそれぞれ5000食ずつでいいか?」


「「「 !!! 」」」


「そうだな、それに厨房や警備の猫人さんたちも交代で休暇取るんだろ。

 そのひとたちにもアイテムボックスって貸してやれるのかな」


「は、はいですにゃ……」


「そうしたら休暇の際に全員に両方3000食ずつ持たせてやろう。

 それ以外にも両方10万食ほど時間停止倉庫に備蓄しておこうか」


「「「 !!!! 」」」


「そ、それ、もにょすごくおカネがかかってしまうのでは……」


「なに言ってんだよ。

 俺、ここの神域の人たちにもお前たちにもこれだけ世話になってるんだぞ。

 この程度のことは当然だろうに」


「で、でも……」


「それに俺、結構な予算を持ってるんだ。

 だから気にするな」


「あ、あああ、ありがとうございますにゃ!」

「「「 にゃーん! にゃーん! にゃーん! 」」」


「ははは、泣くな泣くな……」



 神界調査部門特別監視部隊の猫人たち:


(いいなぁ……)

(一度でいいから食べてみたいなぁ……)

(な、なぁ、ニャルーンさんに頼んで少し分けてもらわないか?)

(お前なー、監視対象にそんなこと依頼したら譴責処分だぞ)

(そ、そうか…… 残念だ……)



 ちゅ〇ると猫ま〇しぐら製造販売会社営業部:


「なあ、この東京都武者市っていうところで、ウチの製品がヤタラに売れてるんだけど……

 なんでだ?」

「さあ? 猫が大量発生したのかな?」

「このペースだとそのうち猫の方が人より多くなるぞ」

「ははは、まさか……」

「もしそうなったら、その街に行ってみたいなぁ」

「うん……」

「コンビニで買い物すると、レジに座ってる猫がおつりくれたりして……」

「そのコンビニに並んでる商品の3割がウチの製品だったりして……」

「それを首から財布を下げた子猫が走って買いに来てたりして……」

「いいなぁ、行ってみたいなぁ……」

「「「 うん…… 」」」





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