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*** 164 超巨大城出現 ***

 


「ところでこの星のヒト族には魔法能力があるんだよな。

 レベルはどれぐらいなんだ?」


『平均でレベル2.5、最高でレベル9ですね』


「なんだその程度か」


『どうやら王族や高位貴族ほどレベルが高く、平民はほとんど微弱な生活魔法レベルのようです』


「あー、それで魔法能力を守ろうとして近親婚を繰り返してるのか」


『どうも、魔法能力とは完全に遺伝によるものであり、また魔法能力が高いほど高等なヒト族であると刷り込まれているとみられます』



「それではこの惑星ダタレルでは戦闘行為によって強制的に平和を齎すことにしてみようと思う。

 上には上がいるということ、それも圧倒的な上位者がいるということを知らしめることで戦闘を停止させようか。

 上手く行かなければまた別の方法を考えるし、まあ試行錯誤の一環だ」


『はい』


「それでまたタケル王国、いやこの星だとタケルポリスか。

 その城を造るとしてだ、その城に移動機能って持たせられるかな」


『土台を確り造っておけば、重力魔法と念動魔法の組み合わせで容易です』


「それじゃあ少し大きめにして、最初はアテナイの南方10キロに出現させようか。

 それから1日に1キロほど移動させて、最終的にはアテナイから300メートルほどの地点に配置させよう。

 城転移の直前にまた城建設と交易申し入れの挨拶状を届けようか。

 前回は宰相に握り潰されてたから、国王の執務机に直接届けてくれ」


『あの、城のデザインは如何致しましょうか』


「んー、どんなのがいいかな……」


『最近、城や祠を建設している娘たちのグループが地球の建築物に興味を持ち始めておりまして、設計を任せてもよろしいですか?』


「俺がヘタに考えるより、そっちの方が面白そうだな。

 そういえば、アテナイ中央区画の建物ってどれぐらいの高さのものがあるんだ?」


『城の最上部も後宮の屋上庭園も3階建てまででおよそ15メートルほどですね』


「日干し煉瓦だとそれが限界か。

 それじゃあ奴らの城よりかなり高い城を頼む。

 そうすれば余計にムカついて攻めて来るだろうからな」


『畏まりました』


「畑はどうしようか」


『1辺100メートル四方ほどのプランターを100個ほど作って移動させましょう』


「なるほど、それなら楽でいいな」


『はい』


「このアテナイの周辺の現在の季節は」


『地球の日本で言うところの3月下旬ごろに相当します』


「このアテナイでは冬小麦は栽培してるか」


『いいえ、やはり春小麦のみのようです。

 それも種をただ撒くだけの最も原始的な農法ですね』


「それじゃあ、また冬小麦が実ってるのを見せつけて略奪軍を誘引しよう。

 そのために外壁は鉄製の素通しの柵にしておいてくれ」


『はい』


「あ、ちょっと気になってたんだけどさ、今救済部門から天界農業部門に職員やAI娘たちを出向させて、農業ドローンも使って天界も食料を自給出来るようにさせてるだろ。

 こうしたヒト族未認定世界の略奪軍誘引用には、あの農業惑星の畑を借りて来てるんだよな」


『はい』


「それさ、連中はせっかく作った畑を持っていかれて不満に思ったりしてないかな」


『実際には逆ですね』


「?」


『彼らは連盟配信などで、自分たちが丹精込めた畑が救済の役に立っているのを見て非常に喜んでいます。

 しかも現地の農民があの畑の収穫量を見て、希望に燃えて学習したり働いたりしていますので』


「そ、そうか。

 それならよかった……」




 翌日。


『タケルさま、娘たちが城を設計しましたのでご覧いただけませんでしょうか』


「うっわー、すげぇなこれ」


『イメージはモン=サン・ミッシェルで、その頂上にある修道院をケルン大聖堂風に置き換えたものだそうです』


「はは、しかもこれ底面の直径が1キロ近くあるんだな。

 高さは300メートル超えか」


『はい』


「ははは、それでもAI娘たちにとってはちょっと大きな『ほこら』に過ぎないっていうことか」


『娘たちも自分のほこらをデザイン出来て楽しんでいました』


「この星の支配層たちも、こんなもんが10キロ先から毎日近づいて来たら無視出来んわな。

 挨拶状に交易を望むと書いても、いきなり攻め込んで来るかもしらん」


『危機意識を持っても城の大きさでプライドを傷つけられても商業街を見ても、いずれにしても略奪しに来そうですね』


「それじゃあ春の内に冬小麦を見せつけて連中を誘引するためにも、城をあと3000個作っておいてくれ。

 小さなポリス用の小城は7000個だ。

 そうそう、門の上には大陸共通語で『タケルポリス』って大きく書いておいてくれるか。

 あと肉球紋章旗も忘れずにな。

 あの旗が無いと子供たちががっかりするんだ」


『畏まりました』




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 アテナイポリス国王執務室にて。


「な、なんだこれは!

 すぐに宰相を呼べっ!」


「はっ」



「宰相よ!

 このようなものが余の執務机に置いてあった!

 見たことも無い獣皮(紙のこと)になにやら虫が這い廻ったような跡がある!

 何の悪戯じゃ!」


「拝見させて頂けますでしょうか」


「許す!」


「こ、これは…… 

 ひょっとすると『文字』というものかもしれませぬ……」


「な、なんじゃと!

 あの下賤な下級官吏共が使っておる物か!」


「はい……」


「余にそのような物を送り付けるとは、無礼にも程があるぞ!

 誰がこのような物を置いたのか詮議せよ!」


「ははっ」



(マジかよこいつら、国王と宰相のくせに、大陸共通語も読めないのか。

 ソクラテスやプラトンはどこいったんだよ)


(この王が言っているように読み書きなどは下層階級のものとして忌避しているのでしょう。

 おそらくは、知的能力の欠如を糊塗するための代償行動とみられます。

 普段の報告などは全て口頭でさせているようですね)


(本当に威張って君臨してるだけで、統治は全く出来ないんだな……

 それじゃあ計画通りこのポリスから南方10キロ地点に城を転移させてくれ。

 その後は夜間に1日1キロの割合でアテナイに向かって近づけよう)


(はい)




 アテナイポリス最外壁上にて。


「あれ?

 あんなところに城ってあったっけか?」


「そんなもんあったわけないだろう。

 それにしてもでっかい城だなぁ」


「な、なあ、一応守備軍本部に報告するか?」


「そうだな、今は春だから攻めては来ないと思うが念のため伝えておくか」




「な、なんだと!

 南方に城が見えるだと!

 虚言を申すなっ!」


「いやまあ兵隊さんも最外壁に昇ってみれば見えますって」


「も、もし無ければただでは済まさんぞっ!」



「な、なんだあれは……」


「へへ、言った通りでやしょう」


「す、すぐに小隊本部に報告だ!」



「なんだと、南方に城が見えるだと」


「は、はい。

 それも見たことも無いほど大きな城です」


「我がアテナイの城より大きいと申すか!」


「近くに行ってみなければわかりませんが、あの距離であの大きさに見えるならばアテナイ城の5倍はあろうかと……」


「はは、莫迦を申すな。

 我がアテナイ城は大陸北部でも最大の大きさを誇るのだぞ」


「あの、恐縮ですが小隊長殿も最外壁に昇って頂いてご覧いただけませんでしょうか……」


「ふむ、もしも本当ならば秋に攻め込んで来るための出城かもしらんの……」



 小隊長が最外壁に上がろうとすると、そこには既に農民たちが鈴なりになっていた。


「農民共どけっ!

 小隊長殿が視察にお見えであるっ!

 道を開けよっ!」


「「「 へぇーい…… 」」」



「な、なんだあの巨大な城はぁぁっ!

 その方らあのような物が造られていたのに今まで気づかなかったというのかぁぁっ!」


「あの……

 農民からの報告は今日初めてだったものですので……」


「農民共!

 あの城はいつからあそこにあった!」


「あのー、小隊長殿、わしらは毎日この壁の上に投石用の石などを運んでおりましただども、あの城を見たのは今日が初めてであります」


 大勢の農民たちが頷いている。


「な、なんだと……

 よ、よし、中隊本部に報告の上調査隊を出すぞ」



 そして中隊本部にて。


「男爵中隊長殿、という次第でございまして、アテナイポリスより南方に巨大な城が出現しております!」


「なんだと……」


「よろしければ最外壁上よりご視察願えませんでしょうか……」


「うむ……」


「待て、余も行こう」


「王族大隊長閣下……」


「余は成人したばかりであるが、南方面守備大隊を任された身だ。

 もしそのような城が本当にあるのならば、我が責任の範囲内となる。

 よって余が直々に視察する!」


「「「 おお! 」」」


(ふふふ、その不遜な城を撃退して蛮族を追い払えば、余もすぐに貴族初代となれるだろう。

 いや、戦利品次第では第1城壁内の王位継承権10位以内王子となれるに違いない!

 なにしろこんな戦利品の少ない守備隊で燻っていれば、いつまで経っても昇格出来んからの……)



 そして馬に乗って最外壁上に上がられた王族大隊長殿は……



「な、なんだあの巨大な城は……

 よ、よし、大隊から威力偵察部隊を選抜せよ!

 貴族並びに貴族家従士を50名、その他精鋭平民兵200名からなる部隊とする!

 明朝までに編成を終えよ!

 指揮は余が執るっ!」


「王族大隊長殿!

 それはあまりにも危険であります!

 指揮はわたくしにお任せを!」


「いや、余自らが指揮を執る。

 これは決定事項だ。

 その方らは周辺哨戒と余の護衛に徹せよ」


「は……」


(ったく手柄に飢えた初陣のボンボンは……)


(はは、手柄は全て余のものだ。

 万が一相手の兵力が多かった際にはこ奴らを足止めにして余は城壁内に逃げればよかろう……)





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