*** 16 二つ名 ***
でもさ、どうやらあのDQNたちが粗相しちゃった場所、反社の親分が女にやらせてる高級クラブの真ん前だったらしいんだ。
それで激怒した親分が手下に命じてDQNたちをボコボコになるまで折檻したそうなんだわ。
でも俺はそんなこと聞いてなかったし、翌日も街を掃除してやろうと思って『極楽通り』を通ったんだよ。
ついでにこういうのって、俺が後進世界の武装解除とかの任務を始める際に、非暴力無力化の練習にもなると思って。
そしたらボコボコになったDQNに加えて新人DQNも大勢待ち構えてたんだ。
全部で20人ぐらいいたかな。
それでメンドいんで『広域威圧LV2』をかけたんだ。
そしたらまた地獄図絵が出来上がっちゃってさ、その日は夜遅くまでDQNたちがデッキブラシで道を掃除してたそうだわ。
それで翌日も『極楽通り』に出向いたら、今度はコワイおじさんやお兄さんたちが懐にエモノ呑んで待ち構えてたんだよ。
まあ彼らみたいな職業は『舐められたら終ぇだ!』っていうからな。
そういう風に異様にメンツを重んじるのって、反社のおじさんたちも中〇や北〇鮮とかの政治指導部とおんなじだよな。
でもやっぱりみんな『広域威圧Lv2』には耐えられなかったんだよ。
様子を見に通りに出ていた親分の女である高級クラブのママも、同じようにドレスの下半分でろでろにして気絶してたし。
そしたらさ、翌日はなんと組の用心棒が出て来たんだわ。
元プロレスラーだそうで、身長2メートル近くって体重も160キロぐらいありそうな奴が。
なんか上は巨体をさらに強調するダボダボなシャツ着て、下はリングパンツ姿でな。
どうやら傷害事件を繰り返してプロレス団体を馘になり、ヤー公の親分に拾われてたらしいんだ。
そんな奴がニタニタ笑いながら腕振って腋の下カポンカポン鳴らしながら近づいて来たんだわ。
それで俺、ちょっとムカついちゃって、『威圧Lv5』をかけちまったんだ。
そいつ、とんでもない量のンコぶちかまして気絶してたわ。
一緒に後ろにいた反社の親分も。
どうやらレベル5ともなると、直腸だけじゃあなくって大腸や小腸も全部空になるらしいな。
だからずいぶんと量が多かったみたいなんだ。
それで練習のつもりで重層次元倉庫からナノマシン2個分隊を呼び出して、親分とレスラーに取りつかせたんだよ。
ピコマシンだともったいないから安いナノマシンで。
『今後5年間、肛門括約筋と膀胱括約筋の機能を停止させよ』って命じて。
初めて試してみたけど上手くいったわ。
それでそいつら再起不能になっちゃったんだ。
特にレスラーなんか居候してた組事務所も追い出されて、河川敷の橋の下に段ボールハウス作って住みついてたわ。
そんな『極楽通り』の件があってしばらく経ってから、クラスの女子が言って来たんだ。
「ねえねえタケルくん、高校に行ってるウチのアニキに聞いたんだけどさ、タケルくんあの極楽通りに屯してるDQNたちをシメちゃったんだって?」
「いや、別にシメたわけじゃないよ。
向こうが勝手に自爆しただけだよ」
「でもみんなビビって粗相しちゃって、引き籠りになっちゃったって。
おかげで高校が平和になったってアニキが喜んでたわ♪」
「そ、そうか」
「それでタケルくんに二つ名がついたそうよ♪」
(お、俺、銀河宇宙では超大英雄とか言われてるけど、あれはタケルーさんの二つ名だからな。
中3になったばっかりのころの修学旅行の後には、何故か理由はわからないんだけどクラス男子の間で『帝王』って呼ばれるようになってたけど……
なんでだろ?
でもまああれは二つ名っていうよりニックネームだからな。
それにしても地球でタケルについた初めての二つ名かー)
「そ、それで、どんな二つ名なんだ? (wktk♪)」
「あのね、『歩く下剤』って言うんですって♪」
「!!!!!」
とほほほほほほほ……
「こんどわたしもお通じに困ったときにお願いしようかしら♪」
お前なー、アレ瞬時に炸裂するんだぞ。
だがらパンツ下ろして便器に座った状態じゃないと使えないんだぞ。
それでトイレの個室のドア開けて、俺がお前を『威圧』するんか?
それどういう絵ヅラだよっ!
そんなもん、一発で通報されて俺の社会的生命が抹殺されるわ!
ちなみさ、この子、藤吉樹里さんっていうけっこうな美人さんなんだけどな、以前街中で見つけたときに「おーい、藤吉さーん」って呼んだんだ。
そしたらダッシュで走って来て俺の頭叩くんだよ。
「あ、アタシの苗字を大声で早口で呼ぶなぁぁぁ―――!」って言って。
どうやらそうすると「藤吉」が「腐女子」に聞こえるらしいな。
だからいつも『アタシ16歳になったらすぐ結婚して名字変えたいから誰か貰ってっ!』って言ってたんだけど……
そしたらクラスの千与四郎くんが真っ赤になりながら手を挙げたんだ。
「ぼ、ボクじゃあだめかな……」って言って。
どうやら千くんは小学校時代からの同級生で美少女な藤吉さんに憧れてたらしいんだ。
因みにこの千くん、あの茶聖千利休の末裔で、実家は〇千家の家元関東支部代表でけっこうなおカネモチだったんだけどな。
ついでにまあまあ可愛らしい顔立ちのイケメンでもあったんだけど。
それで藤吉さんもすっかり喜んじゃって、「それじゃあわたしを千くんのおヨメさんにしてね♡」とか言って、それからはラブラブになってたんだよ。
将来の家元夫人になるためにもさっそく千くんの家に行って茶道も学び始めてたし。
こいつ……
もしそうなったら自分のフルネームが『せんじゅり』になっちまうって気づいてないな……
もしくは『せんずり』の意味を知らないとか。
もしそれを知ったらさぞかしショックを受けるだろうな……
まあ本人も千くんも可哀そうだから黙っててやるか。
最悪の場合、ちゃんと手続きさえ踏めば名前も変えられるしな……
でも改名届の理由欄を見た市役所の戸籍係…… 吹くだろうなぁ……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
中学校では2学期も始まってたけど、それからも俺は放課後にジョセさまの神域に行って、そこからまた3.5次元空間の鍛錬空間に転移してトレーニングを続けてたんだ。
あそこなら20日訓練していても地球では8時間しか経過しないからな。
それに土日は3か月ぐらい訓練しても地球では1日半だろうし。
それでニャルーンさんやニャイチローたちや、その他にも3.5次元空間でメシ作ってくれてる猫人さんたちのために、あの『ちゅ〇る』を持っていったんだよ。
まあ俺も収納魔法覚えたから荷物にはならないし。
まずはニャルーンさんに頼んで銀河の猫人たちに有害な成分が入ってないか調べてもらって、それからニャイチローたちに喰わせてみたんだ。
「タケルさま、おみやげありがとうございますにゃ、ぺろぺろぺろぺろ」
「それでこれからの3.5次元空間でのトレーニングは、平日は20日間、土日は3か月間にゃのですね、れろれろれろれろ」
「これからは銀河の初等教育機関の通信教育も始めることにいたしましょうか、はぐはぐはぐはぐ」
「お前ら……
喋るかちゅ〇る舐めるかどっちかにしたらどうだ?」
「ぺろぺろぺろぺろ……」
「れろれろれろれろ……」
「はぐはぐはぐはぐ……」
「ちゅ〇るを選ぶんかぁぁぁ―――いっ!」
「お前らそんなにあれ気に入ったのか……」
「あれはヤバいですにゃ……」
「特にあのマグロ味ときたら……」
「もしあれが銀河の好戦的猫人族の世界に知られたら……
大艦隊が押し寄せて来て地球は侵略されますにゃ……」
「そ、そこまでなんか……」
それで俺、家に帰ったときに父さんに頼んでみたんだ。
「ん? ということはジョセさまの神域で世話になっている猫人たちのために、ちゅ〇るやお菓子を買ってやりたいということなんだな」
「うん……」
「それは紛れもなくタケルーさまの生まれ変わりとしての活動だな。
わかった、武者一族企業の武者物産を通じてなんでもいくらでも買ってやるぞ」
「あ、ありがと」
「そうだな、当面の間、ちゅ〇るは毎月10万食ずつ注文しておくか……」
「!!!」




