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*** 146 反省会 ***

 


 リリシーノくんは、他の元貴族たちからも妻子の同伴を依頼された。

 若い従士や信頼出来る領兵がいなかった元貴族たちである。


 さらに、従士や領兵たちも頭を地につけてリリシーノくんに妻子や幼い孫の同行を依頼して来たのである。

 もちろん女の子たちは皆将来の嫁含みであった。

(最年少生後3か月女児!)


 また、真面目で努力家のリリシーノくんは改めてタケル王国の学校で学び直し、文官試験にも合格して代官となっていった。

(席次はムウリくんに次いで第2位だったが、それでも3000人近い受験者の中での2位である)


 そうして数年後、ムウリくんほどではないにせよ、リリシーノくんも一大ハーレムを築いていったのであった。

(通称リリシーノ・スーパーロリハーレム。

 なにしろ嫁の内3割はおむつ替えをしてやったことがある者たちだったのだ。

 光源氏も真っ青!)


 こちらへの襲撃者はのべ1万8000名に及んでいる。



 旧ホスゲン辺境伯寄子貴族家の者たちは、3か所ほどに分かれて農業を始め、ほこら部隊の指導を仰いだおかげでそれなりに成功して生き延びているそうだ。

 あの鉄剣を砲丸にされてしまった男爵は、その鉄球を家宝として大切にしている。

 そうして、元貴族や従士たちは、月に1度ほど商業街で妻子や生まれたばかりの孫に会って相好を崩しているらしい……




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「あにょ、タケルさま、教えていただきたいことがあるんですけど……」


「なにかな」


「あのホスゲンという元辺境伯やその仲間の元貴族たちにゃんですけど、奴隷を所持していたり殺人教唆をおこにゃっていた重罪犯だと思うんです。

 にゃのに、にゃぜ逮捕・収監されにゃいのでしょうか」


「そうだな、それにはいくつかの理由があるんだけどな。

 まずは俺たちは救済部門であって警察部門ではないということなんだ。

 そもそも俺たちの目的は、この惑星デラみたいな星に於いて、飢え、暴力、恐怖、病に苦しむ者を無くすことだけど、もうあいつらは他者に暴力や恐怖を与えられないからな。

 もしまた暴力を振るおうとしたら、その時は逮捕するけど」


「はい……」


「それからな、俺たちは『詳細鑑定』を使って過去の犯罪歴をチェック出来るが、今迄は現行犯で逮捕拘束した連中や保護施設に出頭した連中の余罪を調べて、AIたちが量刑を判断してたわけだ。

 もちろんAIが提案した最終量刑判断の権限は、一応中級神である俺経由で最高神さまにあるしな。

 まあ俺も最高神さまも異を唱えることは無いけど。


 これは、銀河宇宙の裁判所でも神界の裁判所でもAIたちが担ってる業務だし、最高神政務庁から救済部門のAIが同じようなことをする許可も貰ってるし。

 でも、もうすぐ神界は『天界宣言』や自分たちが神ではないっていう『天使宣言』を出す予定になってるだろ。

 その際に、天界や銀河出身の天使の末裔たちは、現行犯でなく、現地司法機関の逮捕令状も出ていない者を逮捕拘束出来るのかっていう実に微妙な問題が出て来るんだよ」


「!!!」


「この点がはっきりするまでは、現行犯逮捕と出頭者の余罪取り調べと量刑提示以外は控えることにして試行錯誤してみようかと思ってたんだ。

 だから出頭した奴が量刑を認めなかったり元いた場所に戻りたいって言ったら、戻らせてやってたろ。

 まあ戻っても喰いものが無いからすぐ死にかけるけど」


「にゃるほど……」


「まあ『天界宣言』が出た後に、銀河連盟や銀河連盟最高裁判所から『天界のAIが詳細鑑定で得た罪状記録を元に天界が逮捕令状を出す権限』っていうものを貰えればいいんだけどな」


「ありがとうございます。

 よくわかりましたですにゃ……」


「ただ、一応そうした点について、諮問会議の法律専門家たちに確認しておいてもらえるかな。

 特に詳細鑑定で得た犯罪情報だけで逮捕や量刑判断が可能かっていう点について」


「はい」


「それからマリアーヌ」


『はい』


「お前の娘たちに『裁判補助員』の銀河資格を取らせておいてくれ。

 まあお前たちAIならそんなに時間はかからないだろう」


『推定で3分はかからないと思います』


「さすがだ。

 それじゃあ俺も勉強して裁判官資格を取ってみようか。

 ニャサブローは法学の学位を持ってるんだろ」


「はいですにゃ」


「お前も少し勉強し直して、裁判官資格を取っておいてくれ」


「畏まりましたですにゃ」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 或る日の救済部門幹部会にて。


「さて、どうやらヒト族暴虐世界デラの救済は無事終わったようだが、今日は反省会をしたいと思う。

 皆思うことを述べてくれ」


「あにょ、ボクには反省点にゃどにゃい完璧な救済だったと思えるんですが……」


「ボクもそう思いますにゃ」


「ボクもです」


「オーキーはどう思う」


「反省点ということではないのですが、オーク族たちは戦う場面が無かったので少々ガッカリしておりました。

 まあ戦闘が無かったことこそ救済が上手くいった証ではありますが」


「まあそのうちに戦闘が必要になる場面もあるだろう。

 それまでは犬人族の世界で発散してくれ」


「はい……」


「マリアーヌはどう思う」


『結果として非常に上手くいったとは思うのですが、些か時間がかかりすぎたかと』


「やはりそう思うか。

 実は俺もその点を懸念してるんだよ。

 地球で言う20世紀から21世紀レベルのヒト族戦争世界を無力化するのって、準備期間を別にすれば実質数時間だったろ。

 それが5世紀から10世紀程度の暴虐世界を無力化するのに半年もかかったもんな。

 これがもし1日で終わっていれば、その間の餓死や病死や暴力死した奴も救えていただろうにさ。

 まあ、まだ試行錯誤の段階だから仕方ないかとも思うが。

 それでニャサブロー、詳細鑑定で見つけた重罪犯をそのまま牢に転移させることについて諮問会議はなんて言ってたかな」


「その点についてにゃんですが……

 ご存じのように銀河法典第15条にある『何人たりとも、現行犯であった場合、もしくは裁判所の逮捕令状が無ければ逮捕拘束されない』という条項がネックになっていますのですにゃ。

 あれはそもそも『銀河連盟の法典』ですので連盟加盟恒星系に限った法であるという解釈と、『何人たりとも』と言うからには全てのヒューマノイドに適用されるという解釈の論争が続いているんです。

 それでも、今までは『銀河法典』の対象になるのは銀河連盟構成員である銀河人に限定されるという点から神界は除外されているとも見做されていたんですにゃ。

 実際、今まで誰もそのようなことはしていませんでしたにょで。


 ですが間もにゃく神界から『天界宣言』が出ますにょで、タケル神さまは銀河出身の天使であると解釈されて、銀河法典が適用されてしまうかもしれにゃいんです。

 特に銀河連盟最高裁判所の裁判官たちは保守的な考えの方が多く、解釈が分かれるときはより厳密な方向に流れやすいそうにゃんです。

 ですから、もしタケルさまが現行犯でない犯罪者を、現地司法機関、銀河連盟裁判所にゃどの逮捕令状(にゃ)しに逮捕拘留されると、銀河連盟最高裁判所がそれを銀河法典違反と見做みにゃしてタケルさまの逮捕命令を出す可能性があるそうです。


 また、AIに裁判や量刑判断をさせてそれを司法権限者が追認するという形式についてですが、まず銀河宇宙では犯罪や係争が皆無に近いですから、すべての裁判はヒューマノイドである裁判官によって行われています。

 AIは単なる司法補佐官ですね。

 ですので天界のAIに量刑判断を委ねるという行為は銀河連盟最高裁判所が認めにゃい可能性が高いそうです」


「やはりそうか。

 まあそういう裁判官って、自分たちの法解釈が絶対であって、それが現実に即してるかどうかなんて考えもしないだろうからな。

 それでニャサブロー、無駄足に終わるかもしれんが、諮問会議の法律部会の連中と一緒に銀河連盟最高評議会執行部に行って意見を聞いて来てくれないか。

 もしも連盟最高裁が俺の逮捕命令を出しても、連盟司法警察は俺の許可なしに俺の神域には入れないけど、でも銀河全域指名手配とかされると気分悪いからな。

 一応確認して来てくれるか。

 銀河連盟も勝手逮捕はヤメてくれって言えば、他に救済時間を短縮する方法を考えるから」


「畏まりましたですにゃ」


「それじゃあ次のヒト族暴虐世界に取り掛かるか……」




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




【銀河系第514象限、F12877恒星系第3惑星、識別名アルファにて】

(種族:ヒト族 科学技術文明度1.4 社会成熟度マイナス19.3

 住民平均E階梯マイナス39.3 紛争、飢餓危機、住民平均E階梯銀河最低)



「マリアーヌ、この星の事前調査結果を見せてくれ」


『はい』




「そうか、この星って農民が全て農奴だっていうわけじゃあないのか」


『そうですね、自作農と小作農が奴隷を使って農業を営んでいます。

 そうして収穫したものの中から貴族領主に税を払い、領主はその税の中から王家に上納税を払っています』


「税率は」


『領主によって違いますが、おおむね70%から80%です』


「奴隷の待遇は」


『自作農によってまちまちです。

 ですがやはり食事は悲惨ですね。

 もっとも待遇のいい農場でも1日に薄い粥1杯。

 酷いところだと3日に1杯です。

 ですがまあ、よくラノベにあるように『隷属の首輪』などというものは有りませんので、あまり待遇が酷いと奴隷が逃げてしまいますから最低限の扱いはしているようです』


「なんだマリアーヌもラノベ読んでみたのか」


『はい、多少は任務の参考になるかと思いまして』


「参考になったか」


『実は失望しています。

『隷属の首輪』などというものを作れる高度な魔法技術があるならば、鉱山でも農場でも魔法技術で解決出来ることはたくさんあるだろうという疑問点に触れている作品はほとんどありませんでしたので。

 また、主人公の目的が、努力せずに幸運によって金を儲けること、他人にマウントを取ること、異性に好かれることばかりなので失望しました』


「まあ読者の欲望を反映した結果だからそうなるんだろうな。

 あれは俺たちの救済事業の参考にはならんだろう」


『はい……』





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