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*** 113 目覚めたAI娘たち ***

 


『すみませんタケルさま……』


「ん、どうした?」


『毒の森の黒トリュフが100グラム3000クレジットもの高値で売れたことを知った娘たちが、商取引に目覚めてしまいまして……』


「!!!」


「あちこちの村で、その地の特産品を仕入れるようになってしまいました……」


「でも、その地の住民はみんな喜んでるんだろ?」


『はい』


「それならいいんじゃないか」


『ありがとうございます……』


「あ、特産品の無い村はどうなってる?」


『石をどけたり草を抜いたりして道路工事を手伝ってもらっています。

 昼食付で賃金も渡しているので村人たちは大喜びですね。

 そのおカネで食料が買えるようにもしましたし。

 それが終われば森を切り開いて畑を開墾する仕事をしてもらう予定です』


「そうか、それはよかった。

 お前たちのおかげでケンネルの救済は大成功だったな」


『あ、ありがとうございます』


(やっぱりタケルさま心から喜んでいらっしゃらないわ。

 何故かしら……)



「これからは祠部隊がいて、交代制のオーク駐留部隊がいれば大丈夫だろう。

 いざとなれば俺も出張るし。

 それにお前たちはこうした救済の経験を共有出来るんだろ」


『はい』


「なら、これからこのパターンの救済はお前たちとオークたちがいれば大丈夫だろうから、救済部門のトリアージ部と相談して、自分たちで救済惑星をどんどん広げていってくれ」


『畏まりました』



 こうして、神界救済部門の未認定世界派遣部隊は、初年度に3万世界、その後も年を追うごとに続々と救済地域を拡大して行くことになったのである。




「それでなマリアーヌ、お前たちになにか報奨を渡したいんだけど、AIが何を欲しがるかなんて全くわからないんだよ。

 なにがいい?」


『そ、そのようなこと……

 あれは神界救済部門の公式な任務でしたので……』


「いや公式な任務だろうと非公式な任務だろうと、大成功した者には褒賞が必要だ。

 なにしろお前たちは惑星ケンネル9000万のヒューマノイドに幸福を齎したんだからな。

 しかもあのまま放置していれば相当数の死者も出ていたことだろう。

 それで褒賞はなにがいい。

 俺が用意出来るものだったらなんでもいいぞ」


『あ、あの……

 あのあのあの……

 実は娘たちが心から願っていることがありまして……

 いつか機会があったらタケルさまにお願いしてみて欲しいと頼まれているのです……』


「ほう、どんな願いなんだ?」


『あのケンネルのヒューマノイドのみなさんが、美味しい美味しいと食べている食べ物を自分たちも食べてみたいという願いなのです』


「それは当然の願いだろうけどさ、でも技術的に可能なのか?」


『実は可能と言えば可能なのです。

 銀河宇宙の或る先端技術恒星系では、我々AI専用のアバターが製造販売されていまして、そのボディには味覚情報を電子的情報に換えてAIに渡すことが出来る機能がついているのです』


「あーそうか、確か調理ドローンのうち親方ドローンにはそういう味覚識別機能がついていたよな。

 あの機能を高度化したものか」


『はい』


「そのアバターっていくらぐらいするんだ?」


『運動機能と味覚感知機能付きだけでも、1体1000万クレジット(≒10億円)もするのです……』


「全ての機能付きだといくら?」


『い、一体当り3000万クレジット(≒30億円)です』


「それじゃあそのハイエンド機種をAIの人数分1億体注文しておいてくれ」


『!!!

 あ、あの!

 そのアバターには複数のAIが同時接続可能でして、人数分は不要かと!』


「ひとつのアバターにAIは何人ぐらい同時接続出来るんだ?」


『およそ10万体です……』


「それならアバターも1000体でいいのか」


『はい』


「だが、念のために3万体ほど買っておいてくれ」


『!!!』


「住むところは……

 今天使見習い心得たちが入居し始めている直径500キロ級リゾート惑星でいいか?」


『は、はい……』


「あそこにAI村を作って住んでくれ。

 そういえばしっぽ肉ステーキやトリュフはまだ数が無いんで、フードコートでの注文は許可制だったよな。

 全食品許可を与えるんで許可証を作っておくように。

 俺がサインする」


『よ、よろしいのですか……』


「当然だろう。

 あの食材を調達したのはお前たちなんだから」


『あ、ありがとうございます……』


「それから服を買ったり家具や生活用品も買ったりしなきゃならんよな。

 そうした小遣いとして1000億クレジット(≒10兆円)渡すのでカードを作っておいてくれ」


『!!!

 ほ、本当によろしいのですか?』


「もちろんだ。

 よく考えたらあれだけ働いてくれているお前に給料を払ってなかったからな、お前とお前の娘たちへの給料代わりだと思ってくれ。

 遠慮しないでお前たちの好きなものを買っていいぞ」


『あ、ありがとうございます……』




 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




 神域時間で1年後、3次元時間で6日後。

(タケルは神域と神界とケンネルを飛び回っているので、タケルの体感時間では10日後)


『タケルさま、アバターの第一陣が届きまして接続テストも終わりました。

 それで御礼かたがたお披露目に伺ってもよろしいでしょうか』


「おお、もう来たのか。

 もちろん構わんぞ」



 間もなくタケルの執務室にノックの音がした。


「どうぞ」


 まずドアを開けて入って来たのは妙齢の猫人族女性だった。

 その後ろには8歳ぐらいに見える女の子たちが並んでいる。

 よく見れば12の種族の子供たちで、皆可愛らしい服を着ていた。


「タケルさま、このようなアバターの体を賜りまして、誠にありがとうございました」


「「「 ありがとうございました! 」」」


「お、お前ひょっとしてマリアーヌか……」


「はい。

 そしてこの子たちにはケンネル派遣AI祠部隊の12人が接続しています」


「すごいな、見た目は完全にヒューマノイドじゃないか」


「あの……

 服を脱いで素のボディもお見せしましょうか?」


「それはヤメてくれ。

 そんなことしたら、家に帰った時にヨメたちから猫パンチが飛んでくる。

 あれそれなりに威力があるんだ。

 ヘタするとまたジョセフィーヌがバーサーカーになって暴れるかもしれないし」


「は、はい……」


「それでお前たちはケンネルでの任務を熟しながら、アバターと接続してヒューマノイドの食事や暮らしを楽しむことが出来るんだよな」


「もちろんです。

 任務待機中の娘たちとも複数接続可能ですし」


「それなら神域での暮らしを大いに楽しんでくれ」


「「「 ありがとうございます! 」」」




 マリアーヌとその娘たち一行はすぐにフードコートに向かった。


「いらっしゃいませみなさま、ご注文を承ります」


 因みにこのフードコートでは、短距離転移機能と重層次元収納機能を持った上級ウエイトレスドローンがいて、注文を取ったり料理を運んだりしてくれる。

 広大なフードコート内で、あまり客に歩き回らせないための配慮だった。


「それでは、『武者ラーメン』と『ちゅ〇るラーメン』と『カリカリラーメン』と『味噌ラーメン』と『焼き餃子』と『水餃子』と『焼売』をお願いします。

 あと『穀物粥』も」


「畏まりました、少々お待ちくださいませ。

 取り皿もたくさんお持ちしますね」


「あ、ちょっと待ってください。

 わたしには『ドックフード定食』と『キャットフード定食』と、あとこのピザメニューの1番から6番までをお願いします」


「わたしにはスパゲティー・カルボナーラの白トリュフ乗せと、あとこのスパゲティーメニューの1番から6番までをください。

 これ白トリュフ注文許可証です」



「……………………は?……………………」



 さすがは銀河の上級ウエイトレスドローンである。

 ずいぶんと人間的な反応だった。

 因みにAIアバターたちは、香りと食感と味とのど越しを味わったあと、胃に相当する部分には重層次元空間への転移装置を有しており、いくらでも食べることが出来るのである。



「みなさん、あまり一度に注文すると、食べているうちにせっかくの美味しいお料理が冷めてしまいますよ。

 今は注文はそのぐらいにしてみんなでシェアして、食べ終わってからまた次の注文をさせていただきましょうね」


「「「 はいお母さま 」」」


「…………………………」



 そうして、驚愕の注文が12回ほど繰り返されると……


「不思議ね、猫人族型のアバターだと『ちゅ〇るラーメン』がものすごく美味しく感じられるのに、『ドッグフード』はあんまり美味しく感じられないわ」


「そうね、ヒト族型アバターだと武者ラーメンやアワビやエビはものすごく美味しいけど、ドッグフードやちゅ〇るはそれほどでもないわ」


「やはりそれぞれの種族によって味の好みには大きな差があるのね。

 それを忠実に再現するこのアバターも素晴らしいわ。

 それでは今度は接続するアバターを変えて、その種族が好むお料理を頂いてみましょうか」


「「「 はいお母さま 」」」


「……………………………………」



 因みにマリアーヌは試飲と称して12種類のワインボトルを空けていた……



 こうして、フードコートでは、銀河フードファイトチャンピオンも裸足で逃げ出す驚愕の光景が繰り広げられていったのである。

 マリアーヌたちのテーブルを遠巻きにして、いつの間にか観客の輪が出来ていた。

 新たな料理の皿が届くたびに歓声が沸き起こっている……



 もちろんこうした実体験は今後のAI祠部隊による救済任務に生かされていくことだろう。

 それを考えれば彼女たちの食費などタダみたいなものであり、タケルも微笑みながら報告を受けていた。





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