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*** 10 講義開始 ***

 


「それでは魔法についての講義を始めさせて頂きますにゃ。

 まず、ほとんどの初級魔法は『転移』と『念動』の組み合わせで発動されますのにゃ。

 補助として『錬成』が使われるとも言われますけど、錬成も言ってみれば分子を念動で動かしているわけですから念動の一種なのですにゃ」


「なあ、転移ってさ、そもそもどういう原理で動くんだ?」


「今の地球の素粒子物理学では、宇宙の物質界には4つの根源的な力があるとされていますけど、ご存じですかにゃ?」


「うん、『強い相互作用』『電磁気相互作用』『弱い相互作用』『重力相互作用』だよね」


「実際にはそれに加えて『時間・次元相互作用』もあるのですにゃ。

 時間と次元を支配する力なにょですが」


「へー」


「その時間・次元相互作用をコントロール出来れば、通常の3次元空間を通らずとも重層次元を通じて物体を移動させられますんにゃよ。

 その重層次元の深さによっては、3次元空間内を見かけはほとんど瞬間移動のように移動出来ますにゃ」


「それって、光速を上回る速度で移動出来るっていうこと?」


「見かけ上はそうなりますにゃ」


「それ、アインシュタインっていうひとが相対性理論っていうもので不可能って証明してるんだけどどうなの?」


「3次元空間内で光速を突破するのは今の銀河技術でも不可能ですにゃ。

 光速に近づくほどその物体の質量が増大して、加速させるためのエネルギーが無限大に近づいてしまいますにょで」


「うん」


「ですが、重層次元内を通ればその制約はにゃくにゃります。

 にゃにしろ空間内の距離の概念が異なりますにょで。

 もちろん重層次元内でも光速は越えられませんけど。

 まあ言ってみれば重層次元空間を通って3次元空間をショートカットしているようなものですにゃ」


「なるほど。

 それじゃあさ、『念動』って何で物体を動かしてるの?」


「いくつかの方法があるんですけど、まずは重力操作ですにゃね。

 例えば重力を遮断したり打ち消したりして物体を浮かせるのに使ったりしますにゃ」


「魔法って、重力子グラビトンに干渉出来るんだ……」


「もちろん魔法でも出来ますけど、銀河世界でも重力コントロール技術は確立されていますにゃね。

 原理的に狭い範囲でしか打ち消したり強めたりは出来ませんけどにゃ。

 ですから惑星上でいくら使用しても天体の運行に影響は出ないのですにゃぁ」


「な、なるほど」


「地球では未だに化石燃料を燃やして電気エネルギーを得ていますけど、惑星上にゃらフライホイールの半分だけ重力を遮断させれば、出力は低いながら完全無公害の電力エネルギーが無尽蔵に取り出せますにゃ。

 まあそにょ辺りはニャサブローが銀河宇宙の講義の中で詳しく説明してくれますにゃよ。

 それから大規模に物体を動かす際にはダークエネルギーの反発力も利用していますにゃ」


「えっ、銀河宇宙ではダークエネルギーも利用してるの!」


「もちろんですにゃ。

 にゃにしろ宇宙全体に占める物質とエネルギーのうち、地球で言う通常原子は4.9%しかありませんからにゃあ。

 残りのダークマター26.8%とダークエネルギー68.3%も使わにゃいと、もったいにゃいですにゃよ」


「そ、そそそ、そうか……」


「それに通常物質の原子の種類は140ぐらいしかありませんし、その3割近くは放射性原子ですぐににゃくなってしまいますけど、ダークマターの原子は350種類もあって化合物も豊富ですからにゃ」


「あ、あのさ、ダークマターやダークエネルギーの『ダーク』って、それらが通常物質と相互作用しないんで『見えない』っていう意味で暗黒ダークって言われてるって聞いたんだけど。

 通常物質と相互作用しない物質やエネルギーを利用したり出来るの?」


「それは地球の観測機器が貧弱なせいですにゃ」


「そ、そうか……」


「そもそもダークマターの存在は、銀河系を含む銀河の形状への疑問から予言されたことですにゃよね」


「うん」


「例えば地球が太陽の周りを公転する周期は約365.25日ですけど、海王星の公転周期は165年ですにゃ。

 太陽に最も近い水星は88日ですけど。

 つまり、太陽系の重心である太陽近傍からはにゃれているほど、公転周期がにゃがくなるわけですにゃ。

 と言うことは、もし太陽と各惑星を結ぶヒモがあったとしたら、太陽に近い惑星のヒモほど太陽にぐるぐるに巻き付いているわけですにゃね」


「そうだね」


「でも、銀河系の精密観測をすると、銀河中心部から伸びる渦状肢は、銀河系が出来てから138億年も経ってるのに未だにその形状を保っていますでしょう」


「うん」


「にゃから地球の科学者は、『銀河系とは中心部の巨大ブラックホールとその周囲を巡る恒星系だけではなく、宇宙空間にも大質量の物体があるに違いない』、言い換えれば『銀河とは目に見えない大質量の円盤の中にある恒星系が円盤と一緒に公転しているのだ』というふうに考えて、ダークマターの存在を予言したわけですにゃ」


「そうらしいね」


「ということは、ダークマターは重力を通じて通常物質世界と相互作用しているっていうことですにゃよ」


「あ、そうか!」


「また、観測の結果、この宇宙全体が加速膨張してるとわかったことから、宇宙空間に斥力を発生させているエネルギーがあるとされて、それを『ダークエネルギー』と名付けたんですにゃよね」


「うん」


「つまりダークエネルギーは、通常物質のある宇宙空間を加速膨張させるほどの相互作用を通常物質空間と成していることになりますにゃ」


「そ、そそそ、そう言われてみればそうか……」



「それからこうした『見えないもの』の利用について、地球には面白いエピソードがありましてにゃ。

 19世紀の科学者が電磁波を発見したときに、莫大な敷設コストのかかる有線通信ではにゃく、電磁波を通じて遠距離無線通信をするということを考えましたのにゃ。

 それで政府や研究助成財団に研究費を依頼して廻ったんですけど。

 でも、政府にも財団にも『見ることも触ることも聞くことも出来ないものを使って、いったいどうやって話が出来るというのだね』と笑われて相手にされなかったというんですにゃよ」


「ははは、つまり見ることも触ることも聞くことも出来ないものでも、利用出来るなら問題ないっていうことなんだね」


「仰る通りですにゃ」


「それにしてもニャジローは地球に詳しいんだな」


「あの銀河の大英雄タケルーさまがご転生なされる地として、地球文明は徹底的に研究されておりますにゃ。

 銀河連盟大学の恒星系比較文明学科にも研究室がありますにゃよ。

 ボクたち3人は、タケルさまの訓練補助員として任命された後、連盟大学の地球研究室に所属して『地球学』の学位も取得しておりますにゃ」


「そ、そうだったんだ。

 タイヘンだったな」


「いえいえ、このような名誉な任務を与えられて、皆感激しておりますにゃ」


「そ、そうか……」



(それにしても、このタケルーさまが転生されたタケルさま……

 後進惑星で育ったのにすごい理解力と洞察力にゃ……

 そうか、後進星の住民は銀河人に比べて知識は劣っていても、理解力や洞察力は同等であることが多いって銀河人類学の教科書にもあったにゃぁ……

 これはタケルさまは、今後の努力次第ではもっととんでもないお方になられるかもだにゃ……)





「やあニャサブロー、銀河知識についての講義をよろしく」


「畏まりましたですにゃ」


「早速だけどさ、この銀河宇宙には1億2000万の知的生命体居住惑星があるって聞いたんだけど、種族としては何種族ぐらいいるんだ?」


「全部で35種族が確認されておりますにゃ。

 そのうち神界認定世界ににゃって銀河連盟を構成している恒星系は約3000万、その種族構成は22種族です」


「神界認定世界?」


「神界が定めた基準を満たして、重層次元の利用を認められた恒星系のことですにゃ。

 同時に重層次元を使った遠距離交易も始めて、銀河連盟にも加盟している恒星系がほとんどですにゃね」


「なるほど、その35種族の人口構成ってどうなってるの?」


「最も多くの人口を占めているのはヒト族で約30%、次が猫人族と犬人族でそれぞれ20%、残り30%を少数派の32種族が占めていますのにゃ」


「へー、ヒト族って多数派なんだ。

 それに猫人族と犬人族も多いんだな」


「はいですにゃ」



「ところで『神族』っていう種族はいるのか?」


「『天族』はおわしましたけど、『神族』はいませんにゃ」


「ん? どういうことだ?」


「140億年前のビッグバンから2億年ほど経って銀河系が形成され始め、18億年ほど経つと生命の発生に至りました。

 その後10億年を経たころに、『天族』の方々が降臨されて今の神界を作られたとされていますにゃ。

 その方々はご自分たちの事を『天族』と呼ばれていましたにょで、当時は『神界』ではなく『天界』と呼ばれていましたけど」


「その『天族』の連中ってどこから来たんだ?」


親宇宙マザーユニバースから子宇宙ベビーユニバースであるこの宇宙にやって来られたとのことです」


「多元宇宙論か……」


「そにょ『天族』である方々は、強力な魔法を駆使されて天界をお造りににゃり、併せて当時繁栄し始めていた生命の内、有望な種族に知性を与えて下さったにょですよ」


「それじゃあ今の神界の神々って、その『天族』の子孫なのか?」


「いえ、原初の天族の方々は、銀河宇宙の文明が順調に育ち始めたころ、銀河の民の中から優秀な者を集めて『天族の使徒』つまり『天使』に任命して天界に住まわせました。

 そして寿命延長や転移能力や魔法生命体創造などの高度魔法能力を授けて『天族』を補佐する仕事を任せられたんですにゃ。

 今の『神界の神々』とされる方々はその天使の子孫ですにゃね。

 その天使たちのにゃかには天族の方々から『初級魔法能力者』、『中級魔法能力者』『上級魔法能力者』と呼ばれる資格を頂戴した天使もいらっしゃいましたけど、『天族』に至ったわけではありません」


「『天族』は銀河の民との間に子孫を残せなかったのか?」


「どうも染色体の数が違い過ぎてそれは無理だったようです」


「そうか……

 それで『天族』ってどんな姿をしていたか記録は残っているのか?」


「もちろん映像もメッセージもたくさん残っていますにゃ。

『天族』の方々は、その7割が猿人族、猫人族、犬人族で、残り3割が他の種族のお姿だったそうです。

 手足がにゃがくなって指もはっきりされて、直立2足歩行されていましたけど、顔や体はほとんど元の動物のままのお姿でした」


「そうだったのか。

 それにしてもよくそんな100億年以上前の記録が残っていたな」


「『天族』の方々は魔法の能力もさることにゃがら、卓越した科学技術もお持ちでした。

 ですから自己修復可能なドローンにその記録を保存されたのですにゃよ」


「そうか、その天族が銀河の原初生命に最初に知性を与えたのか……」





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