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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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調査



化粧した上に仮面を被って学院に来たジュリ様が、放課後にお茶会室を借りていつメンの前で仮面を外した。


一度部屋の隅でアルフレド様と俺にだけ先に見せ、アルフレド様がOKを出した後に皆に見せるという手順を踏む。

沢山揃えて試しただけあってジュリ様の肌の色に合った白粉だった。首の色と違うとか浮いてるようには見えない。痣は薄ら見えているくらいだ。


「まぁ…!!なんてこと!」

「おお……」

カリーナ様とハイライン様が感嘆の声を上げる。ペルーシュ様も目を瞠って驚いていた。

リーベルトとプリムラ様はジュリ様の顔は初見だ。仮面を外すと聞いて粗相をしないか緊張していたようだが二人とも平気でホッとしている。

アルフレド様も「驚いたな…」と言ってたし、やはり大分違うらしい。


「こ、これなら素顔で登院しても大丈夫でしょうか…皆様どう思われますか…?」

ジュリ様も俺やモリーさん等の限られた人以外に素顔を晒すという事態に落ち着かないようにもじもじしていた。

「ええ!大丈夫ですとも!!…いつかわたくしの前でも仮面を外して寛げるようにわたくしが強くならなければと思っていましたが、先にジュリ様の方が解決してしまうなんて…。少し不甲斐無いですが、同時にとても喜ばしいですわ」

カリーナ様が感動して涙目になりながらジュリ様の両手を握って振った。

「カリーナ…ありがとうございます」

ジュリ様も少し涙目になった。友達と素顔で向かい合えるというのはジュリ様にとっても嬉しい事だろう。

カリーナ様がジュリ様と友達でいてくれて良かった。


「お化粧をして登院、ですか…」

プリムラ様は化粧が世間的にどういうものかちゃんと知っているようで思案顔になった。情報通だしペルーシュ様も知ってそうな気がする。何も言わず無表情だけど。

だが他のメンバーはまだ貴族純粋培養なので化粧は役者が使う道具らしいというふんわりしたことしか知らなかった。何が問題なのだろうとプリムラ様に目を向ける。その視線を受けてプリムラ様も結論を出したようだ。


たとえ娼婦・男娼の使う物と知っていたとしてもそれを口にするのは学院では憚られるし、化粧をけしからんものと触れ回ればシレンツィオ公爵家に睨まれるかもしれないとなればジュリ様に悪い事にはならないだろう、と。

俺に風評被害が出る可能性はあるが…それは俺も承知してるとわかるだろう。


「…良いことと存じます。仮面を被っていることでジュリ様に向けられていたうっすらとした不信感や壁が取り払われて社交がしやすくなりますし、ジュリ様の容貌を蔑む者も減ると思いますわ。化粧をしていると知っても化粧がどれほどの物か使わないとわかりませんしね……そうなると、これから化粧品が売れそうですわね」

「マルシャン商会に窓口を用意してもらえるようお願いするつもりです」と言うと「あら、抜け目ないこと」と細めた目で見られる。

「プリムラもそう言ってくれるなら…」とジュリ様も決心したようだ。毎朝メイクしてくるのは大変だろうけど、学院は始まるのが結構遅い時間なので何とかなるかな。



女子が三人でトークしている間にこっそりハイライン様に「…やはり恐ろしさがかなり抑えられているんですか?」と小声で聞くと変なものを見る目で見られる。そんな目で見ないでほしい。

「…わからんのか?」

「ジュリ様のお顔を恐ろしいと思ったことないので…」

「ああ、そうだったなお前は… かなり軽減されている。少しだけ背中に怖気が走るが大したことは無い。その辺にいるそばかす顔の令嬢くらいに見えるまでになるとは、化粧とはすごいな…」


ジュリ様の今の状態が他の人にどう見えるか把握出来た。

顔の約半分が赤い痣に覆われているがそれも薄らしたもの、となるとそばかすがあるのと同等くらいの容貌らしい。背中がぞわっとする、というのは魔力の影響が少しだけあるって感じだろうか。


「…アマデウスを見てると、世の中には色々な人間がいると思い知らされるな」

ふと、ハイライン様がぽつりとそう言った。

「はぁ、そうですか?」

「ハイラインはアマデウスのおかげで考えが大分柔軟になった」

黙って佇んでいたペルーシュ様が唐突に喋ったのでびっくりした。

「へ?」

「ジュリエッタ様の顔に動じない男子が、同い年で身分が自分より下で、しかも剣術はからっきしだったというのは、ハイラインにとって大きな衝撃だったのだろう。勿論、私にも」

ペルーシュ様は俺を過剰評価してる節がある人だが、ハイライン様が渋い顔で黙ったので間違ってはいないらしい。褒められ…てる…のか?

剣術がからっきしってところが地味に堪えたのかな。軟弱な男と思ってた人物が…みたいな。



門に向かうまでに少し皆と離れたところで、ひとまず仮面を付け直したジュリ様が俺の服の袖をつまんだので顔を向けた。

「あの……昨日はすみません、デウス様が特に叱られることになってしまって…わたくしからお願いしたようなものでしたのに」

ああ、キスしたことを叱られたやつか。

「いいえ、先に願望を口にしたのは私ですしね」

「あの、…あれに懲りずに…というのは変ですね、ええっと…」

ジュリ様が言葉を選びながら俺をちらちらと窺う。ああ、何が言いたいかわかった。

「…勿論、懲りてません。今度は見つからないように気を付けましょう」


少し屈んで囁くと彼女の耳が赤くなって少し俯いた。

ハァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~、かわいい。


こんなに可愛いんだから素顔を晒したらモテちゃうんじゃないかと少し心配したけど、美人判定ではないらしいと聞いてちょっと安心してしまった。申し訳ない。


例によって納得はいってないけどな。


むちゃくちゃかわいいだろがい俺のジュリ様は!!!!!!!!!!!!!!



ジュリ様が浮気するとは思わないけど、万が一他の人に心変わりされてしまったらどうしよう…、という不安はどうしても湧いてしまうのだ。これはもう、唯一として好きなのだから仕方がないことだと思っておく。



帰るとディネロ先輩から昨日出した手紙の返事がもう来ていた。ちょっぱやで返事出してくれたようだ。




※※※




二日後、授業後に王都の学院のすぐ近くの貴族御用達の茶店でディネロ先輩と落ち合った。

食器や小物は煌びやかだが内装はシンプルで落ち着いていて上品な印象の店だった。二階の個室で窓から王都の街並みが見られる。


部屋の入口近くに衝立と侍従が控える机があり、持ってこられた軽食やお茶を侍従が毒見することも想定しているようだ。ポーターに控えてもらっているが毒見は必要ないと手で示してお茶を飲む。


「久しぶり…ですね、アマデウス…様」

「良いですよ、公の場ならともかくこういう場では学院と同じで」

「そうか?…助かる」

「卒院式以来だから…確かに久しぶりですね、ディネロ先輩」



雪の時期の前に卒院式はサラッと行われた。

在院生は登院しなくてもいい。卒院生と別れの挨拶をしに来る後輩はまあまあいるが、社交界や職場にそのままスライドするだけだったり、離れ離れになる場合は式が終わってから別の場所で落ち合って食事会をしたり後日会って別れを惜しんだりするから、学院から人がはけるのは割と早いのだそうだ。

花束とか持って行った方がいいのだろうかと思ってポーターやメイドに聞いたところそういう贈り物を直接持っていく人はほぼいないというので手ぶらで行った。餞別に物を贈るんなら家に送るらしい。


俺はディネロ先輩を見送る為に顔を出した。

なんとエイリーン様も見送りに来ていた。

三人で図書室に寄り少し思い出話をして、「寂しくなりますね」と言うと「ええ…ディネロ先輩には色々お世話になって」とエイリーン様も寂しそうだった。

「まぁ、これからも商売で何かとお世話になるかと思うので手紙は出しますが」と俺が言うと、エイリーン様がハッと『その手があったか』という顔になり、「わたくしも、勉強でわからないところがあったらお手紙で質問してもよろしくて?ご迷惑でなければ…」と言った。

ディネロ先輩は「あ…ああ。勿論だ」と虚を突かれたように了承していた。



そんな卒院式以来の再会。

予め手紙で伝えた化粧品の販売窓口の話と、ジュリ様の使っている化粧品の成分に体に悪いものが入っていないかも調査してもらいたかった。

前世では昔の白粉に鉛が入っていて病気になったとか有名な話だし、食べ物を使った化粧品や石鹸でアレルギーが出たりする事件もあった。こちらじゃ化粧品がマイナーだからそういう辺りがまだハッキリしていない危険がある。

有毒な成分が入っていないか、愛用していた人間が体調不良を訴えたことはなかったか、食べ物が入っていないか、この辺り。


「なるほど、君の婚約者が…。わかった、化粧品を扱ってる店もいくつか知っている。販売するからには安全性を確かめておいた方がいいな」

「危険がありそうな物は出来れば材料とかを見直すように勧告したいですけど…流石にそれは難しいですかね」

「是正しろ、売るのを停止しろと言えるのはその業者が所属する領の領主の管轄だな。まぁ、商会が出来るのはそれらをおすすめしないことくらいだ」

「調査にかかる費用は俺が全部出しますので」

全部出すってさらっと言えるのかっこいいよな。ちょっと言ってみたかったんだよね。

「全部?!いや、全部はいい。…商会がこれから扱う商品に関わる重要な調査だ。こちらも出す。…半分出してくれると助かるが」

「では半分で。ありがとうございます」

散財したい訳ではないので有り難く前言を撤回した。

「いや、黒服で儲けさせてもらった上に、化粧品も利益が出せる可能性は高い。良い話を持って来てくれたと感謝するのはこちらの方だ」

「いえいえ、こちらこそ毎度ご協力感謝します」


軽食で出て来た果物のパイを切って口に入れる。うん、美味い。毒見と称してポーターにも食べさせた方が親切だったかもしれない。

こちらのパンやお菓子の原材料も小麦…で相違ないよな。

お茶は紅茶、花弁茶、ハーブティーみたいなのが主でウーロン茶も麦茶も緑茶も無い。そういえば麦茶は日本と中国近隣くらいでしか飲まないと聞いたことがある気がする。

……あれ?そういえば緑茶と紅茶って茶葉自体は同じだったような。


「ディネロ先輩、緑色のお茶って知ってます?」

「ああ、聞いたことがあるな。東の方の茶だろう。あまり流通してないが」

「そうですか…買うとしたらおいくらくらいで?」

「そうだな、確か…」


珍しいということで紅茶よりも高く売られているようだ。一瓶注文した。

こちらの緑茶は紅茶と同じ茶葉じゃないのかもしれないが、懐かしい味がするかもしれない。

そういえばこちらにはコーヒーも無い。探せばあるのではないだろうか。今まで別に困ってなかったので探してなかったが、今度聞いてみようかな。

コーヒーはそこまで好きではなかったけど、米とか…味噌醤油は無理でも…チョコレートとか。でもどこで聞いたんだそんな食べ物、と言われたら……ああ、バドルに聞いたことにさせてもらおうかな。



「ところで先輩。…エイリーン様とはどうなんです?」

ディネロ先輩は真顔のままぴたっと固まって動かなくなったが、耳が少し赤くなった。間違い探しか。

「……どう、とはなんだ」

「いや…文通してらっしゃるんでしょう?」

卒院式の日、二人ともお互いに好意を持ってそうに見えたので気になっていたのだ。探りを入れてみた。

「…勉強でわかりにくいところの質問を手紙で貰っているだけだ。家庭教師と生徒のようなものだ。女神が僕を男として好いている訳ないだろう」

「め、女神って呼んでるんですか」

「女神だと思わないのか?」

「人だと思いますが…」


思わずマジレスしてしまった。

いや、俺もアルフレド様にしょっちゅう『大天使~』って思ってるし推しとかに『神~~!!!』と思う気持ちは理解出来るのだが、そういうノリではなくマジの目で言われたので軽く引いてしまった。

とりあえずディネロ先輩がエイリーン様を半端なく美しいと思っているのはわかった。かなり好き寄りと考えていいんだろう。表情に出さないからわかりにくいが。


「…やっぱり変わってるな君は。そもそも彼女は君が、っ…」

「俺が?」

「…、いや、君が…僕に紹介したんだろう」

「まぁそうですが」

「……もし、万が一…女神と僕が、想い合う仲になったとしても。新興貴族の男爵家なんぞに女神を嫁に出すなんてランマーリ伯爵家は許さないだろう。僕は男爵位を継がねばならないから婿入りは出来ない。…憧れるくらいが関の山だ」


うーん、言われてみれば…。

伯爵位から男爵位にというのは結構な格下げだ。縁談になるとしたら格下が格上に入るものだが、ディネロ先輩は男爵になる為に貴族学院に通わせられた身。玉の輿が狙える絶世の美女であるエイリーン様を格下に嫁がせるなんて言語道断、確かに貴族的に考えればその通り。

せめて子爵家くらいだったら可能性がない訳ではないだろうが…。


………陞爵って、どうすれば出来るんだっけ…


「……俺に出来ることがあったら言って下さいね。出来る限り力になりますよ」

「…気持ちだけ頂いておく」



エイリーン様のお友達にちらっと聞いた話だが、エイリーン様は基本的に男子に自分から近寄っていかないという。惚れられないようにだろう。俺は音楽好きの友達認定で婚約者がいたから例外だったんだろうけど。

そのエイリーン様が自分から卒業式の見送りにまで来たのだ。

大分ディネロ先輩に好意的だったしぶっちゃけ脈アリアリだと思うんだけどな…。しかし無責任なことは言わない方が良いか。突っ込んで聞くのは早すぎたかなと反省する。




俺ジュリ様に婿入り出来る立場で本当に良かったな…。

ジュリ様が婿探しに難儀していたとはいえ、伯爵家にもらわれてないと結構厳しかったんじゃなかろうか。改めてティーグ様に感謝だ。




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