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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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五分間の熱




「……?あれ…?」

「…デウス様、気が付かれましたか?」


―――――――――――ジュリ様を見上げている…?え?


気が付いたら俺は何故かベッドに寝転んでいた。ベッドの脇には素顔のジュリ様がいる。

「…んっ?俺、何で…」

起き上がると妙にだるい。何でこんなに体が重いのだろう。そしてここは何処だ。

「その…お茶をしている途中に体調を崩されたのです」


そうだ、ジュリ様の妹、ロレッタ様とお茶をしていた。

ロレッタ様は薄い茶色の縦ロール髪に赤い瞳の美少女だった。俺は縦ロールを見るとフランス人形みたいだな…とつい思ってしまう。リアルなフランス人形見たことないし完全なイメージだけど。


顔にそばかすなどもないしこっちの世界的にも美少女っぽかった。謎にねちっこい感じの猫撫で声で話す。ジュリエッタ様から妹の話は全然聞いたことが無かった。母親も違うし今までは跡継ぎの座を取られるかもしれなかった相手だ、仲が良くはないんだろう。

ケーキは少々甘さがくどかったが、他愛のない話をして穏やかにお茶出来ていたはず、だけど…



記憶が曖昧だ。

ついさっきまで…知らない声を聴いて…何か口が勝手にぺらぺらと話していた気がするのだが…それは夢か?



「うーん…ロレッタ様とお茶していたことは憶えてるんですが…」

「…治癒師に見てもらいましたが、貧血だろうと。ご気分はいかがですか?」

「あちゃー…ご迷惑をおかけしたみたいで…もう大丈夫です」

少し立ちくらみがしてふらついた。

「足元がまだ…もう少し休んでいて下さい。よければ水を」

「ん…はい。もらいます」


前世だと貧血っぽくなるのはしょっちゅうだったが、この体ではなったことなかった。有り難いことにこの体は丈夫で体調を崩すことは滅多にない。

貧血というより熱が出た後の感覚に近い気がする。風邪?兆候とかなかったけどなぁ…


ベッドに座って水を飲み一息つく。ジュリ様が濡らした手拭も渡してくれたので顔も拭く。少し頭がはっきりしてきた。

ここは多分客間だろう。モリーさんとポーターが扉近くに控えている。ポーターは目を瞑っているように見える……ああ、ジュリ様が素顔だからか。部屋と窓の外は薄暗くなっていて、帰る予定の時間はとっくに過ぎているのがわかった。

「もう暗くなってしまってますね、長居をしてしまったようで…申し訳ない」

「いいえ、どうか気になさらないでください。デウス様が長くここにいて下さるのは、わたくしは嬉しいですし…」

気を失って寝こけてるところを見られていたと思うと少し恥ずかしい。

「寝言で変なこと言ってませんでした?」

「っ……い、いえ。そんなこと」

軽口だったのに、ジュリ様が動揺した。何か言ったみたいだぞ俺。

「…なんて言ってたんですか?」

「いえ、その、本当に…変なことでは…」

「では教えて下さいますよね」

「…その…」

ジュリ様が本当に困っているみたいだったので追及はやめるか。気になるけど…何言ったんだ…。

「…ジュリ様がご不快にならなかったならまぁ、いいですが」

「まさか!うれし……かったです、ゎ…」


ジュリ様は真っ赤になって視線を落とした。




えっ??!!??俺もしかしてエロいこと言った?????!!!

ジュリ様とエロいことしたいとか言った???!!!???




愛の告白は既にしてるし、ここまで照れないと思う。他に寝言で言いそうなこと… …破廉恥なことくらいしか思い浮かばん……

時々 ~あ――――可愛い、ハグしてキスしていいですかね駄目ですか駄目ですよね…~と思うことはあるけど、つーか婚約者ならキスまではありなのかどうか、誰かに聞こうと思ってるけど気恥ずかしくてまだ聞けていない。


俺はもう長い間20歳くらいの気分で過ごしているのでジュリ様がまだ13歳だということはちゃんと心得ているしまだ手を出すつもりなんてない。せめて高校生くらいになるまでは罪悪感もあるので…。




…が…願望が漏れ出たか~~~~~??!!でも漏れ出たとしてもセッ…したいとまでは思ってないし言ってないはず、さすがにそこまで言ってたらもうちょいジュリ様も引いてるだろ。

ならやっぱり……。




「私もしかして…キ…口づけしたいとか、言ってました…?」

「!っぁ…」


ジュリ様が赤い顔で俺の目を見た後戸惑うように視線を彷徨わせる。


当たってそう―――――――!!!!!!


俺は恥ずかしさに口元を手で覆った。

「あ~~~~…その…お気になさらず…忘れて…は無理か…」

いやもう本当にスンマセンと思ったけど嬉しいと言ってくれたんなら謝るのも変かな…。その返事は俺も嬉しいです。大人しく悶えるしかない。



つーかお互いにキスしたくても二人きりになるチャンスが無いんだよな…。

もしかして高貴な人々は侍従の視線とかは気にしないのだろうか。俺には無理だ。この会話をポーターとモリーさんに聞かれていることもかなりヤバいんだが????恥ずかしいが????



――――――するとポーターが目を瞑ったまま唐突に「五分」と言った。




「五分だけ、我々は…んん″ん…失礼。お手洗いに…」

横のモリーさんがいつの間にかポーターの上着の裾をくいくいと引っ張っていた。そしてゆっくり二人は部屋を出て扉を静かに閉めた。



?!


ええぇ?!?!



もしかして気を利かせてくれたのか…?あの堅物のポーターが…!?隣のモリーさんにそうしろと圧力をかけられていた感じではあるが…。

ジュリ様も呆気にとられた顔をしていたが、30秒ほどでハッとした顔をして俺を見た。


「……デウス様、その…あの」

「は、はい」

「…抱きついてもよろしいでしょうか」

「へ?!あっ、ハイ!!」


脳から直接返事が出た感じだった。勿論よろしくない訳はないが。立っていたジュリ様がベッドに腰かけている俺にゆっくり寄ってきて俺の肩口に顔を埋めた。その背中に恐る恐る手を回す。




…………―――~~~~~~~~~~~~――――!!!!!




言葉にならない高揚を喉元に感じる。温かくて柔らかい女の子の体が腕の中にある。


庭の東屋でお茶していた時も抱き合っていたけど、あの時は彼女の頭を肩口に乗せて、俺が背中を撫でていたくらいで体は少し離れていた。今はお互いの体が密着している。服が擦れる音が大きく聞こえる。髪から良い匂いがするんだよな~~~~~~~~~~~~あまり嗅いでると変態みたいだよな、鼻息が荒くならないように気を付けないと……



ドキドキしながら頭の中でぐるぐるしていると少しだけ体を離したジュリ様が至近距離でじっと見つめてきた。


「…お慕いしております…」


と小さな声でジュリ様が言った。返事を、と思ったけど喉は言葉と唾を飲み込んだ。彼女は猫の親愛のしるしみたいにゆっくりと何回か瞬きして、目を閉じた。微かに震えている睫毛……睫毛なっが。少しだけ顎を上に向けた顔。口紅も塗っていないだろうに、桃色の綺麗な唇。



心臓がかつてないほどうるさい…… と思いながら顔を少し傾けた。






※※※





扉のノックが聞こえて慌てて体を離して、ジュリ様はさっと仮面をつけた。モリーさんとポーターがゆっくりと入ってくる。ジュリ様の仮面に気付いたようでポーターが限界薄目から普通の目の開き具合に戻る。

「ただいま戻りました…アマデウス様、お体の方はどうですか」

「えっ、ああ、はい、もう大丈夫です」

「それではそろそろ…」


そっか、お暇しないとな。

まだ顔が赤いだろうな…視線をうろうろさせてしまう。ポーターも何となく落ち着かないように視線をあさっての方向に向けている。侍従にキスしたことを察されているのも恥ずかしいがもうそれは仕方ない。



名残惜しいですがまた学院で、と挨拶するとジュリ様は照れたように笑ってくれた。何だか少し雰囲気が変わった気がする。遠慮がちだったのがなくなったというか…。庭のやり取りや、キスしたことでようやく俺の愛が伝わったのだろうか。そうなら嬉しい。顔がだらしなくなる。




玄関で「体の方はもう大丈夫か」と声がかかった。シレンツィオ公爵とタスカー侯爵が近付いてくる。

「はい。ご心配をおかけしてすみません、お世話になりました」

「気にしないでほしい。うちのお抱え治癒師を同行させるので、不調が出たら彼に」

「え、そんな… …お気遣い頂いてありがとうございます」


公爵家お抱え治癒師というと多分日本では名医と言われるレベルの医者だ。ちょっと貧血起こしただけの俺に付き添わせていい人材か?人材の無駄遣いでは?

丁重に辞退したかったが、コレ断れる感じではないなと空気を読んだ。公爵の低音ボイスは圧が強い。有無を言わさない感じの良い声。



ジュリ様のお父上、ティーレ様は黒髪に赤い目の美青年だ。黒髪に赤い目!!やっぱこのカラーリングめっちゃクールだ。好き。まだ三十代くらいだと思うが、体格と声と雰囲気に貫禄がある。そして顔立ちがジュリ様と似ている。ジュリ様を男にして大人にしたらこんな感じかもしれない。常に冷たい表情をしているように見えるがかけられる言葉は案外優しい。



タスカー侯爵は空色の髪に少し垂れた目尻の美青年だ。女性にモテそうな甘いマスク。そして俺を胡散臭く思っているのだろう剣呑な目。まあ俺を怪しむ気持ちは俺も理解できるわ…と思っていたが、帰りの玄関で見た顔は普通に心配そうだった。ジュリ様も懐いているみたいだし、根が優しいんだろうな。






帰りの馬車で「…ポーター、『五分』のやつ、ありがとう…でもその、俺がジュリ様と…したって話はこっ恥ずかしいから出来ればティーグ様には報告しないでほしいんですけれども…」とお願いすると「はぁ―――…はい、わかりました」と溜息つきながらも頷いた。


ポーターは細かく正確に報告書を書きたがるタイプだから断られるかと思ったが助かった。前に見せてもらった報告書には俺が一日に何回トイレに行ったかも書いていた。いらんだろその情報。泌尿器科の病気になった時くらいしか記録する必要のない情報だと思う。


「大変だったよね、今日。心配かけてごめん」

「…まぁ、大変でしたが。…私の仕える主が、貴方で良かったと思いましたよ」

「…へ?どういうところで??」

「…秘密です」


疲れを滲ませながらも妙に爽やかにポーターが笑った。



馬車で頭の中を支配していたのは、初めてキスした感動を歌う某アニメソング。ド単純に今の気持ちに合う。

そういえばあのアニメはコロッケ作る歌も有名だな…コロッケ、新メニューに出そう。



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― 新着の感想 ―
あの「キャベツはど〜した〜?」で終わるヤツですか、懐かしいですねぇ。
『聞き耳』の魔導具付いたままじゃないですか!最高です!
それ、コロッケ見る度に「はじめてのちゅ○」を思い出しちゃうんじゃないの!?w しかし、少し記憶が残ってたようだし魔力多いのかな、多才ね!
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