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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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美形揃いの世界

「アナスタシア王女殿下にご挨拶なさっているのは侯爵令嬢のエリザベート様ですわ。社交界の華と呼ばれるだけおありの素晴らしい美貌をお持ちで…アマデウス様、あの御方がたには気軽に粉をかけてはなりませんわよ」

茶目っ気を含ませてそう言ったのは小さい頃からの友人、子爵令嬢のリリーナ。

リリーナも華だよ。

「見てください、アナスタシア王女殿下を…なんて可憐なのでしょう…黄金の髪が波打ってキラキラと…」

うっとりと青い目を潤ませて俺にそう言ったのは子爵令息リーベルト。リーベルトとリリーナは兄妹だ。

お前も可憐だよ。


幼馴染と言ってもいい親しい二人に、俺はまだ言えていないことがある。






“―――――――――――君達と、あの王女様と令嬢、そこまで変わらなくない…?”






「王女殿下を口説いたりしません、というか私が普段から女の子を口説きまくってるみたいなことを言わないでもらえますぅ?」

俺は笑いながら飲み物で口を湿らせた。薄いレモン色の飲み物は、地球のアセロラジュースみたいな味がする。

「なるほど、口説いてなくても寄ってくると?流石、“音楽神に愛されし者”ですわね」

「他領でも知られ始めてるらしいですよ。スカルラット領に天才がいるって」

二人の息の合った揶揄いには愛想笑いを返しておいた。




俺の今の名前はアマデウス・スカルラット。12歳。

元々は男爵令息だったが、訳あって今は伯爵令息。

そして、地球・日本国からこの世界への転生者である。



前世で死んだ時のことは苦しかったこと以外あまりはっきり覚えていない。生まれつき体が弱くて風邪を拗らせるたびに死にそうになっていたので、多分風邪だったと思う。


あまり外で遊べない代わりに俺は家の中で出来る趣味が多く、中でも音楽に夢中だった。

3歳から習っていたピアノは特技になり、出来れば音大に行きたいと思っていた。ミュージシャンになれるほどの才能があるとは思えなかったが、何かしら音楽に携わる職業に付けたらいいなと夢見ていた。

大学受験を迎える前に俺は死を迎えてしまったが…


中学までは休みがちで友達も全く出来ず寂しい子供時代だった。

しかし色々と試した健康法の何かが効いたのか高校からはそこそこ通えるようになり、女の子とは縁がなかったが地味メン友達は数人出来た。これから自分なりに青春を謳歌するんだ、と、心配かけた両親にも親孝行できたらいいな、と… 思っていた所だったのに。


―――過ぎたことは仕方がない。とはわかっているが思い出すとセンチメンタルになってしまう。

弟の麗二…ちょっとひねくれてたけどしっかり者だった弟が、きっと親孝行してくれるだろう。





―――――何だかムチャクチャ苦しくよくわからないまま死に、おそらく死んだこともわからないしどれくらい時間が経ったのかもわからないまま、俺は暗く息苦しい場所から急に解放された。

ぼんやりした視界では何が起きているのかさっぱりわからず、ぽかんとしていたら思いっ切り尻か何かを叩かれて俺は火が付いたように泣き出した。すると周りは安心したような笑い声に包まれた。

おい、俺は泣いてるのに何わろとんねん。鬼か?


似非関西弁で内心動揺していたが、だんだん理解出来てきた。

そう、俺は赤ん坊だったのだ。

前世の記憶を持ったまま転生したのである。



17歳の記憶を持ったまま赤ん坊として世話されるのは羞恥心がすごかった。

三週間くらいで慣れたけど。


赤ん坊から2歳くらいまでは人間として出来上がるのにとにかく必死だった。

子供って、感情や体のコントロールがきかないんだな…。

漏らすし、カッとなって泣くし、上手く喋れないし、後先考えずに欲望で体が動く(例:目の前のモノを口に入れたくなる衝動を抑えられない)。頭の中で制御しようとしてもうまくいかなかった。身体と精神は繋がってるのだ。きっとこの体が生活に慣れるまでは仕方なかったのだろう。


周りの状況や文化に想いを巡らせることが出来るようになったのは3歳くらいからである。

ここ…地球ではないのでは…? とは思っていた。

生活様式は日本人が考える典型的な昔のヨーロッパっぽい雰囲気なのに、周りの人間の髪と目の色が異様にカラフルだからである。マンガとか小説とかイラストでしか見たことない髪色!

たまに奇抜な色に染めてる若者とかオバチャンは日本にもいるが、染めた髪特有のプリン現象や違和感はない。髪が緑とか青とか紫とかピンクとか、地球で天然じゃ有り得ない色は俺が勝手に違和感を覚えているけども。


俺自身の髪もビビッドな赤である。目は新緑を思わせる鮮やかな緑。クリスマスを連想してしまう。

この世界にクリスマスはない気がするからいいが。



何より俺が嬉しかったのは顔が良かったことだ。

5歳の頃には美ショタの予感がひしひししてきてワクワクしていた。

様付けで呼ばれていたことから金持ちか貴族であることはふんわり予想出来たのだが、使用人も皆揃って顔が良いことは不思議に思っていた。

うちってもしかしてアイドル事務所みたいな所か?アイドルデヴューするまでの間ここで使用人のバイトしてる感じ?

そうなると俺は社長か重役の息子かもしれない…

将来、アイドルをプロデュースしたり、作曲家を発掘したり、編曲したり……音楽に携わる仕事につけちゃったりなんたりして……!??!

あわよくばその中の可愛い子の一人と良い感じになっちゃったりなんかして…!?!?

5歳までの俺はそんな希望に胸を躍らせていた。



――――全然違うことはすぐ悟った訳だが。

中年も普通にいるんだからアイドルではないわな。年嵩の使用人も皆イケオジと美熟女揃いだ。うちの親、顔で採用決めてんのか?筋金入りの面食いかな? と思っていたら…

初めて屋敷の外に買い物に出かけた俺は目を疑った。





道行く人のほとんどが美形だったのだ。





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