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【書籍発売中】美形インフレ世界で化物令嬢と恋がしたい!  作者: 菊月ランララン


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朝の詰問



「アマデウス様…起きて下さい…」

「…はっ。ん…?アンヘン、どうかした?」


アンヘンにユサユサと肩を揺すられて目を覚ました。


いつもはアンヘンに打楽器のどれかを少しず~つ大きく鳴らして起こしてもらっている。声をかけてもらうより楽しく起きられるし、アンヘンも慣れてからは何だかリズミカルで楽しそうだし良い起こし方だと思う。

だから普段はこんな風に起こされることはない。


俺は時計に目をやる。

この世界にも前世とよく似た時計があるのだが、数字の位置が違う。

数字はこの国の言語のものだし、かつ、前世では12が頂点にあったが、この世界では頂点が1から始まる。一つズレているのだ。一つだけとはいえ最初は違和感がすごかった。流石に慣れたが。

「寝坊…じゃないよね、まだ7時だし…」


朝の7時、つまり前世だと朝6時である。

貴族の朝は結構遅く、前世の10時くらいに朝食だ。前世の12時くらいから仕事に取り掛かり、おやつの時間にお茶と茶菓子(結構ボリュームがあるものを出してもらえる)を食べてから、数時間後の夕食という流れ。


もうすぐ通う予定の学院も、授業が始まるのは12時…つまり前世でいう所の11時から。朝がのんびりなのは大変有り難い。少し前に学院入学試験というのを監督官の監視の下で受けさせられたが、試験とはいっても入学することは決定している。どんなに成績が悪くても貴族の子女なら入学だけは出来るのだそう。この試験の成績でクラス分けするのだとか。



「朝早くに申し訳ございません、しかし…伯爵様とメイド長が扉の前までいらしていまして。寝巻のままでいいと仰っていますが、お通ししてもよろしいでしょうか」

「えっ…何で来たの?」

「…昨日のお茶会でのことかと。私の報告をご覧になったのでしょう」



えっ何、怒られるようなこと書いたん?

と、言いそうになって いやその場合 怒られるの俺だ… と気付いた。

気付かないうちにアウトなことした……?




とりあえず俺はティーグ様とセイジュに今更寝巻を見られるくらいどってことないので入ってもらうことにする。

その前にアンヘンが用意してくれた盥のぬるま湯で顔を漱ぎ、部屋備え付けの洗面台でうがいをして、髪を梳かしてもらって、簡単に身嗜みを整える。寝癖直し水というスプレーボトルがあるのだがそれからはハーブっぽい匂いがする。虫除けにもなりそう。

俺の髪は梳かしてもらってもどうにも後ろ髪が外に跳ねるのだけど。



アンヘンが扉を開けるとティーグ様が普段の優雅さがウソみたいに早足でズカズカ入ってきた。


「アマデウス!!お前、昨日の茶会でシレンツィオ公爵令嬢と懇意になったというのは誠か」

「はぁ…懇意とまではいかないかと思いますが、仲良くお話しはしましたよ」

男女で懇意という言葉を使うと一気にやらしく感じられる(偏見)。誤解を招く言い方をするものではない。

「…お前だけが、ジュリエッタ嬢の素顔が平気だったというのは?」

「はい、平気でしたが…」

「………ハァ―――――――――――――――――……」



ティーグ様に溜息を吐かれるの、地味にショックだな…。俺が奇行に走ったと報告を聞いても大体笑い飛ばしてくれるのに。セイジュも沈痛な顔をしている。

なんだなんだ、何をしでかしたんだ俺は。



「…お前…女好きとは知っていたが、あの…ジュリエッタ嬢を口説くとは思わなかった…どうするつもりだ、シレンツィオから縁談を持ちかけられるかもしれんぞ」

「……ジュリエッタ様との?公爵家と、だなんて…もし来たらとても良いお話では?何かまずいのですか?」



そういえばこの国の貴族社会では、跡継ぎは男女関係なく基本的に一番上の正妻の子だ。

そして貴族男性だけではなく、貴族女性も結婚相手を複数持つことが可能。

第三夫までいた女侯爵が二世代前にいたと本で読んだ。ただし女性が複数夫を持つ例は一夫多妻に比べたらとても少ない。まぁ、女性が複数だと子が沢山生まれる確率が上がるという利点があるが逆だとそれはないからな。

平民は一夫一妻しか許されていない。裕福な人間が愛人を囲う例は多いようだが。


ジュリエッタ様は跡継ぎだったはずだ。

縁談が来れば俺が婿入りということになるかと思うが…俺は跡継ぎじゃないし問題ない。はず…。

公爵家の婿に俺が相応しいかどうかという問題はあるが。



「……アマデウス様。ジュリエッタ嬢と結婚してもいいと思っていらっしゃるのですか…?」

セイジュが険しい顔で言う。

「…今のところ嫌だとは思っていません。公爵家の婿として俺が相応しいかどうかというひっかかりはありますけれども。というか縁談が本当に来た訳ではないんでしょう?」

「ええ、しかし目は付けられたはずでございます」

「仲良くした所を茶会で大勢に見られているしな…そんな中縁談を断るのは公爵家から相当な反感を買う」


目を付けるって… ヤンキーか?


そもそも貴族なんてのは上の身分の人に逆らうことなんてほとんど出来ないと思った方が良い。上司と部下みたいなもんと言っても、上司が下の者の人権まで握っているのである。信頼関係があれば対等な立場でものを言うことは出来るが、それは上の者が『許す』という前提があって出来ることだ。『意見を言うことを許してもらっている』という状態だ。

マジで逆らうことがあれば、社会的に殺されることを覚悟するか、その上の者に逆らうに至る正当な理由・証拠等をしっかり揃えてからかでないといけない。世知辛い。


だから仲良くなるのは嫌われるよりはずっと良いはずだ。叱られるなんて心外である。




「……嫌だとは思っていない、そう仰るのはアマデウス様の優しさだろうと存じますが、いいですか。差し出がましいことを申しますが…婚約して、いざ褥に入ったとしてやはり無理だと仰っても遅いのですよ。そんなことになってしまえばジュリエッタ嬢により深い傷を付けることになるのです、おわかりですか?」




セイジュは真剣な顔で諭すように言った。

俺は面食らって黙ってしまった。うん…つまり、『いざ子供作る時に無理って言ったら許されんぞ』と言われているのである。

『お前、ジュリエッタ様に興奮することが出来るのか?』と。


貴族女性であるセイジュが男に対してこんなにはっきり性的なことに言及することは多分そうそう無い。

プライベートで友人と話したりすることはあるかもしれないが、主に当たる俺にそんなことを言うのには俺の想像するよりも覚悟が要っただろう。



性教育というのは一応受けた。保健体育のような説明を受ける時間があった。50代の髭がイケてるナイスミドル(家庭教師)に「女性に口づけや愛撫を施すことで女性器が濡れますので…――」なんて淡々とした説明をされ何だか気まずいし笑ってはいけないと思うあまり笑いそうになってしまい顔を引き締めるのがすごくきつかった。マンツーマンで受けるもんじゃないのでは?淡泊性教育。





まあまあまあ。待ってくれ。

ジュリエッタ様に興奮出来るかって?




出来るが………????

余裕なんだが???????????????






こんなチート無双系ラノベ主人公みたいなことを思う日が来るとは思わなかった。


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