手を振るおっちゃん
こちらは百物語七十三話になります。
山ン本怪談百物語↓
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どうも 作者の山ン本です。
最近仕事が忙しい&資格の勉強…
そこに体調不良まで出てきてかなりしんどい日々を送っておりました。
しばらく間があくことも多くなりそうですが、山ン本怪談百物語はまだまだ続きますので、またよろしくお願いします!
私が学生だった時のお話です。
当時、私は友達のAちゃんと一緒に下校していました。
同じ部活で家が近かったということもあり、Aちゃんとはとても仲がよかったのです。
私たちが住んでいる場所は田舎で、とても寂しい場所でした。
空き家が多い静かな田舎道を2人で話しながら帰ったものです。
ある日の事です。
その日、私とAちゃんはいつも通り2人で下校していました。
「今日の部活しんどかったよねぇ」
何気ない会話をしながら帰り道を歩いていると…
「お~い!」
そんな声がどこからか聞こえてきたのです。
2人で周りを見渡してみると、その声はボロボロになった一軒家から聞こえてきました。
「お~い!」
その一軒家の2階を見ると、窓から中年のおっちゃんが私たちに向かって手を振っていたのです。
「Aちゃん、知ってる人?」
「いや、知らない…」
最初は知り合いかと思ったのですが、私たちとは面識のないおっちゃんでした。
「お~い、お前らもこっちこいよ~!」
おっちゃんは私たちに向かってそう叫んでいたのです。
当然私たちはおっちゃんの元へ行く…わけもなく、2人して全速力で家に帰りました。
その後、あの家の前を通るたびにあのおっちゃんから声をかけられるのです。
毎日毎日毎日…
ここまでくるともう完全に「不審者」でした。
私たちが両親と学校へ相談した結果、警察が動くことになりました。あのおっちゃんを注意するため、警察があの家を訪問することになったのです。これで問題は解決するはずでした。
しかし…
翌日、あの家の前を通ると数台のパトカーが家を包囲するように止まっているのを発見しました。
そして家の玄関には「立ち入り禁止テープ」が張られていたのです。
話を聞いてみると、家の中から男性の遺体が発見されたと警察官が教えてくれました。
発見された遺体は、毎回声をかけてくるあのおっちゃんでした。
おっちゃんは首吊り自殺だったそうです。
亡くなられたことは残念でしたが、これで事件は解決…にはなりませんでした。
おっちゃんの遺体はかなり腐敗が進んでおり、死因は一ヶ月以上前だと言われたのです。私たちが初めて声をかけられていた時、おっちゃんは死んでいたはずだと…
「それじゃあ、私たちが見ていたあのおっちゃんは…?」
怯える私たちに、警察官の人たちは少し考えた後、遺体の近くに「遺書」のようなものがあったことを教えてくれました。そこに書かれていた言葉が…
「一人で死ぬのは寂しいので、一緒に死ぬ仲間が欲しかった」
警察官の人たちは苦笑いしながら「行かなくてよかったね」と言ってくれました。