8 男爵家の総戦力
催眠ポットから出されたスメラギは身体の調整の為彼女の部屋で眠っている。
あれから3日程経ったが、その間に俺はアイさんに色々聞かないといけない事があった。
先ずは記憶の擦り合わせ。
これは未だ俺がアレキサンドロス8世と信じている家臣が少なからず居る事に起因する。
アレキサンドロス8世が地球侵攻をした時の総戦力は戦艦2隻に駆逐艦30隻、騎士1万名の部隊だった。
しかしAIを修正したアイさんにより、その戦力を大幅に削り信の於ける8世を良く思わない者達を生かした。
残りは8世を信奉して居たわけではなく7世に8世の事を頼まれた7世信奉者達で、アイさんも彼らを殺さず生かしたのだとか。
その者達をどこまで誤魔化せるか分からないが、今配下の人数を減らす訳にはいかないからいい判断だと思う。
1万の兵を減らしたからと言って何故そこまで配下の人数を気にするかと言えば――。
――――
――
――「次は君が鬼の番だよ!」「えぇ~さっきも僕の鬼だったじゃん!」
俺は子供達が駆け回る中、再びテラスでアイさんと話し込んでいた。
「アイさん、戦争が出来ないって言ってたけど自領が未開でも男爵家の戦力はそうじゃないんでしょ?」
「はい。男爵家には帝国から下賜された巡洋艦が一隻御座います」
「俺の記憶じゃ地球を攻めた際には少なくとも30隻程の駆逐艦に2,3隻の戦艦があったと思うんだけど」
「それは少し訂正が御座います。アレク様が思われていた戦艦は巡洋艦であり駆逐艦と思われている船はただの戦闘艇です」
「そ、そうなんだ。結構デカかったからアレが戦艦かと思ってた。つかその船はどこ行ったの?あれだけの船があればそこそこ戦えるんじゃ――」
「私が落としました」
「はい?」
「8世の息の掛かった者達を一掃しました。その際、地球の核ミサイルに落とされたと本国には報告しておりますのご心配ありません」
いやないけども!落としたの!?あれ全部!?
「どうやって落とし……まぁそれはまた今度聞くよ。それよりも帝国本国の戦力ってどれくらいなの?」
彼女は腕を少し上げ、その腕輪から画面が浮かび上がるとデーターが流れ始める。
「現在の帝国本星の戦力は公開されている範囲で戦艦1万7千隻、空母7千隻、重・巡洋艦併せて3万7千隻、駆逐艦18万隻、時空潜航艦1千隻となっております」
「……えーっと。帝国はどこかと戦争中?」
「いえ、最後まで抵抗していた自由同盟軍は数百年前に絶滅させております」
「なんでそんなに戦闘艦がいるんだよ!」
「主に見栄です」
「……見栄ね。じゃうちには見栄もなんもないんだ」
「アレク様それは違います。当家には未開といえど惑星を一つ所持しております。これを発展させれば数百年後には見栄を張れる程度には当家も発展いたします」
「数百年って……」
「アレク様は既に肉体改造によりその寿命を2千年辺りまで延ばされております。数百年は誤差の範囲かと」
いやまぁそうなんだろうけど、普通の地球人としてはそんな長いスパンの人生設計ってなかなか立てれないよ?
それはそれとしてこれじゃ戦争よりなにより自領の発展が目下の目的って感じだな。
てかそれしか選択肢が無い。
「ところで此処の地図を見せてくれる?流石に自分が今居る場所くらいは把握しておきたいし」
彼女は腕輪に触れると、そこから別の設計図の様な図面が浮かび上がる。
「……この図面は?」
「巡洋艦の断面図となります」
「いやいや、欲しいのは自領のどの場所に俺達が居るか知りたいって話しで、要するに惑星の地図なんだけど」
アイさんは無言で足元を指さす。
「ここ、巡洋艦です」
「はい!?」
青空が広がり、小鳥囀るこの場所が巡洋艦!?
「フォロスクリーンオフ」
アイさんの言葉でテラスやテーブルはそのままに、空が消え大きな機械的なホールへ様変わりする。
「ぁ。あぁ~わかりましたので元に戻してもらっても?」
「フォロスクリーンオン」
ここは屋敷でもなんでもなく戦闘艦の中だったってオチねハイハイ……。
「それで俺の配下は全員この船に?」
「はい、男爵家配下の者は数名を除き全員艦で生活しております」
まぁ地球の空母でも3000人くらいが暮らして働いてるって言うからそんなもんなのかな。
「でもずっと船の中で生活って辛くない?」
「たまにバカンスで自領の惑星に降りておりますので問題ないかと」
「成程ね。じゃ数千人が船で過ごしてるて事か」
「いえ、140名です」
「ん?」
「男爵家に仕える者は武官文官それぞれの家族含め総勢140名となります」
「家族含めちゃうんだ!」
広大な宇宙の惑星上。
そこには140名の家族ぐるみの男爵家一団が浮かんでいた。
でもね、なんとなくそんな感じはしてたんだ。
俺とアイさんが話してる最中も見知らぬ子供達がキャッキャ言いながらテラスの周り走り回ってたからね!!