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5 西暦1582年の出来事からの決意表明

「アレキサンドロス8世の意識をこの世から消し去り、貴方の意識だけを残したのは私です」


 突然のアイさんのカミングアウト。


「話を……聴こうか」


「はい――時は帝国歴8021年(西暦1582年)、今より444年前まで遡ります。前男爵、アレキサンドロス#7世__・__#が地球を発見した年になります」


 アレキサンドロス7世は人類居住可能惑星を探す事に心血を注いだ。

 

「当時アレキサンドロス家は準男爵家であり、自領の惑星を持ってはおりましいたが、コロニーは持っておりませんでした。しかし先代の努力の甲斐もあり、銀河の外れで地球を見つけたのです。その功績をもって男爵へと#陞爵__しょうしゃく__#されました。見つけた当時の地球は大航海時代を終え、各地で征服の時代が訪れており、野蛮な行為が各地で起こってましたが、成長途中の人類種の征服は円滑な奴隷として使用しにくいとご当主様もお考えで200年から300年を掛け、帝国アレキサンドロス男爵家を地球にゆっくり浸透させた後、地球を一つの統一国家とした上で帝国男爵領とするおつもりでした」


「1582年と言えば……日本じゃ本能寺の変あたり?」


 アイさんはコクリと頷き。


「まさに日本で起こったその事件が原因で、ご当主は一度地球から手を引かざる得なくなったのです。ご当主様は地球と帝国のパイプ役に織田信長様を指名され、仲も良好なご様子でした。このまま上手く行けば次期に織田信長様が日本を統一し、その後世界を準男爵家の力を持って治める事も可能と全てのシステムがその成功率を予測しておりました。しかし、ご当主の嫡男である8世は事もあろうか明智光秀を手引きし、織田信長様を討ってしまったのです。8世の思惑は当主様と異なり『蛮族たる下等人類種などは早く奴隷にしてしまえばよい』と言うものであり、それを薄々感じていたご当主様ではありましたが、8世の魔力病を気に掛ける一人の親でもありました」


「自分の子供に無益な殺生はさせたくないと?」


「はい。その件と8世の病気の事もあり、8世は7世の手により400年の眠りに着かせたのです。そしてその400年をもって8世が無駄な事をせずとも統治しやすい地球の政治形態を成すおつもりでした」


「だけどそうならなかった?」


 彼女は一つ頷き。


「思い半ばでご当主が旅立たれ8世がその爵位を継いだその年、地球への侵攻が開始されました」


 所詮は地球人類を奴隷として使うつもりではあったが、7世は友好的にそれを成そうとしていたが8世が全てを壊し思いのまま地球を灰塵と化したってところか……しかし。


「それで何故君が俺に謝罪を?」


「はい。私は7世に製造され忠誠を誓う身であり、ご当主様は生前私に『8世が暴走した時は止めてくれ』と命令を下されておりました。ですが当時の私は既に8世の手の者によってAIを改変されており命令を守る事が出来ませんでした」


「そうか……じゃ謝る相手は俺じゃなくて7世じゃない?」


「ですがご当主は既にこの世界には……」


「お墓に手を合わせて謝るだけでいいじゃないかな」


「それでは8世のせいで亡くなった地球の方達が!」


「あぁ、それは仕方ないって。どのみち俺が謝らせたい奴が居るとすれば俺の記憶にある奴だし、織田の家臣であった明智光秀にどんな情報を与えて討たせたのかとか、思い返すと反吐が出る記憶しか持たないこいつだからな」


 そう言って俺は自分の頭を指さす。


「だからアイさんの謝罪は受け取らない。それにAIに細工されてたとか聞かされたら余計責められないでしょ」


 彼女は俯いているが、こんな姿を見ると人間にしか見えないのが不思議だな。


「それでどうやって改変されたAIを修復させたの?」


「定期メンテナンスの時に異常が検知され修正したら元にもどりました」


「(……8世って野心家のくせに足元お留守だよね)」


「まぁ8世が本当に馬鹿なのが良く分かったよ。ところでアイさん」


「はい」


「俺はこれからどうすればいいと思う?」


「どうすればとは……先程申されていた戦争のことでしょうか?」


「そそ、俺は記憶にある8世の行いは全て悪でしかない。でも、そもそも地球侵攻は帝国本国からの圧力が原因だよね。7世ですら労働力を増やすために惑星を探すのに血眼になった。……俺はね、多様な人が居て当然だと思っているんだ。でも力を持った人間がその力を己の欲や傲慢の為に振りかざすのを許せない。だから地球でも銃を取って戦うと決めたんだ……。でも今の俺の立場は仮に男爵位を持つアレキサンドロス8世と言う事になっている。そんな地位を持った俺が俺の我儘で戦争をしようと考えている。そんな矛盾に付き合わされる家臣の人達には申し訳ない気持ちでいっぱいになる」


「ではお辞めになられますか?」


 静かなテラスで鳥の鳴き声が耳に届く。


「……辞めない。だから俺の家臣達には俺に付き合ってもらう。これは俺の我儘だ。俺の故郷の惑星一つくれてやったんだ、それ位の我儘神様だって許してくれるだろ」


「そうですか。ですがそれはアレク様の家臣となる者達に聞いてみてはいかがでしょう」


 その言葉と同時に何人かの足音が庭先からテラスへと続く階段から聞こえて来る。


 そして見た事の無い青年や美女が俺の前に一列に整列する。

 見た所先程の謁見の間に居た騎士達の一員だと思うんだけど……。


「先程の騎士達の精鋭と言ったところか」


 言いながら俺も席を離れ彼らの前に立つ。



 アイさんは彼らへ手の平をそっと向け。

「お待たせしました、貧民街でご一緒していた兄貴分さん含め、あのボロ家に居た孤児総勢9名です」



…………えっとあの……全員大人の方なのですが?


 俺は困惑の表情で視線をアイさんに送った。





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