番外3-4 好きな物は後に食べる派だったけれど…
「さてと、ある程度、回るべきところは回るし、そろそろメインイベントに行く?」
「ははは…俺は、メインイベントに行きつくまでに、こんなに時間がかかると思わなかったよ。」
正直に言おう。
疲れた。
「メインなんだから、最後に取っておくに決まっているじゃない。もしかして、カイン。あんた、好きな物は、先に食べる派なの?」
「いや、最後に食べる。」
「じゃあ、いいじゃない。」
でも、そういう例え方をされると、今度から、好きな物は先に食べようかなと思ってしまうだろうが。
好きな物を先に食べる派の気持ちが分かってしまった。
美味しい時に食べるに限るかもしれない。
好きな物は、美味しいと感じる時に、好きな物は、楽しいと感じられる時に…だ。
「でも、今度から先に食べるかもしれないな。」
「へー…」
興味なさそうにするな?
お前のせいで、俺の好みが変わった可能性があるんだぞ?
それにだ。
確か、メインイベントの後にも、グッズを買いに行くとか言っていただろう?
最後に食べるんじゃないのか?
「で?もしかして、メインイベントに行くためにも、この行列に並ぶのか?」
「当たり前でしょ?ここの会場内で、列がない所なんてないんだから。」
「俺も並んでいいのか?」
「ここまで来て、存在を見て行かないの?あんた、本当に大丈夫?」
俺は、お前の心配をしてやったんだが?
やはり思うが、男連れで、男に会いに行くなよ。
しかし、今日一日、リリスに付き合ったんだ。
これだけ、リリスが熱中するアイドルの存在を、この目で確かめたくない…と言えば、嘘になる。
「本当にいいんだな?」
「何を言っているの?別にカインが居ようが、関係ないわよ?」
何でもないかのように、リリスは俺に言う。
なら、お言葉に甘えさせてもらう。
リリスの付き合いとはいえ、俺はここまで振り回されているんだ。
男の俺から見て、いい男なのかどうか、見てやろうじゃないか。
「ついにこの時が来たわね。」
「そうだな。」
長い時間、長い列に並び、ようやくゴールが見えてくる。
俺は、リリスと共に、一仕事…いや、修羅場を終えた時の気持ちになっている。
ようやくだ。
ここまでリリスに振り回されて来た。
その原因であるアイドルにようやく会うことが出来る。
どんな奴なんだろうか?
まぁ、リリスが好きになるくらいだから、顔がいいんだろうな。
どんな性格なのだろう。
仕事中だから、キャラを作っているかもしれないが、多少なりとも漏れ出る、何かがあるかもしれない。
「さぁ、あの中に入ったら、会えるわよ。」
目の前にはテント。
この中に、リリスの好きなアイドルがいる。
テントから出てきた人たちが見える。
泣きながら出て来る女の子や、凄く笑顔で出て来る女の子…
見る限り、全員、幸せそうな顔をして出てくる。
好きな人に会えるって、こんなにも幸せな気持ちにさせるのだろうか?
こう思うと、アイドルという仕事は、偉大なのかもしれないな。
「カイン、準備はいい?もう、そろそろだけど。」
「あぁ…」
先ほどの口の悪いリリスはどこかに行き、緊張した面持ちで、テントの入り口を見つめている。
「お前、そんなにガチガチで大丈夫か?」
「べ、別に、ガチガチじゃないわよ。」
いや、ガチガチだろうが。
ほう…、リリスもこういう可愛げのある反応をするのか。
だけど、このままだと、緊張して、記憶が…なんて、言いかねない。
「そうやって、大人しいと可愛げあるよな。」
「あ?なんて言った?」
うわ、ガチギレ。
「キレるなよ。」
「キレるでしょ。」
「そうか?」
でも、そっちの方がいい顔しているんじゃないかと思う。
お次の方、どうぞ…という声に、リリスは、入口を見直して、呼吸を整えた。
「ほら、行くわよ。着いてきなさい。」
リリスは、俺の方をチラリとみて、テントの中に入っていく。
「はいはい。付き合うよ。ワガママ姫。」
俺はため息をつき、リリスの入って行ったテントの中へと続いた。
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