番外3-3 長年の付き合いでも、分からないことはある
長い、長い行列を抜けて、ようやく俺たちは、会場の中へ入ることに成功した。
「さて、ここからは効率よく、周っていくわよ。」
「効率?なんだ、それ。」
「まずは、売り切れ必須の数量限定、創作グッズを買いに行くわ。」
なんでだよ。
今回の目的は、アイドルに会いに行くことなんじゃないのか?
サッサと会って、俺はここから退散したい。
ここはあまりにも居心地が悪すぎるんだよ。
「それで、次にアイドルに会いに行くのよ。」
「先にアイドルでもよくないか?」
「ダメね。」
リリスのあまりにも真剣なまなざしに、やはりだめなんだろうということを思い、諦める。
もちろん、理解をしたわけではない。
「そして、最後に、グッズを買いに行くわ。」
「グッズは無くならないのか?」
「それは大丈夫よ。公式グッズは、予約済みなの。」
同じグッズでも、何かが違うらしい。
やはり、俺には分からないが。
ただ、不本意とはいえ、ここまで連れてこられた身、今日はリリスに付き合うことを決め、好きにやって貰う事にする。
「それで?どこに行きたいんだ?」
俺が聞くと、リリスは館内のマップらしきものを取り出す。
本当に準備がいいんだな。
そして、リリスはマップを指さし、横にスライドした。
「ここからここまでよ。」
「…お前は馬鹿なのか?」
「なんでよ。何が馬鹿なのよ。」
馬鹿じゃなかったら、アホなのか?
なんでこんなに混んでいる場所で、店舗をまたにかけて、豪遊買いをしているんだ?
「もう一度、聞くぞ?」
「だから、ここからここまでの売り場で売っている物を、買うって言っているの。」
…先ほど思った事を、すぐにでも撤回したい。
リリスに付き合ってもいいなんて、心に決めるんじゃなかった。
むしろ、ここまで付いてきたのが、間違いだった。
「いや、もう止めよう。リリス、お前はこの人混みで、おかしくなってしまったんだ。」
「何を言っているの?人込みでおかしくなったのは、カインの方でしょ。私は至って、正気よ。昨日から、店を周るルートだって考えて来ているんだから。ほら、現実逃避をしていないで、付いてきなさい。」
もう嫌だ。
なんで、俺がこんな目に合っているんだ?
再びズルズルと引きずられ、リリスのいう、昨日から考えていたルートを周る羽目になった。
「そして、また行列かよ。」
「当たり前でしょ?どこに居ようが、今日は行列に当たる運命なのよ。」
そんな運命、嫌じゃないか?
「それに並んでいる時間の暇つぶしは、私が用意してあげているんだから、いいでしょ?」
それは、リリスの暇つぶしであって、俺の暇つぶしには、なっていないことを理解してくれ。
だってそうだろ?
誰かも分からない人の画像を、説明もなしに、延々と見せられてみろ?
俺は、リリスのアイドルに会う前から、リリスのせいで、好感度がだいぶ低いぞ?
「うわ…」
「どうかしたのか?」
「これ、顔よいな。」
そうかよ。
真面目なトーンで、本当にどうでもいい事を言うので、一旦リリスの頭を叩いてみようかと思った…
もちろん、思い留まったが…
俺を連れてきた理由は、ここに入る前に聞いたが、それでも、なぜ俺なんだ?と思う。
男に会いに行くのに、男連れで来るって、どうなんだ?
もちろん、リリスに聞けば、荷物持ちであって、男ではない…と、言われて、俺がキレそうなので、そこには深く触れない様にしている。
なんとなく、リリスはそういう性格だと、長年付き合って来て、感じるのだ。
「ほら、カイン、見なさいよ。このイケメンを。」
「…そうだな。」
だから、そのイケメンたちを見せられて、俺はどんな反応をするのが正解なんだ?
俺は、リリスが流れるように、売り場から売り場をハシゴするのについて行く間、イケメンたちの事で頭がいっぱいになっていた。
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