91話 私が魔法使いになれるかも?
ザザッ…ザザッ…
壊れたラジオのような音を聴きながら、待つことしばらく。
ザザッ…ザザッ…プツッ
「もしもし、チヒロ?」
「メル!」
「久しぶり、チヒロ。」
久しぶり…久しぶりなのかな
感覚が分からなくなってきているかも。
「ちょっと、メル。なんてところから、電話かけてきてたのさ。」
「ごめん、ごめん。異世界間で通じる電話って、少し特殊だからさ。通信部のを借りた方が早いと思って。」
特殊?
へぇ、そうなんだ。
じゃあ、私のデバイスも特殊なのかな?
「でも、電話かけて来てくれてうれしいよ。」
「ほんとに、かけてくると思っていた?」
「もちろん」
「ならよし」
メルとの冗談の言い合いも久しぶりかな。
「それで、どうしたの?」
「プレゼントを見たから報告しようと思って。」
「あー。それにしても、ずいぶん時間かかったね。もしかして忘れてた?」
おっと、鋭い…
「まさかぁ」
「チヒロ?」
「…わ、忘れてました」
「正直でよし」
さっきのやり取りをそのまま返された。
「プレゼントどう?」
「あれって、マナ・ストーン?」
「そうよ。」
「マナ・ストーンが魔力を封じた石というのは、聞いたことあるんだけど。」
「あぁ、どういうものなのか知らなかったのね。いいでしょう。私が教えてあげるわ。」
通話越しでもわかる。
絶対、どや顔してるんだろうな。
でも教えてくれるっていうし、遠慮なく。
「お願いします」
「マナ・ストーンは、魔力を封じた石。そして、石に封じられた魔力は自由に使うことができる。つまり、魔力を扱えていない人でも魔法を使えるようになるわけ。」
ん?
つまり?
「その石を持っていれば、チヒロも魔法が使えるようになるってこと。」
えぇ?
これ、そんなすごい物だったの?
「使えるといっても、その人が込めた魔力の種類による。炎の魔力を込めてあれば、炎の魔法が使えるということね。」
なるほど。
アルバートさんから貰った石は、グレーだったけど、どんな魔力が込められているんだろう。
「メルは、どんな魔力を込めたの?」
「私は、超感覚という補助系の魔力を込めてあるよ。すべての感覚が、鋭くなるものね。私は、戦闘があまり得意じゃないからさ。魔力操作とか、補助系魔法の方が得意なの。」
超感覚…
超能力みたい。
そういう、超能力みたいなものも、魔力でいけるんだ。
「ちなみに、魔力を封じてあるだけだから、使っていけば消えてなくなるの。気を付けてね。」
マナ・ストーンは、有限ということね。
「超感覚は、魔力を感じるのも鋭くなるから、チヒロにはちょうどいいかもね。」
「どういうこと?」
「え?だってチヒロ、魔力をうまく使えてないよね?」
えっと…?
「ごめん、メル。私、魔力なんて持ってないけど?」
「え?魔力を持ってない人なんていないと思うけど。」
どうしよう。
話がかみ合わない。
「私は、魔力というものがない世界から来たから。」
「それって、異世界のことでしょ?異世界転移なんて今じゃ文化なわけだし、世界が別でも使えると思うけど。」
確かに…
異世界転移というならば、コスモスからミシュティも異世界転移だわ。
「でも、私は人族だから」
「私も人族だけど、魔力操作はできるよ」
確かに。
しかも、職人級の達人級だったわ。
「それに、チヒロは、体内に魔力持ってたけどなぁ」
ん?
今、聞き捨てならないこと、言ったよね。
私が、魔力を持っている?
「それって、どういう?」
「そもそも、魔力って、体内と体外にあるんだけど、体内の魔力って、体内で練り上げて魔力に変換して、利用しているのね。チヒロの中にも、魔力の源、気というものが流れているから、魔法を使えるようになると思うよ。」
私も魔法を使えるようになる…
それってすごくない?
「超感覚のマナ・ストーンは、魔法の習得に近づけるように渡した物なのよ。…あ、ごめん!そろそろ行かないと。チヒロ、またお話ししましょう。また連絡するね。じゃあ、また。」
「え、ちょっと?」
ザザッ…ザザッ…
切れちゃった。
気を練るというのは、確かに地球でも聞いたことがある。
そこが、魔法を使うための第一歩ということは、メルの話を聞いて分かった。
人族でも、魔法が使える。
私にも、もしかしたら可能性があるのかな。
そうしたら、守られるだけの存在じゃなくなるかも。
魔物に襲われた時に感じた命の危険。
自分の身を守る手段を手に入れること。
これは、私が異世界でやっていくうえで、重要なことだった。
メルありがとう。
これは、私にとって朗報だ。
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