番外3-2 これは俺がおかしいのか?
「着いたわ。」
リリスについてきたら、目の前には、ものすごい人だかり。
「うわ…」
この中に入っていくのか?
思わず、ゲンナリとした声がこぼれ出た。
俺の心情とは裏腹に、リリスは満足そうにその人だかりを見つめている。
「なぁ、本当に、ここに入っていくのか?」
「当たり前でしょ。何のためにここに来たと思っているの?」
いや、だから、お前のアイドルに会いに来たんだろ?
だけど、それ、俺には関係ねぇじゃん。
それでも、リリスが行くと言ったら、行くしかないことも、分かっている。
「はぁ…それで?いつまでここにいるんだ?行かないのか?」
「行くわ。でもちょっと待って。」
そう言って、リリスは、靴を脱ぎだす。
「…何をやっているんだ?」
「見て分からない?靴を履き替えているんだけど?」
リリスは、カバンの中からスニーカーを出して、今まで履いていたヒールをカバンの中にしまう。
「いや、靴を脱いでいるのは、見たら分かるんだけど、なんでここに来て履き替えるんだ?」
「決まっているじゃない。このまま入ったら、周りに迷惑でしょ。こんなに混んでいる所で、ヒールなんて履いていたら、周りの人の足を踏んでしまった時、大変なんだから。」
なるほど…
「じゃあ、初めから、その靴で来ればいいのでは?」
「何を言っているの?ヒールはおしゃれアイテムなのよ?」
「でも、脱ぐんだよな?」
「そうだけど?」
は?
これは、俺がおかしいのか?
脱ぐんだったら、初めから、その靴でいいんじゃないのか?
だって、そもそも、可愛い服を着て、アイドルと会うんだろ?
なのに、その会場に入る前に、履き替えるのであれば、それは別になくても良かったんじゃないのか?
「…まあいい。これであの中に行くんだな。」
「ええ。いい?ここからは戦場なの。気合を入れなさい。」
…ただ、アイドルに会いに来ただけなんだよな?
戦場って、何のことだよ。
「取りあえず、会場に入るために、あの行列に並ぶわよ。」
「会場に入るために、並ぶのか?」
「当たり前でしょ。あの列が見えないの?」
いや、見える。
俺は、何の列なんだろうと、思っていたんだ。
「じゃあ、行くわよ。」
「はは…あぁ、そうだな。」
リリスに引っ張られて、俺は、リリスと共に、行列へと並んだ。
「なぁ…」
「何よ。」
「なんか、視線が気になるんだけど。」
行列に並んだは、いい物の、周りから、チラチラと、視線を感じる。
周りは、女性ばかり。
男の俺が並んでいるのが珍しいのか?
「あぁ。あんた顔はいいからね。オタク心をくすぐる顔をしているのよ。良かったじゃない。」
「何がいいんだよ。あのさ、一応、イケてるアイドルに会いに来ているんだよな?」
「そうだけど?だとしても、近くに顔がいいのがいたら、目に入るでしょ。だから、浮気じゃないわよ?」
そんなこと誰も言っていない。
視線が気になるって、言っているんだよ。
と言っても、おそらく、リリスは掛け合ってくれないだろう。
「それにしても、リリスが推しているアイドルって、人気なんだな。」
「あら、やっとわかった?そのすごさが。時空を飛び回るアイドルだから、いろんな世界にファンがいるわよ。そのファンが、集まっているんだから、そりゃ、こうなるわね。」
ふーん。
「それでさ、リリス。俺は気になっている物があるんだけど。」
「なに?」
「リリスが持っているカバン、それは何?」
話しながら、何か、ゴソゴソとしているとは思っていたが、カバンの中から出てきたカバンは、バッチやら、キーホルダーやらが、ものすごくたくさん付いた、カバンだった。
そもそも、カバンの中から、カバンを出すって…なんでだ?
「あぁ、これ?推しを身に付ける、推しバックよ。」
「あぁ、そうなんだな。」
何を言っているんだ?という感じで、見てきたリリスに、俺は、もうツッコむのを、放棄した。
…推しバックってなんだよ。
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