番外2-3 王女様の職場見学
「見学の許可は出たが、なんで急に来たんだ?」
「あれ?チヒロには内緒で来たんだけど、さすがの私でも連絡なしに、職場を見学させてほしいなんて言わないけど?お父さんや、叔父さんに怒られちゃうし。」
ん?
連絡はあったって事か?
「あれ、ちゃんと届かなかったのかな。それなら申し訳ないことをしたかも。」
「誰宛に?」
「観光部宛に一通と、観光部企画宣伝課宛に一通。了承の連絡も来ていたから、来たんだけど、もしかして手違いだったかな。」
観光部宛なら、アスガル。
観光部企画宣伝課宛なら、アルバート。
「アルバート。」
「そう言えば、職場を見学したいという連絡が来ていた気もしないでもないな。」
お前のせいか。
「じゃあ、あの格好は?」
「あれは、驚かそうかと思って。」
なるほど。
そこに関しては、メルらしく、しっかり変だから、安心したよ。
「あの格好は、止めておいた方がいいと思うぞ?」
「え?そうかな?チヒロは、ちゃんと突っ込んでくれるんじゃない?」
…するかもしれない。
メルの言ったような状況を想像し、チヒロならするだろうなと、何となく思った。
とりあえず、メルをオフィス内に招くために、扉の傍へ行くと、そこでこっちを覗き込みながら、コソコソとしている二人を発見する。
「ねぇ、あの子、誰?チヒロの知り合いみたいだけど。皆の様子もおかしくない?」
「さぁな。でも、アルバート達も知り合いみたいだけど、企画宣伝課絡みの知り合いって事か?」
「何をやっているんだ?」
コソコソとしていたのは、リリスとカイン。
アンジュとアンヘルは、フェリシアに指示されながら、バタバタとオフィス内を動いていた。
それもそうだ。
一世界の王女に、この汚い部屋を見せる訳には、いかないだろう…
「あ、いやいや。お客さんだよな。いらっしゃいませ。」
「あぁ、アルバートのミスだが、急遽、企画宣伝課の仕事を見学することになった、ミシュティの王女、メルーレ王女だ。」
「初めまして。メルーレ・ドゥ・ミシュティです。今日は、よろしくお願いします。」
メルの笑う顔とは対称的に、コソコソとしていた二人は、一瞬固まり、そして道を開ける。
ここで、見学をするとして、果たして、部屋の中がどこまで片付いたか分からないが…
「うわぁ。ここでチヒロが働いているんだね。」
扉を開けると、先ほどのゴミのような山は無くなり、綺麗に片付いていた。
そして、アンジュとアンヘル、フェリシアは引きつった笑みを浮かべ、会議室の前で呼吸を整えている。
…会議室は、おそらく、大変なことになっているんだろう。
「机があるけど、チヒロの机もあるの?」
「あそこだな。」
俺が指を指すと、メルは、チヒロの机に駆け寄る。
「じゃあ、ここがネロの机だね。」
「そうだが、分かるのか?」
「だって、ここにチヒロの人形がいるし。この人形、凄いね。本当にチヒロみたい。」
プティテーラで貰った、チヒロ人形。
「ネロがチヒロを持っているという事は、チヒロがネロの人形を持っているんでしょ?」
するどい。
「あ、ごめん、ごめん。チヒロがどんな所で働いているのか気になって、テンション上がっちゃった。えっと、企画宣伝課の方たちの邪魔にはならない様にするから。」
「いや、それはあまり心配していない。」
こうして、王女の職場見学が始まった。
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