番外2 ネロSaid お客様が、チヒロを訪ねに来た
「あの、すみません。こちらに、チヒロという職員はいらっしゃいますか?」
「あー…えっと、チヒロという職員は、本日、休みになっております。」
「それでは、明日は、いますか?」
チヒロ指名の客が企画宣伝課のオフィスに、直接訪ねてきた。
現在、フェリシアが笑顔を作りながら、対応しているが、チヒロについての質問はやまない。
チヒロは、今、ティエラに戻っており、しばらく帰ってくる予定はない。
ただ、それは、こちらの都合であり、客の前で言う話でもない。
それに、チヒロの所在を訪ねてくる客の装いがあまりにも怪しい。
フードを被り、顔を隠し、それから、顔にもマスク、と、見た目は、ものすごく怪しい人物だ。
そして声も、いかにも機械を通したような声がするため、怪しさがさらにアップしている。
観光客として、あまりにも怪しいため、どう対応するべきか、様子を伺っている訳だ。
それに、オフィスにそのまま訪ねてくるあたり、ここで武器を取り出し、何かを要求して来てもおかしくない格好だ。
「おい、どうするんだよ。チヒロは、しばらく戻ってこないって言った方がいいんじゃないか?」
「そんなこと言って、チヒロの居場所を聞かれたらどうするのよ。現在、異世界転送が出来ないところに行っております…とでもいう訳?」
「チヒロのお客さん?変わった人だね。」
「チヒロに会いたいのかなぁ。恥ずかしがり屋さんなのかもしれないね。」
そして、扉を挟み、その様子を覗き込むようにして、カイン、リリス、アンジュ、アンヘルが上から下に並んでいた。
恥ずかしがり屋にしては、積極的に、チヒロの居場所を聞き出そうとしている。
どちらかと言うと、チヒロを追いかけてきたようにすら見える。
「おい、そこ、相手から見えないか?」
「そうだよ。ここは、フェリシアに任せて、皆は仕事をしろよ?」
アルバート、お前も覗きに来ているじゃないか。
「チヒロは、いないんですね。」
「そうですね。何か用件があれば、承りますが。」
「いえ、大丈夫です。チヒロに会いに来ただけですので。…それならば、ネロはいますか?」
「えっと、ネロですか?」
…俺の名前が出たな。
何かに巻き込まれた気がするのは、気のせいだろうか。
「チヒロの知り合いみたいだけど、ネロの事も知っているみたいだぞ。」
「そうよ。ネロ。誰なのよ、あの人。」
「チヒロの知り合いで、ネロの知り合い…」
「チヒロに会いたいって言っていたね。僕も会いたい。」
こいつら、うるさい。
それにしても、チヒロと俺の共通の知り合いと言ったら、仕事で行った旅行先で出会った人たちくらいだが。
あんなに怪しそうな格好の知り合いは、いなかった気がする。
「ネロは…ネロは、今、奥の方に居ますね。」
あいつ、俺の事、売りやがった。
いかにも怪しい恰好をしている客を相手にしたくなかったんだな。
「そうですか。少しでいいんです。話をすることは出来ますか?」
「あー…はい。もちろんです。今、呼んできますね。」
このやろう。
あとで覚えておけよ。
「というわけで、ネロ。お客様がお呼びよ。あくまで失礼のないようにね。」
「いや、もう、あの様子は、お客様ではないだろう。」
誰だ?
俺の知り合いに、あんな奴いたか?
ユオか?
いや、あいつは、こんな事をしないだろう。
誰だ?
扉を開けて、いかにも怪しい客の前へと行く。
「お待たせしました。私に何か御用で…」
俺が、客の前に行くと同時に、その客は、俺を鷲掴みにした。
扉の向こう側で、ガタリと音がする。
「あの…」
一応、客のため、この行動の意味を問いかけようと声をかけると、目の前の客は、マスクを取り、にっこりと笑った。
「お久しぶり、ネロ。元気にしていた?」
あー…
なるほど。
「なんで、そんな恰好なんだ?メルーレ王女。」
そして、俺が名前を呼ぶと、再び、扉の向こうから、ガタリと大きな音が聞こえた。
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